あの頃の「好き」は、嘘じゃなかった。
昼下がり。
何気なく流していた動画の中で、
ふと音楽が耳に触れた。
次に再生されたのは、
昔よく聴いていた曲だった。
あのイントロが流れた瞬間、
懐かしい、よりも先に、
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
少しだけ、息が浅くなる。
あの頃、
“あなたの生き方が好き”だと思っていたことを、
思い出した。
恋をすることが、
こんなにも難しいなんて、知らなかった頃。
ただ好きでいるだけなのに、
なぜか不安になったり、
言葉にしなかった一言を、
帰り道に何度も思い返したり。
うまく笑えなかった日も、
ほんの少しの沈黙に、
意味を探してしまった日もある。
あのとき、どうしてあんなに臆病だったんだろう。
もっと素直にいればよかった、なんて。
今なら、そう思う。
でも。
あの頃の私は、
あの頃の私なりに、ちゃんと好きだった。
傷つくかもしれないのに、
それでも誰かを想っていた。
不器用で、遠回りで、
うまく伝えられなかったとしても。
あの気持ちは、
嘘じゃなかった。
大人になると、
うまくやる方法ばかり覚えてしまう。
距離の取り方や、
期待しすぎないことや、
傷つかないための選び方。
それはそれで、大切だけど。
あの頃みたいに、
まっすぐに誰かを想うことは、
少しずつ減っていく。
だからこそ、
あのときの自分を、否定したくないと思った。
うまくいかなかった恋も、
言えなかった気持ちも、
全部、ちゃんと“好きだった証”だから。
あの曲が流れてきた昼。
選んだわけでもないのに、
なぜか今の自分に、そっと触れてきた。
不器用で、でも一生懸命だった自分に。
あの頃の「好き」は、
きっと、今の私をつくっている。
だから今日は、
あのときの自分を、
少しだけやさしく思い出してみる。
ちゃんと好きだった自分も、
悪くない。

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