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enjiro
一粒のアーモンド
妻は娘と預金を下ろしに行った。
月に一度の恒例行事だ。もちろん生活費である。下した金額でやりくりする。そこが主婦の腕の見せ所だ。1円でも残せたら満足のようだ。
よって除雪王の小遣いは微々たるものだ。情けない。
情けない話はさておいて、朝10時に出て行ったが2時間立とうとしているのにまだ帰ってこない。お腹が空いてきた。
腹の虫がキューっと音を立てた時、妻から電話が来た。あと1時間ほどかかるから待っていて、もしお腹が空いたら冷蔵庫に桃があるから食べておいてとのこと。
おいおいそんなもの食べたら昼飯がまずくなるだろうと言うと、電話が切れた。
俺は子供じゃないんだ、桃ごときにつられるかと、また情けなくなった。
冷蔵庫を開けるとアーモンドがあった。これは無塩だ。ルチンも豊富で糖尿にも良い。桃なんぞより身体に良い。アーモンドを一握り掴みだし、口に1粒ずつ運んだ。
実は大好物の桃ではあるが、何故か今日は食すことに抗いたい。
近頃の日常が、妻の手のひらに乗せられた一粒のアーモンドの気分だから。
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