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第14回:Missionだけでは組織は動かない~組織を動かすのは、日々の判断を支える「Value」である~

第1章 Missionだけでは組織は動かない

前回、私は「Whyとは理念である」と書いた。

しかし、理念だけでは組織は動かない。

Mission(使命・存在意義)は、私たちが何のために存在するのかを示してくれる。

しかし、仕事とは毎日の「判断」の積み重ねである。

「まず売上を優先するべきか。」

「お客様のために時間を使うべきか。」

「自分だけで進めるか、周囲に相談するか。」

Missionは進むべき方向を示してくれる。

しかし、その途中でどのような判断をするかまでは教えてくれない。

その判断基準となるのが、「Value(価値観)」である。

今回は、前職の分譲住宅メインの不動産会社で広報・販促課を任されていた時に実際に掲げていたMissionとValueをご紹介しながら、「Valueとは何か」についてお話ししたい。


第2章 「ファンを作る」というMission

実は、この「ファンを作る」というMissionは、私が前職の分譲住宅会社で考えたものではない。

さらにその前、人材派遣会社で宣伝・広報を担当していた頃、社長と上司からこんな言葉をかけられた。

「藤田さん、うちの会社のファンを作ってほしい。」

当時は、「ファンを作る」とはどういうことなのか、正直よく分からなかった。

しかし、宣伝・広報の仕事を続ける中で、一つの答えにたどり着いた。

ファンが増えれば会社の認知度が上がる。

認知度が上がれば反響が増える。

反響が増えれば営業のチャンスも増える。

つまり、宣伝・広報の仕事とは、自社のファンを増やし、その結果として会社の成長につなげる仕事なのである。

だから私は、前職で広報・販促課を任された時も、
Missionを「ファンを作る」とした。

しかし、Missionだけでは日々の仕事は進まない。

そこで定めたのが、5つのValueであった。


第3章 Valueの土台にあった「プライド」と「感謝」

MissionやValueを決める前に、私たちが最も大切にしていた考え方が2つあった。

それが、

「プライド」と「感謝」である。

プライドとは、

「自分の仕事がこの会社を支えている。」

という誇りを持つこと。

感謝とは、

「他の仕事があるからこそ、自分の仕事も成り立っている。」

という気持ちである。

当時の社長は、こんな言葉をよく口にしていた。

「営業を殺すには刃物はいらない。反響を与えなければいい。」

少し過激な表現ではあるが、本質を突いた言葉であった。

分譲住宅・分譲地の営業は、飛び込み営業ではなく反響営業が基本である。

お問い合わせがなければ、営業は力を発揮することすらできない。

私たち広報・販促課のKPIは「反響数」であった。

売上ではない。

売上という花を咲かせるための"種"を生み出すことが私たちの役割だったのである。

だから、自分たちの仕事には大きなプライドを持っていた。

しかし、その種を育てるのは営業であり、設計が家を設計し、工務が家を建てる。

自分たちだけでは、お客様へ価値を届けることはできない。

だからこそ、自分たちの仕事へのプライドと、他部署への感謝。

その両方が必要だったのである。


Missionは方向を示す。
Valueは日々の判断を決める。


第4章 私たちが掲げた5つのValue

私たちが掲げていたValueは次の5つである。

5つのValue

① 行動なくして成果なし

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉がある。

しかし、それでは少し難しい。

そこで私たちは、

「行動なくして成果なし」

という言葉に置き換えた。

実際、ある分譲地で最後の1区画がなかなか売れず、ポスティングチラシを制作したことがあった。

ところが、そのチラシが各家庭へ届く2日前に申し込みが入った。

また別のモデルハウスでは、Instagramでルームツアーのライブ配信を実施した。

その数日後にお問い合わせが入り、ご契約につながった。

しかし、そのお客様は、そのライブを見ていたわけではなかった。

もちろん、それが直接の原因だったとは言い切れない。

しかし、一つだけ確かなことがある。

行動しなければ、その成果は絶対に生まれなかった。

まずはやってみる。

それが最初のValueである。

② 協力会社はパートナー

広告会社、不動産ポータル運用会社、SNS運用会社。

私たちは協力会社を「下請け」と考えたことは一度もなかった。

