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やめたいこととやめたくないこと

三月某日

目覚めてすぐに「もしかしたら大きなニュースが…」とXを立ち上げる指を止める。
スマホのホーム画面にある「X」の黒いアイコンを隠す。
通勤時、信号待ちをしている時、歩道をひょろっとしたおばあさんとゴールデンレトリバーのコンビがゆっくりゆっくりと散歩をしている。ゴールデンレトリバーの口元がにんまりとして、おばあさんが犬にひきずられるように歩いている。おばあさんが止まって、右に曲がる路地の方へ顔を向けた。多分、あっちの道を行きたいんだろうなぁと思う。
信号はまだ変わらない。
犬はおばあさんの方をくるっと振り返って、とてもいい顔のまま、とてもいい姿勢で座ってしまう。
どうするんだろう、と思ったところで信号が変わる。一回バックミラーを見ると、遠くにおっちらおっちらと歩くおばあさんの姿が見える。ゴールデンレトリバーが勝利したらしい。

ものすごく忙しい。ものすごく働いた気がするのに、実際は何も終わらなかった。
昼休憩の時、K氏が送ってくれたお昼ごはんの焼魚の写真を拡大しながら、ハムサンドを食べた。なんだか少し魚臭い気がした。
しーんとした休憩室で隠していた黒い「X」のアイコンを開けてしまう。

帰り道、近所の収穫が終わったブロッコリー畑に、黄色い花がついたひょろひょろとした茎が畑のところどころから思い出したように伸びている。花がつくまで伸びていたことも気が付かなかった。バイクを止めて、畑を眺める。
取り残したブロッコリーの真ん中から茎が伸びて花が咲いていた。なんだかSF映画みたいな風景だった。
角を曲がると、ぱぁっと明るくなって菜の花の海が飛び込んでくる。
菜の花とブロッコリーの花は黄色は黄色でも少し違うんだなぁと思った。菜の花の黄色は蛍光マーカーみたいに夕方の畑の中で光り輝いている。

夜 鯛と菜の花のパスタ(切り落としの鯛)、かいわれとホワイトセロリとトマトを切っただけ、モッツアレラチーズ

鯛のかすかに恥ずかしそうなやさしい香りは春っぽい気がする。切り落としなので、ものすごく小骨が多い。おそるおそる口に入れておそるおそる噛むと、ふわっふわっと鯛のほのかな香りが顔中を包む感じがする。
K氏は切っただけの野菜たちとチーズをパスタに混ぜて、ワシワシ食べていた。

文フリのブース番号が発表された。
せ-45 だそう。「せ」って仮名は書くのがなんだかむずかしい気がしてたなぁ…カタカナならうまく書ける気がしたんだけど、あれって何でだったんだろうなぁと幼い頃、「せ」がうまく書けなくて「セんセい」と書いたなぁと言うのをふいに思い出した。
寝る時、やっぱりXのタイムラインを見たくなる。
指を止めてからぎゅっと手を握って布団に入れた。


文学フリマ東京42に「のほほんや」としてレモンさんと出店します。

https://c.bunfree.net/c/tokyo42/4F/%E3%81%9B/45

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