250303◇『ツミデミック: 一穂ミチ』を読んだ
本屋さんでぷらぷらしていたら、この本の表紙が目に入った。
◎あらすじ
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中に話しかけてきた女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は――「違う羽の鳥」
調理師の職を失った恭一は、家に籠もりがち。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣に住む老人からもらったという。翌日、恭一は得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れると――「特別縁故者」
渦中の人間の有様を描き取った、心震える全6話。
◎覚書
違う羽の鳥
・夜の雑踏の中に自分。確かにだんだん自分の存在が朧げになる感覚、分かるなあ
・優斗は飲み屋の呼び込みか。あれ、心が疲れるんだよな。興味がない人をこちらに引き込むのは難しすぎるよね。
・コロナが流行していた頃は、本当に飲食業界厳しかっただろうな。死活問題だ。
・見た目も、物理的にも強そうな女がこちらを見ている。同じ大阪の出身らしい。慣れない場所で同郷の人を見つけると嬉しくなるよね。
・優斗の仕事の終わりに一緒に飲みに行く。確かにこれだけ綺麗な人が自分に対して好印象で来たら美人局を疑わざるを得ない。
・女は井上なぎさと名乗った。優斗はその名前を知っている?同姓同名がいてもおかしくないけど…過去に何か?
・なぎさは愛人(パパ活)、優斗は大学中退
・優斗が知っているなぎさは線路に飛び込んで死んでいる。なぎさの母が踏切に訪れる姿も見た。後述を見てからだと母の行動は自分のプライドによるものなのかと悲しくなる。
・#家出少女は手っ取り早く双方の欲を満たすなと思った。金や宿が手に入る女と性欲を満たす男。
・目の前のなぎさが過去に知っているなぎさでは無いはずなのに。「井上なぎさ」として死んでくれる子と入れ替わっていた…!?顔が潰れていて、持ち物がなぎさのものなら可能か?何が真実なんだ?
・話を聞いて欲しくなったのかな。身の上を開示してもメリットなんてないのに。過去を知っている優斗なら話す価値があると思った?
・事実としてあるのは、少女が辛い声を上げられず死んだこと。それがなぎさであっても、なぎさの親友であっても変わらない。
ロマンス⭐︎
・なんで子供って急に走り出すんだろうな。エネルギー有り余りすぎだろ。否定的な人も多いけれど、子供用リードは大切だよ。
・母の百合と4歳娘のさゆみ、夫の雄大
・ミートデリのばちばちのイケメンに目を惹かれた百合。そんな端正な顔立ちの人が何故?本業の他に趣味の自転車がてらでとか?
・世間話をしようとしても夫は鼻で笑って会話にならない。妻から話される他愛もない話に価値が無いと思っているのかも。話の中身そのものより、コミュニケーションを大切にしたいのに。
・あのイケメンが届けに来ないね。確かにガチャだ。これは沼るね。ミーデリ使うためにさゆみに睡眠薬を…?
・夫婦関係や子供の気持ちや働きたいのに働けなかった葛藤、百合を押さえつけていたものを解放するのにミーデリが必要だったんだね。沼る様子は常軌を逸しているが。
・配達員が強引に入ってきた。百合を襲ってきたので身を守るため殺してしまった。ガチャと現実がごっちゃになっている。ハズレを消せば当たる確率は上がると本気で思ってそう。
・本当にイケメンが存在していたのだろうか。心が疲弊していた百合の、心を守るための妄想だったのかもしれない?
・急展開で終わった。まさか殺人で終わるとは。
憐光
・気がついたら松の木の下にいる。「ぽとっと世界に生まれ落ちたように」が好きな表現だ
・「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰りこむ」
→「あなたと別れて因幡の国に行きますが、その地にある稲葉山の峰に生える松のようにあなたが待っていると聞いたなら、今すぐにでも帰ってきましょう」親しい人との別れを惜しんだ歌で、別れの名句らしい。
・この和歌と三本松葉を置き願掛けすると失くしたものが見つかるというおまじないがある。彼女は15年前に死んでいることを自覚した。おまじないで骨を見つけてくれたから現れたのか?
