『涙そうそう』を聴くと、沖縄の風景がよみがえる ― 25年前の記憶とともに

この夏、コンサートで『涙そうそう』を演奏することになりました。

決まった時、とても嬉しくなりました。

改めて何度も聴いていると、「やっぱり本当にいい曲だなあ」と思います。

優しく流れるメロディ。
どこか懐かしく、あたたかい空気。
そして静かに心に入ってくる歌詞。

聴いていると、不思議と心が洗われるような感覚になります。

「涙そうそう」の「そうそう」は沖縄の言葉で、「涙がぽろぽろとこぼれる」という意味だそうです。

タイトルだけでも、なんだか美しい響きですよね。

この曲は、作詞を森山良子さん、作曲をBEGINが手がけた曲です。

そして、この曲には、とても深い背景があります。

森山良子さんが若い頃に亡くされたお兄さんへの想いが、この歌詞の原点になっているそうです。

歌詞を読むと、ただ悲しみを歌っているわけではないことがわかります。

「会いたい」

「ありがとうを伝えたい」

「忘れたわけじゃない」

「今も心の中にいる」

そんな気持ちが、静かに流れています。

だからなのでしょうか。

この曲は誰か特定の人の歌なのに、聴く人それぞれが、自分の大切な誰かを重ねてしまう気がします。

亡くなった家族かもしれない。

昔の友人かもしれない。

別れた人かもしれない。

あるいは、もう戻れない「あの頃の自分」かもしれません。

そして私自身にも、この曲には重なる景色があります。

25年ほど前、仕事でよく沖縄へ行っていました。

空港を出た瞬間の空気感。

どこまでも広がる青い空。

ゆっくり流れる時間。

穏やかな人たち。

本土とは少し違う時間が流れているように感じていました。

忙しくしている毎日の中で、沖縄に行くと、「そんなに急がなくてもいいんじゃない?」と、街全体が語りかけてくれているような感覚がありました。

そして、『涙そうそう』を聴くと、今でもその頃の景色がふっと浮かんできます。

出会った人たちの顔。

街の空気。

風の匂い。

その頃の自分自身の気持ちまで。

音楽というのは不思議です。

ただ耳で聴くだけではなく、その時代の景色や匂いや感情まで一緒に連れてきてくれます。

たった数分の物語なのに、時間を飛び越えてしまう。

『涙そうそう』には、そんな力がある気がします。

この夏のコンサートでは、音を奏でるだけではなく、私自身もあの頃の沖縄の風景を思い出しながら演奏したいと思っています。

そして、聴いてくださる方にも、それぞれの「思い出の景色」が浮かぶ時間になったらいいなと思います。

きっと誰の心にも、今は会えないけれど、忘れていない人や場所があるはずだから。

『涙そうそう』は、そんな大切な記憶を、そっと呼び起こしてくれる曲なのかもしれません。

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