孫子の「上兵は謀を伐つ」は、転職の答えが出ない人への処方箋だ。
判断が出ないのは意志が弱いからではない。情報が揃っていないからだ。
「転職すべきか、このままでいるか。もう何年も答えが出ない」
この問いを抱えたまま、年齢を重ねている人がいる。
答えが出ないことへの自己嫌悪がある。「自分は優柔不断なのか」「覚悟が足りないのか」と思ってしまう。
でも孫子の言葉が、その思考の罠を解いてくれる。
孫子が言った「最上の戦略」
孫子の兵法に、こんな一節がある。
「上兵は謀を伐つ」
最も優れた戦略は、戦う前に相手の謀(はかりごと)を打ち破ることだ。
つまり「戦う前に、情報戦で勝ること」が最善だ。
これを転職の判断に置き換えるとこうなる。
「転職するかどうかを決める前に、判断に必要な情報を揃えること」が最善の戦略だ。
なぜ転職の答えが出ないのか
転職か現職継続か、その答えが出ない人には共通点がある。
判断に必要な情報が揃っていないまま、頭の中だけで考え続けていることだ。
孫子流に言えば「謀を伐つ前に、戦いの場に臨もうとしている」状態だ。
情報が揃っていなければ、いくら考えても答えは出ない。
転職の判断に必要な情報とは何か
では転職の判断に必要な情報とは何か。
一つ目は「自分の市場価値」だ。今の自分のスキルと経験は、転職市場でどう評価されるか。希望年収での転職は現実的か。これを感覚ではなく、実際に転職サービスに登録するか、エージェントに話を聞くことで把握できる。
二つ目は「転職先の現実」だ。求人票の条件ではなく、実際に働いている人の話。会社の雰囲気、上司の特徴、残業の実態。これはOB・OG訪問やエージェントから情報を得ることができる。
三つ目は「自分の軸」だ。何のために転職するのか。転職して何を変えたいのか。どんな仕事をしているときにやりがいを感じるか。これは外から情報を得るのではなく、自分の過去の経験を振り返ることで見えてくる。
38歳が情報収集すべき理由
38歳の転職は、タイミングの問題がある。
「40歳前後を採用のボーダーとする会社が多い」というのは転職市場の現実だ。
でもこれは「38歳では遅い」ということではない。「38歳のうちに情報を集め、判断を下す必要がある」ということだ。
「転職する・しない」を先に決める必要はない。まず情報を集める。情報が揃った上で判断する。これが孫子の言う「上兵」だ。
情報収集を始めるための最小の行動
「転職情報を集めよう」と思っても、何から始めればいいかわからないこともある。
最も簡単な最初の一歩は、転職エージェントに登録することだ。エージェントとの面談は、転職を決める義務がない。「今の自分の市場価値を知りたい」という目的で話を聞くだけでいい。
もう一つは、自己分析だ。「これまでの仕事で、どんなときにやりがいを感じたか」を書き出す。10年分の仕事の記憶を振り返り、3つだけ書く。それが自分の軸のヒントになる。
情報収集は「転職を決めること」ではない。「判断の材料を揃えること」だ。
あなたへの問い
転職の判断に必要な情報のうち、今あなたが持っていないものは何ですか?
まずその情報を一つ集めることから始めてみてください。
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補足:情報収集を「決断への言い訳」にしない
「情報を集めてから決める」という考え方には一つ落とし穴がある。
情報収集が「決断を先送りするための言い訳」になることだ。
「もっと情報が揃ってから」「もっと調べてから」「エージェントに3社話を聞いてから」
この状態が1年以上続くと、「情報収集中」ではなく「決断を避けている」になっている。
孫子の「上兵は謀を伐つ」は「情報を集めること」を最善の戦略とした。でも情報収集は手段だ。最終的な判断をするための手段だ。
情報収集の期限を決めることをすすめたい。
「2ヶ月間、情報を集める。その後、判断を下す」
この期限があれば、情報収集が決断の準備になる。期限がなければ、情報収集が決断の代わりになってしまう。
孫子の戦略は「謀を伐って、戦う」だ。謀を伐ち続けて戦わないことは、戦略ではない。
転職の判断に向けて、情報収集の期限を決めてみてください。
