見出し画像

経営のド素人だった編集者が、3年連続で売上1億を超えられた理由

WORDSという会社をつくって、約8年が経ちました。ありがたいことに、これまでずっと増収増益です。

でも、ぼくはもともと経営のド素人でした。

編集者として独立したはいいものの、人を雇うのも、値段を決めるのも、利益をどう使うかも、全部むずかしい。

「経営をできてる感じがしないな……」といつも思っていました。

それでも、会社は少しずつ前に進んでいます。メンバーは今年で5人になり、売上も伸びて、気づけば3年連続で売上1億円を超えるところまで来ることができました。(まだ1億円かよというツッコミはなしでお願いします。)

これはぼくが経営者として優れていたからではありません。

迷ったときにアドバイスをくれる「経営の先輩」がいたから。なにがあっても立ち返れる言葉をもらっていたからだと思います。

というわけで今回は、そんな先輩から僕がもらってきた「珠玉の教え」を、おすそ分けしたいと思います。

採用から仕事の受け方、新しい事業のはじめ方……振り返れば、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」のいろんなことを教えてもらってきた気がします。

明治神宮を散歩しながらの経営相談

いつも経営の相談をしていたのがアナグラムの創業者、阿部さんです。

出会ったのは、いまから3年くらい前でしょうか……。

あるとき、知り合いの食事会みたいなものにいったら、たまたまそこに阿部さんがいらしたんです。

お互いTwitterではつながっていて存在だけは知っていたので「獣神サンダーライガーのアイコンの方ですか!?」「あ!」みたいになりました。

当時の阿部さんはすでに100人以上の会社をつくって、何十億という規模の売り上げを出している経営者。ぼくからすると、それだけの会社を回しているというのは、ものすごいことでした。

だから「たまに相談したいんですけど……」と言ったら、なんと「いいですよ」と言ってくれて。そこから相談に乗ってもらうようになりました。

阿部さんの会社、アナグラムがあるのは北参道のあたりで、明治神宮に行く道が近くにあったんです。「せっかくだから散歩しながら喋りましょう」みたいな感じで、明治神宮を歩きながら話したりもしました。

(普通にコンサルを受けていたら相当な額だと思います。阿部さん、本当にありがとうございます!!🙏)

「もし、途中で会社がうまくいかなくなったら」

阿部さんは、もともと運用型広告の専門家です。

クライアントの広告運用を自分で見て、改善して、成果につなげる。いわば、自分の腕で価値を出してきた「職人」でした。

そこからアナグラムという会社を作り、少しずつチームにしていった。

自分とは業界も規模もちがうけれど、通ってきた道にはどこか近いものも感じていろんな話を聞きました。なかでもよく覚えているのは、一緒に焼き鳥を食べていたある日のこと。

「もし、途中で会社がうまくいかなくなったらどうしたらいいんですか」

と聞いてみたんです。

当時のぼくは、人を雇うこと、会社を続けていくこと自体にもまだ不安がありました。社員の人生を変えてしまっていいのか? 運命を握ってしまっていいのか? と。だから、率直に気になっていたんです。

