本性の中にある思いやりの心(965)
自分自身や他者を深く理解し、その人に寄り添う力のことを、思いやり(コンパッション:Compassion)と言います。相互に生かされているという中立的な視点で見て、あるがままに共感して、寄り添って役に立ちたいというやさしさ、という人が生まれつき持っている心です。すなわち、思いやりの心は、本性・自性の中にあるのです。
思いやりの心を発揮するのは、人によってレベル差があります。その差異によって、昔からいろいろな言い方で「思いやり」を表現しています。今回は、どのような言い方があるかを述べてみたいと思います。
思いや(遣)り= 他者の身上や心情に配慮する(心を配る)こと。また、その気持ちのこと。
共感= 他者の考え、主張、感情を、自分もその通りだと感じること。また、その気持のこと。
人情= 人間が本来持っている心の動き。他者をいたわる心、思いやりの心であり、情けとも言う。
同情= 他者の身になって、その感情を自分のことのように思いやっていたわること。
これらに共通するのは、「相手の気持ちを理解すること」ということです。
さらに、「相手の苦しみを和らげるために、みずから行動すること」を加えると、【親切】(他者の身になって、その人のために何かをすること)があります。
次に、仏教と儒教などの思いやりに関する言葉を示しておきましょう。
慈悲= 仏教語。慈は、いつくしみ(相手をかわいがり、大切にする)、喜びを与える(与楽(よらく))。
悲は、憐(あわれ)んで、苦しみや不幸を除く(抜苦(ばっく))。
仁= 儒教の語。身近にいる親しい人との間における愛情。
[注] 愛は、複数の他人を大切に思い、いつくしむ感情のこと。
仁と愛とは同義ではない。
【仁恵】 思いやりの心をもって、なさけをかけること。
慈悲と同義。
【仁愛】 思いやり、深くめぐみをかけること。慈愛と同義。
恕(じょ)= 人の身上や心情について察すること。同情すること。
【寛恕】 心が広く、あやまちなどをとがめだてせずに許すこと。
【忠恕】 自分の良心に忠実であり、他人に対する思いやりが深い。
[参考] 曾子曰く、「夫子(ふうし、孔子)の道は、忠恕のみ」と。
惻隠(そくいん)= あわれみの心。人間は、生れながらに4つの心(四端(したん))を持つという、その一つ。
[注] 四端=惻隠、羞悪(しゅうお。はじらい、悪を憎む心)、
辞譲(じじょう。ゆずりあい、謙譲の心)、
是非(ぜひ。善悪の判断)の4つ。
仁、義、礼、智という徳になるという。
いつの時代にも、思いやり、およびその類語は多くの人の間で議論されていたということです。
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