「明暗」


 夏目漱石著「明暗」を読みました。次回の「いとうせいこう×奥泉光 文芸漫談シーズン7」で取り上げられる作品です。

 主人公の津田という男性は結婚して1年足らず。なぜか痔ろうの手術が必要になるというところから始まります。津田の妻・お延は快活な美しい女性というイメージです。津田の勤め先に吉川という上司がおり、吉川と津田の父親が友人です。津田は痔ろうの手術のため仕事を休む旨を吉川に伝えに行きますが、タイミングが合わず吉川の妻に事情を説明することになります。また、津田はなぜか父親から仕送りを貰っており、手術が必要となったタイミングで、その仕送りを断られてしまいます。後で分かるのですが、津田は自宅に下女を雇っており、そのあたりの矛盾が「なんだかなぁ」という感じです。そうした事象に対して、津田とお延、津田と吉川夫人とのやり取りがあるのですが、これがなんとも面倒くさいというか情けないというか、相手の腹を探りながら、こちらの希望を相手の口から言わせようと言ったような策略じみた話し方をするのです。津田について、なんて言うか「器が小さい」、「ダサい」みたいな印象を受けてしまい、自分の中ではダイアンの津田の顔になってしまいました。

 面倒くさいやりとりをしながらも、津田とお延は仲睦まじく、特にお延は献身的です。御金の工面にも協力しようとしますが、津田がそれをメンツがたたないと拒否します。この辺りも器の小ささを感じる要因です。そうした中で津田の友人・小林という男が、津田に絡んでくるのですが、この小林もなんとも面倒くさい男です。津田の対応も結構厳しいもので、どうして友達なのやら訳が分かりません。小林は図々しくも、津田の留守に家を訪ねて、お延に議論を吹っ掛けるなんて言うこともします。ホントに嫌な奴です。

 津田が入院すると、妹のお秀が見舞いにやってきます。父親からの仕送りを止められたことも知っているお秀は、お金を用意してきてくれているのに、津田は素直に受け取りません。受け取らないけど、貰ってやってもいいよみたいな、なんとも情けない態度です。津田とお秀のやり取りに結構なページを割いて、その中でお秀は津田に「嫂さん(お延)を大事にしていながら、まだ外にも大事にしている人があるんです」と言い放ちました。そんな展開は全く予想外だったのですが、それを見舞いに来たお延は廊下で聞いてしまったようです。そこからお延も交えて、また論戦が始まりますが、こちらも聞くに堪えないような非建設的な議論で、またそれに結構なページが割かれています。

 翌日は吉川夫人が病院にやってきます。昨日のお秀との議論についてお秀から話を聞いたらしく、吉川夫人は津田とお延でお秀をいじめたような解釈をしているのでした。兄弟げんかをわざわざ吉川夫人に報告に行くのもどうかと思いますが、津田とお延の縁を結んだのは吉川夫人のようでした。そのあたりで、場面は津田とお延のなれそめに移るのですが、そこはサラッと終わって、また現実に戻ります。このなれそめには続きがありそうな気がしますが、未完の本書にはそれがありませんでした。

 長くなりましたので明日に続きます。

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