そしたら阿部さんも、かつて同じような不安があって、とある経営者に相談したことがあるといいます。

で、そのときに言われたのが「もしそうなったら、ごめんって謝るしかないよね笑」という言葉だったらしいんです。

会社をやっていれば、予測できないようなことも起きる。もしかしたら立ち行かなくなることもあるかもしれない。そのときはちゃんと謝ればいいじゃん、と。

シンプルな言葉ですが、その言葉で阿部さん自身もすごく肩の荷が下りたという話でした。

そんなエピソードを聞いて、ぼくもけっこう救われた感じがありました。もちろん人を雇う以上責任はある。でも、それを過剰に背負いすぎて動けなくなる必要はない。

なんとなく「このまま進んでいいんだな」と思えたのです。

採用費を惜しむのは数千万をドブに捨てること

そのころのWORDSは、やっと社員が数人になったくらいの状況でした。

1人、2人、3人と増えていって、4人になったと思ったらまた3人に戻ったり。そんなことを繰り返しているタイミングだったと思います。

社員を増やすべきかどうかみたいな悩みも抱えつつ、一方で「採用にそんなに時間とお金を使って、意味があるのかな?」みたいなことも考えていました。

そんなとき、阿部さんに会うといつも「採用は無茶苦茶頑張ったほうがいい」って言われるんです。

「採用費を惜しむことで、数千万をドブに捨てる可能性もあるんだよ」と。

たとえば将来エースになるような人を見つけたら、その人が年間で何千万も稼いでくれるかもしれない。

でも、その人を見つけられなかったり、来てもらう努力をしなかったら、その利益はなかったことになるわけです。だから「それって損失じゃない?」みたいな話です。

そんな話を聞いたら、改めて「採用はがんばらないと」と思わされますよね。そこから、インターン生や社員の採用にも、より本腰をいれて向き合うようになりました。

「他人への指摘」は価値が高い

新しいメンバーに来てもらうと、今度は新しい課題が出てきます。

それは、人に指摘をすることです。

仕事を任せる以上「こうしたほうがいいんじゃない?」「それはちょっと違うかもしれない」と言わなきゃいけない場面が出てくる。

でも、これがぼくは苦手でした。

指摘やフィードバックって言いづらいし、好かれようと思ったらあんまり強く言いたくはない。これは人間の性だと思うのです。

でもぼくがそんな話をすると、阿部さんは「他人への指摘はコストが高いからこそ希少価値があるんだよ」と言います。

人への指摘はできればしたくない、というのは普通のこと。それでも指摘をするというのは、やっぱり相手を思ってないとできない行動です。

指摘は、する側にもされる側にも負荷がかかります。 だからこそ、お互いに「これはお互いのためのものだ」と思えていないと、なかなか成立しない。

そう言われて、指摘を受けたときの見え方も少し変わりました。

嫌われるかもしれないのに、それでも言ってくれた。そう考えると、指摘はありがたいものなんだと思えるようになったんです。

ぼく自身、いまだに指摘が「得意」というわけではありません。いいところを見つけてもらったほうが相手は喜ぶんじゃないのかな? と思ったりもします。

それでも、言いづらいから避けるのではなく、相手にとって必要ならちゃんと言葉にする。まだ全然うまくはないけれど、そこは意識するようになりました。

「どんな値段をつけるか?」=「どんな経営をしたいか?」

プライシングにも迷いがありました。

うちはこれまで比較的単価を高くして、その分価値を上げて、満足度を上げて、深く入り込むような仕事の仕方をしてきていました。

でももっと単価を下げて、もっと多くの会社に関わるやり方もある。むしろ世の中の多くの会社は、そうやってサービスを広げているようにも見えました。だから「そっちのほうがいいのかな」と思ったりもしていたんです。

阿部さんの答えは、「高ければいい」とか「安ければいい」とか、そういう話ではありませんでした。「プライシングの問題は、結局どの山を登るかっていう話だよ」ということでした。

もちろん「安くしてより多くの人に届けたい」っていうのも立派な経営だし、「高くして、限られた人に極上のサービスを提供する」みたいなのも立派な経営。

だから、そこは答えはありません。

ただし「どんな値段をつけるか」という判断は「自分たちはどういう経営がしたいのか」という意思表明にそのままつながります。

「結局どんな経営をしたいのか? に尽きるでしょ」と阿部さんに言われたことで、改めて自分が、自分の会社が、どうなることがいちばん納得度が高いのかを考えるようになりました。

代理店さんからの仕事は一切受けない

同じような話で、代理店さんからの仕事を「受けたほうがいいのかな?」と悩んだこともありました。

でも阿部さんの会社は、代理店さんからの下請け仕事は一切受けていないらしいんです。何回も誘いはあったけど、やっていない。

なぜ請けないほうがいいかというのには、いくつか理由があるらしくて。

まず、あいだに他の会社が入ることでクライアントに食い込みづらくなる、ということです。

代理店さんは僕らを信頼して仕事を紹介してくれます。ただ、最初からクライアントが自分たちを直接信頼して依頼してくれている状態とは、やっぱり少し違う。

クライアントからすると、信頼しているのはまず代理店さんのほうであって、自分たちは「紹介された会社」として始まることになる。構造として、最初から難しさがあります。

あとは集客ルートを代理店さんに依存することになるのもデメリットです。

中長期的にはあまり自社のためにならない。代理店さんから「またこのお仕事お願いします」みたいな感じで依頼が続いても、こっちの集客力は全く上がらない。

だから阿部さんの会社、アナグラムはオウンドメディアをやったりして、自分たちなりの集客ルートを確保していった。そのおかげで急に売上が落ちたりすることもなく、自分たちのブランドが確立されていったといいます。

