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地元の恐怖が集まるマチサガの怖い話『町田相模原怪談』(神沼三平太/著)著者コメント+収録話「小野路の人魂」全文掲載

地元の恐怖が集まるマチサガの怖い話


あらすじ・内容

東京都町田市、神奈川県相模原市――100万人が暮らす首都圏の一大ベッドタウンに潜む怪異譚を地元の怪談作家が徹底取材!

・駅前に建つ某ビル、そして某ホテルにも出現する赤い服の女の霊「町田駅前ビル」
・女の幽霊の噂を聞き相模大野の某公園を訪れた若者が味わった絶望「見ると死ぬ女」
・生者を狙い引きずり込む鶴川の危険な怪異「ホーム下」
淵野辺のマンションに住む学生が体験した部屋を訪れる妖「通りもの」
成瀬駅から生者の命を狙いつけ狙う黒い異形「ついてくる」
・最凶心霊スポットと名高い宮ヶ瀬に棲む妖怪〈川天狗〉の恐怖「潤水都市さがみはら」
・血塗れの男が侵入する恐怖!霊道に建つ異界の物件「玉川学園の家」
相模湖のとある廃墟で巻き起こる戦慄の出来事「湖畔の廃ホテル」
・タヌキの仕業だったのか。金井の男性の身に降りかかった不可思議すぎる実体験「狸話」
・いるはずのない赤子の声、存在しない最上階のさらに上――怪異が頻発するとある病院「津久井の病院」
長津田行きで寝過ごした先の車庫で目撃した異様な存在「背が高い高い高い」
・黒い女の幽霊が佇む津久井の最凶心霊スポットで起きた怪事「三井大橋
・〝開けてくれよう〟そう言いながら毎夜男が窓を叩く鶴川某所の恐怖物件「うるさい部屋」
国道16号沿いで目撃される白い幽霊の正体と、ダム湖を徘徊する奇妙な人物の恐怖「白い奴~名手橋

――など、マチサガの怖い話を多数収録!

書店限定 特典情報

本書未収録の書き下ろし短編1話が掲載された、ここでしか読めない5種類の限定特典ペーパーを、下記書店にて配布いたしました。

ご愛顧いただいております読者の皆様への御礼として、
限定特典ペーパーを無料公開させていただきます。
それぞれのPDFデータをご覧ください。

久美堂 限定特典ペーパー
「町田で起きていた不思議な話」


ブックファースト ルミネ町田店ボーノ相模大野店
限定特典ペーパー「怖くて怖くて怖くて怖くて」


紀伊國屋書店 小田急町田店
限定特典ペーパー「量販店の夜」


紀伊國屋書店グループ(啓文堂書店) 限定特典ペーパー
「スタジアムから帰れない」


くまざわ書店 限定特典ペーパー
「ぶれ」

※配布状況は各店舗にお問い合わせください。
※配布開始時期及び、配布方法に関しましては、店舗によって異なります。
※在庫が無くなり次第終了となります。

著者コメント

 地元を怪談で盛り上げたい。そう思うことは何度もあった。
 何度か町田で怪談会を催したこともあるし、町田相模原での体験談は過去に何話も書籍に収録してきた。今回のお声がけは、地元での怪談活動に大きな弾みをつけられるのではないかという期待もある。
 だが、本書の執筆は難航を極めた。体調的な部分もあったが、新規に体験談が集まらなかったのだ。過去に書いてしまった話を再録することはできないので、当然新たに取材を行うことになるのだが、結果的にこの話は別段町田相模原に限定されないなというような話ばかりが集まってしまった。例えばマンションの一室の中で起きた怪異などである(結果的にそのような話も一部収録されているが)。
 やはり地域性のある怪談本には、地縁のようなものが匂っていて欲しい。
 一方で地域を特定し過ぎると、色々と住民の方々に迷惑をかけることになってしまう。それだけは絶対に避けたかったので、本書でも例外的なものを除いて、場所を完全に特定できる話は収録していない。また、意図的に地理的な描写にも変更を加えている。どちらにしろ、これらの措置は実際にその地に住む方々へ迷惑をおかけしないための方策であることは言うまでもない。
 地域性のある怪談本は、これで四冊目だが、どの書籍にも言えることとして、地域の歴史の一部を切り取ったものになるという点がある。良くも悪くも地域の歴史が怪談には反映されている。ただ怪談を楽しんで終わるのではなく、願わくば怪談をスタート地点として、地域の歴史などにも目を向けるようになると、より怪談自体の深みが増したり、なぜその怪異がそこで体験されたかなどの解釈に繋がって、多層的な楽しみができるようになるはずだ。