自分たちにはない専門知識を持つパートナーだからである。

だからこそ、

「プロが言うなら、まずは素直にやってみよう。」

そんな姿勢を大切にしていた。

③ 徹底的にパクったうえでカスタマイズ

私も昔から「TTP(徹底的にパクる)」という言葉は知っていた。

ただ、「パクるだけでいいのか?」とずっと疑問に思っていた。

しかし、ある整骨院の投稿で、

「徹底的にパクったうえでカスタマイズ」

という言葉を見たとき、すべてが腑に落ちた。

成功事例を学び、

自社に合わせて改善し、

さらに進化させる。

それこそが、本当の学びなのである。

④ きれいな現場、正確で素早い情報発信

自社のホームページがきれいで情報発信が多くても、分譲地現地は雑草が伸び放題で、のぼりが汚れて破れたまま放置されていたらどうだろうか。

きっと、お客様は

「この会社は管理が行き届いていない。」

という印象を持つだろう。

情報も現場も、会社の顔である。

だから私たちは、

「きれいな現場、正確で素早い情報発信」

をValueとして掲げていた。

⑤ 報告は悪いことほど素早く

このValueは、第10回でも少し触れた。

しかし、これは大きなトラブルだけを意味するものではない。

例えば、

「A分譲地、草がかなり伸びてきています。」

「B分譲地に冷蔵庫が不法投棄されています。」

そんな報告を部下からを受けることもあった。

私はすぐに営業や建築部へ共有し、草刈りや撤去の対応をお願いした。

もし、

「そのうち誰かがやるだろう。」

と放置していたらどうなっていただろうか。

分譲地を見に来たお客様は、

「管理が行き届いていない会社だ。」

という印象を持ってしまうかもしれない。

小さな違和感を早く共有することは、会社の信頼を守ることでもある。


Valueとは行動指針ではない。
迷った時の判断基準である。


第5章 Valueは人も育てる

この5つのValueを最も体現してくれた部下がいた。

彼女は最初、アルバイトとして入社した。

実は最初に求人へ興味を持ったのは、お母様だった。

しかし、

「この仕事は自分の方が向いている。」

そう言って応募してきたのである。

面接で仕事内容を一通り説明したあと、

「どう思いましたか。」

と尋ねると、返ってきた答えは、

「楽しそう!」

であった。

その一言が採用の決め手となった。

入社後も、彼女は「自分にできること」から挑戦を始めた。

小さなお子さんがいたこともあって彼女も興味があり、撮影許可が不要な東大阪市内の公園紹介シリーズを企画した。

すると後日、同じ東大阪の地域情報サイトの編集長から、

「私、あの公園シリーズ大好きなんです。」

という嬉しい言葉をいただいた。

さらに、それまで外注していたチラシ制作にも挑戦すべく、Canvaを習得。

チラシだけでなく、Instagramの投稿制作まで担当できるようになった。

私はこうした姿勢を、

「エンラージ志向」

と呼んでいる。

今できることだけで満足するのではなく、自分ができることを少しずつ広げていく考え方である。

だから彼女は正社員になったのだと思っている。

会社が見ていたのは、

「何ができる人か。」

だけではない。

「どんな価値観で仕事に向き合う人なのか。」

であった。


能力は後から伸ばせる。
価値観は仕事への向き合い方を決める。


第6章 Valueはどんな部門にも必要

Missionは、組織が目指す方向を示す。

しかし、毎日の判断までは教えてくれない。

だからValueが必要なのである。

現在、私は新しい会社で、

SUUMOの改善、

周辺施設データベースの整備、

CRMの構築、

営業ダッシュボードの作成などに取り組んでいる。

仕事内容は以前と比べかなり広がっている。

しかし、判断基準は変わっていない。

「まず行動してみる。」

「専門家の力を借りる。」

「良いものは学び、自社向けに改善する。」

「情報は正確かつ迅速に発信する。」

「問題は早く共有する。」

これらのValueがあるからこそ、仕事が変わっても迷わず判断できるのである。

Valueは広報・販促部門だけのものではない。

営業にも、設計にも、工務にも、総務にもある。

もちろん会社だけでもない。

家庭にも、学校にも、スポーツチームにも存在する。

人は共通の判断基準があるからこそ、迷わず同じ方向へ進むことができる。


Missionだけでは組織は動かない。
組織を動かすのは、共有されたValueなのである。

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