断るのは不誠実なことではない

ただ、頭ではそうわかっていても、実際に仕事を断るのはやっぱり怖い。

「WORDSって仕事断るんだよ」「竹村さんは忙しぶっちゃって、仕事を請けてくれない」とか言われてしまうかもしれません。

悪い噂が広まるんじゃないか、って思っちゃうんです。

そんな話を阿部さんにしたとき、返ってきたのは「仕事を断るという噂よりも、期待以上のものが返ってくるという噂のほうが強い」という答えでした。

請けた仕事に全力投球して、最終的には「いい仕事をするから、むしろ請けてくれない」みたいな噂が広まるぐらいのほうがいい。

だから、阿部さんの言葉を借りるなら「仕事を断るのは不誠実なことではない」のです。それこそが品質を守り、クライアントに誠実でいるための、重要な判断ということになります。

こうして値段を決めたり、仕事を選んだり。試行錯誤を重ねながら、売上も利益も、少しずつ積み上がっていきました。

人は既に持っている何かを失うことを過大評価し、新しく得る何かを過小評価する

顧問編集者の事業で売上が立つようになったところで、独立してからずっとやりたかった「出版事業」を始めることにしました。

ただ怖さもありました。

いまの事業はうまくいっている。でも、そこに新しい事業を加えたら時間もお金も使うことになる。新しい事業が失敗するかもしれないし、中途半端になるかもしれない。

そう考えると、やらないほうが安全に思えてしまうのです。でも阿部さんはこんなことを言っていました。

「人は既に持ってる何かを失うことを過大評価し、新しく得る何かを過小評価する」

「人間の心理ってそうだよな」と思います。

いまある売り上げや安定を失うのは「すごいリスクだ」と思ってしまう。でも、新しく挑戦したことで得られたかもしれないものは過小評価しがちです。「将来得られたはずのものを得られない」ということを、多くの人は「リスク」と呼ばないんです。

たとえば、いま出版事業を始めなければ、短期的には安全かもしれません。いまある事業に集中できるし、余計なコストもかからない。

一方、ここで始めなかったら、10年後に出版がWORDSの大きな柱になっている未来もない。そこから広がったかもしれない仕事も、売り上げたかもしれない10億円(?)も、なにもありません。

そう考えると、未来で得られる「なにか」の可能性を信じてつくっていくのが、会社の面白いところでもある。そんな視点を知って、経営の見方も変わりました。

だったら自分がやりたいことに、ちゃんと賭けてみよう。紙の出版事業をはじめてみよう。そう思えるようになったんです。

……そして、まずは最初の一冊として形にしたいと思ったのが、阿部さんの言葉でした。

ぼくが壁にぶつかるたびに相談してきたこと。そのたびにもらってきた言葉。これだけ何度も助けられてきたのだから、きっと同じように必要としている人がいるはずだと思ったのです。

これは絶対、本にしたほうがいい

あとから知ったのですが、阿部さんは16年の経営者人生のなかで、膨大なメモを書き続けていました。

自分が迷ったこと。失敗したこと。人から言われてハッとしたこと。ぼくがもらってきたアドバイスも、阿部さんが成功と失敗を繰り返しながら、少しずつ書き溜めたメモがもとになっていたんです。

それを知ったとき、「これは絶対、一冊の本にしたほうがいい」と確信をもちました。

そんな思いがやっと形になったのが、阿部さんの著書、『経営メモ』です。

会社をやっていると「これでいいのか?」と迷う場面が山ほどあります。

でも正解はありません。

だからこそ、迷ったときに立ち返れる言葉があるだけで、救われることがある。実際にぼくがそうでした。

この本も、多くの人にとってそんな存在になるはずです。会社をつくったばかりの人にも、次の一手に迷っている人にも。ひとりで悩みながら、なんとか前に進もうとする人に、きっと届く一冊だと思います。

このnoteで書いたエピソード、言葉も載っているので、ぜひ手に取ってみてください!


編集:野宮すず(株式会社WORDS)

いいなと思ったら応援しよう!