「越境する人事」へ──同質性の安心を超えた未知の学びを
人事コミュニティは“学びの宝庫”である
人事という仕事は、経営と現場のあいだに立ち、常に「人と組織の最適解」を探し続ける役割です。ときに孤独で、判断に迷い、葛藤を抱えることも少なくありません。だからこそ、人事同士が集い、学び合うコミュニティの存在は非常に意義深いものだと思います。
私自身もこれまで多くの人事コミュニティに参加してきましたし、今後も人事コミュニティでの学びを継続したいと思います。
そこでは、制度設計の知見や採用・育成のノウハウを共有し合い、同じ志を持つ仲間から大きな刺激を受けてきました。困難な局面に立たされたとき、「同じように悩んでいる人がいる」と感じられることは、心の支えにもなります。
こうしたコミュニティは、間違いなく人事の成長にとって重要な“学びの場”ですが、同時に「その居心地の良さに、安住し過ぎてはいけない」 とも感じています。
あらためて自己紹介です
新卒で現在のKDDI株式会社に入社し、情報システム部門やサービス開発部門にてシステム開発業務に長年従事しておりました。KDDI本体でのアジャイル開発組織立ち上げの黎明期からエンジニアリングマネージャとして組織作りに関わっておりましたが、会社設立と共に人事領域にジョブチェンジし、人事責任者として採用、組織開発、研修制度策定などを担当しております。
プライベートではスポーツ観戦(主に写真撮影)が趣味で、毎週末どこかのスポーツイベントに顔を出し写真撮影に明け暮れております。

同質性の安心が、成長の停滞を生むことがある
人事コミュニティには、共感が生まれやすいという魅力があります。
似たような課題を抱え、似たような立場にいる者同士だからこそ、会話はスムーズに進み、理解も深まります。まさに“安心の輪”がそこにあります。
しかし、人間は安心できる環境に長くいると、無意識に「同質性」を求めるようになります。すると、気づかぬうちに多様な考え方を受け入れる力が弱まっていく。それが、人事の越境を阻む壁になります。
たとえば、心理的安全性や1on1、エンゲージメント。これらは人事の共通言語として広く浸透しました。一方で、その言葉が“当たり前”になった瞬間に、思考は止まります。
「心理的安全性はどのように事業成長に寄与するのか?」
「エンゲージメントが高ければ本当に業績は上がるのか?」
本来、人事が立ち止まって考えるべき“問い”が、共感の中に埋もれていくリスクがあります。
同調が多様性の理解を妨げる
同じ立場の人同士が集まると、自然と“同調”が起こります。
共感が広がり、仲間意識が生まれ、議論が心地よい方向にまとまっていく。
しかし、同調が強まるほど、「異なる意見」に耳を傾ける機会が減っていきます。
そのとき、人事は“人を理解する専門家”であるはずなのに、多様性への感度を失う危険があります。たとえば、エンジニアや営業の現場を見ずに「理想の組織論を語っても、それは理想論に終わります。
事業現場のリアリティを理解するには、人事の外の世界に出ていく勇気が必要だと思います。
多様性を理解するとは、“違いを受け入れる”ことではなく、“違いの背景を知ろうとする”ことだと思います。その努力なしに、人事が本当に人を理解することはできないのではないでしょうか。
越境とは、自分の言葉を磨くこと
最近「越境する人事」の必要性を感じています。
それは、単に異動することや新しい職種に就くことではありません。
自らの専門性を超えて、他者の視点・他職種の論理・異文化の感覚を自分の中に取り込むことです。
エンジニアと話すと、システム思考や仮説検証の重要性を学びます。
デザイナーと対話すると、共感や体験設計という“人間中心の発想”に出会います。事業担当者と向き合うと、数字と顧客という現実の中で、人の成長をどう価値化するかという本質に立ち返ります。
その過程が人事としての立場を再考するきっかけになります。。
越境は、他者を理解するだけでなく、自分自身の思考を相対化し、再構築するプロセスになり得るものだと思います。
安心の輪を一歩出たところに、進化の芽はある
人事コミュニティは学びの場であり、仲間との絆を育む場所でもあります。
その価値をとても大きく、越境の出発点としてとても大切な「安心の輪」です。
ただし、成長の芽は、その輪の外を意識することで芽吹くこともあると思います。一歩外に出て、違う言葉、違う価値観、違うリズムで働く人と対話したときに、新しい視点が生まれます。
KDDIアジャイル開発センターでも、私たちは「アジャイル×人事」というコンセプトのもと、越境的な学びを大切にしています。
人事がエンジニアのスクラムミーティングに参加したり、デザイナーと共に採用広報を考えたり。そうした“輪の外の対話”が、組織に新しい知をもたらしています。
安心の輪の中で学び、外に出て挑戦し、また輪に戻って知見を共有する。
この循環こそが、人事が持続的に進化していく原動力になると感じています。
最後までお読み頂きありがとうございました!
