西洋の敗北 10

 続きです。

 自由貿易の布教者の勝利がもたらしたものは、彼らすら予想しなかった社会的・政治的結果を引き起こしたそうです。例えばアメリカでは労働者の道徳的混乱が深刻だとありましたが、西ヨーロッパも移民で大変なことになっています。日本もその序章に入っているように思えます。

 前回、「どうしてロシア側に付いたのか、いや「付いた」と言うと語弊がありますが」と書きましたが、「『その他の世界』の国々にロシアを助ける意思がなかったならば、ロシアが制裁にこれほど耐えることはなかっただろう。」とありました。やっぱり、ロシアに付いていたのですが、攻め込んでいるのはロシアですから表立って支援はできなかったのでしょう。しかし、戦争の歴史を鑑みれば、それほど詳しくない私でも、巧妙に相手から仕掛けるように仕向けて、あるいはそのように見せかけて大義名分をつくってから戦争を始めるなんて言う例は結構ありますね。

 二〇二三年八月六日の「ル・モンド」誌の社説が引用されていましたが、そこには「ロシアの石油を密かに輸送する『影の船団』は、世界の総輸送能力の一〇%から二〇%に相当する。こうした船団は、インドなど、西洋諸国も近づこうとしている重要国を介することで、制裁を骨抜きにできてしまう。」とありました。外国のマスコミが日本のマスコミと比べてどの程度信頼を置けるのかというところが分かりませんが、「影の船団」なんて恥ずかしい名前を掲載するくらいなのですから、本とのことなのでしょう。いや「恥ずかしい名前」なんて書きましたが、読んでいてワクワクしてしまった自分もいます。

 そんなこんなで最終章になりましたが、最終章のタイトルが「米国は『ウクライナの罠』にいかに嵌ったか」というものでした。ショッキングなタイトルです。そして「ウクライナ戦争は、一九九〇年に始まった一つの歴史のサイクルを閉じる出来事である。」とありました。一九八九年十一月にベルリンの壁が崩壊、一九九一年十二月にソ連の崩壊ですから、そのあたりから始まったサイクルですね。当時はフランス・ミッテラン大統領、イギリス・サッチャー首相の頃で、当時統一されたドイツを率いたのはコール首相でした。ブッシュ大統領がドイツ再統一を容認し、誰もが共産主義の崩壊、アメリカの勝利と解釈したそうです。後知恵ながら、私もそう思っていましたが、著者曰く「それは間違いだった」とのこと。アメリカは、ドイツの人口が再統一後も自国の1/3程度であることから、そもそも重要視していなかったのだそうです。

 続きます。

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