神沼三平太より

1話試し読み

小野路の人魂

 ある年の夏、都内のとある駅前からタクシーに乗った。
 怪談作家などをやっていると、タクシーに乗るたびに取材というか、何か変な体験をしたかどうかを運転手の方に尋ねるのが習い性になってくる。その夜もいつもの如く、この近くで不思議な体験をしたことはありませんかと尋ねてみた。すると、六十代も半ばを過ぎたと思われる運転手氏は、少し思案した後で、古い話で恐縮ですけどと、前置きをして話し始めた。

「あたしはね、町田の小野路おのじっていうところの出身でしてね。最近はサッカーのスタジアムなんかもできて、人が来るようにはなったけれども、昔はそんなに賑わってるような場所でもなくてね。まぁ要するに、東京の端っこの片田舎の山間のような場所ですわ。そんな場所で育ったんですけどね。子供の頃に人魂ひとだまってものを見たことがあるんですよ」
 お客さんは人魂を見たことはありますかと問われ、残念ながらまだ見たことがないんですと答えた。小野路に人魂を見たという話が伝わっているというのは、話として知ってはいたが、実際に体験をした人から話を聞かせてもらうのは初めてのことだったので、俄然興奮してくる。

「まだ小学生の頃でしてね。祖父が亡くなった夜のことです。季節は今よりは少し後ですが、お盆前のことですよ。暑い盛りでね。両親は葬儀の準備などで忙しくしていたんですが、自分や弟妹はまだ幼いし、色々と邪魔になっちゃいけないってことで、夕方から居間に蚊帳かやを吊ってね。おにぎりを持たせられまして、子供達は蚊帳の中に入ってなさいと言われまして。三人で大人しくしてたんですよ。それであたしはいつの間にか寝てしまっていたんですけれど、体を揺すられて目が覚めたんです」
 体を揺すっていたのは弟だった。
「兄ちゃん、火の玉」
 しがみ付いた弟は、消え入るような震え声でそう告げた。妹は布団を被って泣いているようだ。よほど怖かったとみえる。
 弟の言葉に首を巡らすと、蚊帳のすぐ外に青白い光が浮いている。誰かが蝋燭ろうそくを持っているのではないかと思ったが、その光が茶箪笥のガラスに反射している様子を見ても、誰か大人がそこにいる訳ではない。
「本当に人魂だって思いましたけどね、人間ってのは訳の分からないものを目の前にすると、動けなくなるんですよ。お客さん、知ってますか。人魂ってのはね、人型に化けるんですよ」
 それは初耳だ。
「ゆらゆらと炎が揺らめいて、一際大きく燃え盛った後で、人の形になったんです。そんな小さなもんじゃないですよ。普通に大人の背丈でね。弟が叫び声を上げたのを覚えてます」
 炎から現れたのは、祖父だった。
「眩しいくらい肌が青く光っててね。綺麗だったんですが、それって要するに幽霊じゃないですか。しかもよく見ると肌が青い炎で、それも渦を巻いている。これは怖かった。一体何を見ているのかって思いましたものね」
 弟も妹と一緒に布団を被ってしまった。兄としてどうにかしなくてはと思ったが、ただじっと見ていることしかできなかった。

「それで祖父じいちゃんは、なんか凄く困った顔をしてね、その後パッと消えちまいました。何で孫のところに出たんですかね。何か言いたいことがあれば、親父達のところに出てやれば良いのに――」
「最後に孫の顔を見たかったんじゃないですか」
「それならあんなに怖がらせることはないじゃないかって思うんですけどねぇ――」

 ―了―

著者紹介

神沼三平太 (かみぬま・さんぺいた)

神奈川県茅ヶ崎市出身。相模原市在住。町田市内の大学や専門学校で非常勤講師として教鞭をとる一方で、全国津々浦々での怪異体験を幅広く蒐集する。
主な著書に『怪奇異聞帖 隙窺いの路』『怪奇異聞帖 地獄ねぐら』『実話怪談 揺籃蒐』『実話怪談 凄惨蒐』、ご当地怪談の『甲州怪談』『湘南怪談』、三行怪談1,000話を収録した『千粒怪談 雑穢』など。
主な共著に、若手実力派二人と組んだ『怪談番外地 蠱毒の坩堝』(若本衣織、蛙坂須美/共著)、大ボリュームの電子書籍『ヒビカイ――365日の怪談#2025』(加藤一/編著、神沼三平太、高田公太、ねこや堂/共著)。その他、メインで執筆する共著に「恐怖箱 百物語」シリーズがある。

好評既刊

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