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心が先に、帰っていた。


通知が来ていた。

返さなければと思う。


急ぎではない。

怒られるわけでもない。


それなのに、

なぜか返せなかった。


文章を開く。

内容を読む。

返そうと思う。

でも閉じる。


しばらくして、

また開く。

やっぱり閉じる。


そんな夜がある。


昔は、

自分が冷たいのだと思っていた。

気遣いが足りないのだと思っていた。


本当に大切な人なら、

すぐ返せるはずだと思っていた。


だから、

返せない自分を責めていた。


でも、

ある夜、少しだけ考え方が変わった。


返事をしたくなかったのではない。

誰とも話したくなかったのでもない。


ただ、


今日はもう、

誰かの期待に応える力が

残っていなかったのだ。


朝から、

ずっと誰かのために言葉を選んでいた。

その一つひとつは小さい。


でも、

気づかないうちに心は使っている。


だから夜になると、

返事を書く数行さえ

重たく感じる。


ただ、


今日は自分の心を

休ませたかった。


それだけだった。



私はスマホを伏せる。

部屋は静かだった。

時計の音だけが聞こえる。


返事は、

明日の自分が書いてもいい。


そっとそう思ったら、


部屋が、

少しだけ広くなった気がした。



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