映画メモ
田舎の村の秘密の滝では過去に一体何が? Sumathi Valavu(2025年、マラヤーラム語)
1990年代のケララ州のとある村。昔惨殺された女の霊が取り憑いているとされる滝があり、夜中に行くと災いが起こると言われていた。青年アップ(『Romanchan』『Bramayugam』などヒットしたホラーに出演したArjun Ashokan)は、かつて恋人が失踪、相手の家族から殺人の疑いを持たれていた。にもかかわらず、アップは再び同じ家族の娘(妹)と恋に落ちてしまい、逢瀬を重ねるがそれを知った家族の妨害に遭う。そんなとき、妊婦を助けるために禁を犯して森に入った青年たちは、恐ろしい体験をするが…。
のんびりした村の情景の中で展開する家対個人の葛藤が描かれつつ、女の霊の真実や村の背後で蠢く悪意、そして失踪した女はどこへ?などが明らかになっていく。ホラーとしてもゾッとするところがあり面白かった。
娘が怖い!母は止むにやまれぬ決断を下す。El diario(2024年、メキシコ)
シングルマザーとなったオルガは娘と共に新居へ引っ越した。ところが屋根裏には持ち主が忘れて行ったと思われる大きな物入れの箱が置かれていた。中を見ると一冊の日記帳があった。何気なく読んでみると、それは連続猟奇殺人犯の殺人の記録だった。その日から家の中で何者かの気配を感じるようになる。心理学者に鑑定してもらうと犯人はどうやら女性で、オルガのよく知る人物、娘のベラにそっくりであった…。
愛する我が娘は将来殺人鬼になるのだという予感に取り憑かれてしまったら、親としてはどうするだろう。未来に起こるであろうことを何とか探り、事態を阻止しようと奔走するオルガ。寝ても覚めても悪夢の続くようなスリラー映画で面白かった。
インドホラーの傑作登場。3人の男たちの運命やいかに。Andhaghaaram(インド・タミル語(テルグ語版を視聴)、2020年)
悪夢と怪異に悩まされるヴィノド(アルジュン・ダース!)、患者に撃たれて様々なものを失った精神科医インドラン、盲目の司書セルヴァン(テルグ語版ではスリヤンとなっていた)の3人の男の辿る運命を描く群像ホラー。
やたらと長いのだけが欠点だが、映像、音楽、演技、ストーリー(ちょっと最後強引だけどよし)、全て面白く、オカルト描写、謎解きが復讐劇へと繋がっていく様がよく出来ていた。ホラーとしても怖いし悲しい。
3人の繋がりが見えてきてからの疾走感もよいし、ここ数年のインドホラーの中では傑作に入るのではあるまいか。
珍しく女幽霊は登場しない。
アルジュン・ダースのギョロ目と低音ボイスが好きならずーっと楽しめるはず。彼の家に置いてある赤い電話には死者からの通話がかかってくる。どんどん追い詰められるヴィノドをいつも通り、暑苦しく苦しげに演じている。しかし彼の髪型どうなってるの?額が2センチくらいしかない。
盲目のセルヴァン(スリヤン)は心の優しい霊能者で、死者の声を放っておけず、死者が伝えたがっている相手にそのメッセージを届けるという活動をしている。
彼をメインにしたら『シックス・センス』のような(Мナイトシャマランはタミル系だしね)肌寒いが心の温まるホラー作品にもできたかもしれないが、作り手は欲張り!アルジュン・ダースのギョロ目を入れずにはいられなかった!!それが成功していると思う。
そして心の正しいものがタミル映画で辿る運命とは…でも皆の心の中にあるインド社会とはこんな感じなんだろうな。
身寄りのないセルヴァンの支えとなってきた彼の父の友達さえも、最後、トラブルに巻き込まれないために彼のことなど何も知らないふりをしたところが痛くて。
