養殖業を始めるために|養殖の種類と養殖に関する法律
こんにちは、弁護士の長友隆典です。
前回は、全国に広がる「ご当地サーモンブーム」についてご紹介しました。
養殖業界の盛り上がりの裏側には、実は様々な法律やルールが関わっています。
今回は、養殖業をめぐる法律について紹介します。
海と陸、国産サーモンの養殖方法

サーモンの養殖方法は、大きく分けて「海面養殖」と「内水面養殖」があります。これに加えて近年注目されているのが「陸上養殖」です。
海面養殖:海の上に網で囲った生け簀を浮かべて育てる方法です。8〜10メートル四方ほどの網を使う「小割式」が主流で、常に海水が流れているため酸素も豊富で、効率よく育てられます。ただサーモンは冷たい水を好む魚なので、日本では水温が上がる夏場をどう乗り切るかが課題で、多くは秋から春にかけて育てて、初夏に水揚げするというサイクルになっています。
内水面養殖:川の水や湧水を利用して、淡水で育てる方法です。本州や九州の山間地・湧水地、あるいは北海道の内陸などで行われており、ニジマスやヤマメが多く養殖されています。
陸上養殖:陸地に大きな水槽を作り、その中で育てる方法です。水をろ過して循環させながら使う「閉鎖循環式」という技術が進み、大手の商社やベンチャー企業も次々に参入しています。天候や海水温に左右されにくく、年間を通して安定して出荷できるほか、寄生虫や病気のリスクも管理しやすいという特徴があります。
魚の養殖に関わる法律とルール:海面養殖には「漁業権」が必要

養殖業を始めるには、それに関する法律や規制を守る必要があります。海で養殖をする場合は「漁業法」が関わり、一定の区域で特定の漁業を営む権利である「漁業権」を取得すれば、養殖を始められます。
漁業権には次の3種類があり、サーモンのような魚の養殖はこのうち「区画漁業権」に当たります。
定置漁業権
区画漁業権(サーモンなど魚類の養殖はこちら)
共同漁業権
なお、区画漁業権は、原則として都道府県知事の免許によって付与されます(漁場が複数の都道府県にまたがる場合など、ごく一部の例外では農林水産大臣が免許を与えることもあります)。
陸上養殖は届出制、令和5年から義務化
一方で陸上養殖は、海、川や湖と接することなく、陸上の水槽で魚を育てるため、漁業権が不要です。
これが新規参入しやすいと言われる理由のひとつですが、令和5年(2023年)4月1日から「内水面漁業の振興に関する法律」の改正により、一定の要件に該当する陸上養殖には行政への「届出」が義務づけられました。
成長する養殖業と法律の役割
それ以外にも、令和8年4月1日に施行された改正「水産流通適正化法」も関わってきます。
これは、違法に採捕された魚が市場に出回るのを防ぐための法律で、取引記録の作成・保存や、適法に採捕されたものであることを証明する書類の添付が義務付けられています。
すべての養殖魚が対象というわけではありませんが、アワビ・ナマコ、太平洋クロマグロ、ウナギの稚魚が対象です。
昔は漁業協同組合員が優先的に区画漁業権を得ていましたが、現在は民間企業も取得しやすくなっています。
養殖業は成長産業ですし、水産業に関心が高まるのは私としてもとてもうれしいことです。
養殖は、漁業法をはじめ様々な法律の上で成り立つ産業です。
天然の資源には限りがあるからこそ「育てて、いただく」養殖が、ますます大事になると思います。
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▼参考
水産政策の改革について|水産庁
漁業権について|水産庁
漁業権について|九州漁業調整事務所|水産庁
陸上養殖業の届出について|水産庁
漁業権の概要