・葉先が3本に分かれている松は「三鈷の松」と呼ばれ、縁起物として知られているらしい。
・とりあえず家に行こうとする途中、親友のつばさに出会う(あちらから見えているわけじゃないから会ってないか)15年後の姿なんて分かるものなのね。杉田先生が迎えにきた。
・この幽霊は唯というらしい。2人で唯の家に向かうところだった。
・唯のママ、スコーン焼くんだ。丁寧な人だ。娘の骨が見つかって気持ちの区切りがついたと言っているが内心辛いよな。無いと分かっている希望を断たれたわけだもんね。
・遺影の代わりなのかピンクに囲まれたフォトフレームが唯の部屋にある。桃色祭壇。母の異質さを感じる。良い状態にしてあげたいのは分かるが…
・先生の振る舞い、付き合ってた女にする行動じゃない?母親も電話先の父親と口論しているし、娘に盗まれた金…?だんだんきな臭くなってきた。
・父の浮気、母による母のための娘プロデュース。大人の都合に巻き込まれてたんだ。
・うわあ、もうぜんぶ違うわ。みんな自分のことしか考えてなかった。つばさは家庭環境をきっかけに何もうまくいかなくなるし、先生も唯に手を出してるし、唯も唯で子供ができて、先生を信じて母の金を勝手に下ろすし…つばさも先生も唯さえいなくなればと思って手をかけたんじゃん。
・読み進めるたび、人間の心のどろっとした部分を食わされている感覚になった。
・行ってきまーすは軽い言葉だと思ってたけど、全てを思い出し、真実を知った唯にとって、この世の価値がそんなもんだという表現なのかもしれない。
特別縁故者
・父の恭一、息子の隼、母の朋子。恭一は今無職なんだな。かといって仕事がすぐに見つかるわけでもないので肩身が狭そう。
・近所の家におじいさんから隼が旧一万円札をもらってきた。うまく騙して息子から金を奪ったな。さすが大人汚い。
・おじいさんに会うきっかけにしようと手土産を自作するとは。ケチな奴だけど、手際を表すシーンはカッコよく見えるな。
・滋味がある」味わい深い味、濃いわけではないけどしっかりと感じ取れる深さのあるもの
・タンス預金目当てにおじいさん(佐竹)と接触する。手土産で持っていったすまし汁を気に入られ、お駄賃と引き換えに一品持ってきてほしいと言われた。いいバイトだね。
・特別縁故者に、俺はなる!とんでもないルフィだ。
・少しずつ金が貯まると、たばこやギャンブルよりも料理の腕を磨く方に注力してきた。金がないときこそ欲望のために金を使うのはなんでだろう。欲を発散させるのにそれらが簡単な手段なんだろうな。
・縁故、縁ゆえに…血の繋がりは切っても切れないからな
・佐竹の家に強盗が入るのを見つけて、なんとか阻止した。恭一が住む家一帯の地主や弁当を頼む店の前社長だった。漫画みたいな展開。
・人との繋がりが宝物になった。恭一のこと堕落した人間だと思ってたけど、コロナ禍という世間によって変えられてしまっていただけなんだよな。職人としての気概は変わらずに残っていたから結びついた縁なんだ。
・心温まるオチで安心した、先程までが震えて終わってたから
祝福の歌
・音痴なハミングで妻にキレられるの理不尽すぎる
・高校生の娘が妊娠。ヘビーな始まりだ。止めるべきなのか、支えるべきなのか。
・不意に、母が本物の母じゃないという出生の秘密を人生の後半で聞く。驚くけど、もういいかな感もありそう
・代理母で、どうにか子を授かろうとする隣人夫婦。パンデミックで破綻し、娘を奪われた。どうしようもない現実が辛い
・母も辛い人生送ってきたんだ。血の繋がりなんて関係ないんだよな。
・本物のお母さんはもう居ないけど、残されたカセットテープに残された音声。上手な歌。
さざなみドライブ
・オフ会の集合?郊外の駅で?なんか不穏、ああ、やっぱり自殺か〜
・パンデミックに人生を壊された人が、死に仲間の条件。パンデミックあるあるが並んでるなあ
・HUNTER×HUNTERみたいな能力だな、自動で書いたことが現実になっているなんて
・先客が死んでいることで、みんなの理由を聞いたことで次回未定の延期か。
・…急に展開変わったな。睡眠薬入りの紅茶?死にたくない人間を殺す趣味があるとはキモすぎ
・マリーゴールドさんの潜入捜査がクリティカルヒットしたな。でも毛利逃げちゃったのか
・生きていく道にスイッチできたのは喜ばしいことだ
何十年後かに初めて読む人には登場人物たちの葛藤や苦しみが理解できるのか不安になった。その時に体感してないものを想像から得るのは難しそうだ。パンデミックの中を生きた私たちにしか感じられないものがある気がする。