他方、冒頭から気味の悪い空気を放っている精神科医インドランも雰囲気が怖くてとてもいい。が、彼の話を書くとほぼネタバレになるののでここは控える。
ぼんくらニキに女の幽霊が取り憑いた!嘘から出た真 Su From So(2025年、インド・カンナダ語)
ペンキ屋の青年アショカは片思いの相手が家でシャワーを浴びているところを覗き見、それを見つかりそうになったとき、咄嗟に幽霊に取り憑かれているふりをする。やがて村中の噂になり、信心深い皆は彼の憑依を信じ込んでしまう。引っ込みがつかなくなって奇行を続けるアショカのため、村人たちは高名な霊媒師を呼んでくる。胡散臭い霊媒師はまじないをし、アショカに取り憑いているのはSomeshwara村のSulochanaという女の霊であると告げる。Someshwaraに様子を聞きに行った村人たちは、そこでバーヌという女性に出会い、Sulochana とはまさに彼女の母親のことだと判明する。ところでバーヌはかつて、村で最も頼りにされているラヴィ兄貴が昔お見合いをして断った相手なのだった。気まずい空気が流れるも、これを機にラヴィ兄貴とバーヌは急接近していく。一方バーヌはアショカのもとを訪れ、亡くなった母と話がしたいと言う。困ったアショカだったが…。
カンナダ語映画の新しいトレンドを引き継ぐ作品として注目されたお笑い映画。アショカ役をしたJ. P. Thuminadが監督。ハンサムな顔を自由自在に操って演じられたアショカ役も面白かった。いんちき霊媒師役をしたRaj B. Shettyはカンナダ語映画界の大物で、作品をしっかりと支える。ラヴィ兄貴役のShaneel Gauthamももっさりしててよかった。
田舎の村で起きていた悲しくつらいことが、偽の幽霊を媒介にして明らかにされていき、それを知ったぼんくらのアショカが一肌脱ぐところ、最高におかしいけど胸がいっぱいになる。
それと並行して語られるラヴィ兄貴の恋路もほのぼのしてて好き。かつて自分を振ったラヴィ兄貴に戸惑いを隠せないが惹かれていくバーヌの変化もよかった。
そしてバーヌ(Sandhya Arakere)のキャラは、こうした作品によくあるヒロイン像を書き換えもした。
肌の色が浅黒い女が年相応の男との恋愛をしたと描き出したところ。南インドチンピラ映画のメッカである(南インド全域がそうだから何とも言えんが)カンナダ語映画、本作とて男目線の映画であることに変わりはないが、色黒の中年スター俳優と、若くて色白のヒロイン(そして話の途中で死ぬ役)の組み合わせを変えることになるのかどうか。大して変わらないだろうと思うけれども、バーヌの役は面白いと思ったし印象に残る。
南インドチンピラ映画の喜び、乱闘シーンも見事にキマり、事件も解決、めでたしめでたし。お決まりのお話にもまだまだ掘り下げようがあるということだろう。
近況
さて最近疲れがひどくてこの一週間は映画を一本も見なかった。が、ユーチューブで『国宝』の予告編を観たら、彼氏と2人で感動してしまった。何て素晴らしい作品なんだろう、予告編だけでこんなに心を揺さぶられるとは!
日本に帰っていた頃、観に行こうかと思っていたが、熱中症からの下痢が2週間も治らず、3時間休みなしの上映と聞いて怖気づいた。見ておくべきだった、漏らしてでも←やめれ
インドはもうすぐディワリになるので新作映画が続々公開予定。特に楽しみなのは、最近ボリウッドのドル箱(ルピー箱?)企画となっているホラーコメディ映画ユニバースの新作『Thamma』。
アーユシュマーン・クラーナーが吸血鬼になってしまう模様。ヒロイン役は出る作品が次々にヒットしている若手女優、テルグの石田えり、ラシュミカー・マンダンナ。ナワズッディーン・シディキも楽しそうだし、これを楽しみにすることにします。
