第1章:歯科医師になるまで。大学編「6回生、最後の学生生活」
いよいよ最終学年。
振り返ると、6年間は本当にあっという間だった。
入学した頃、6回生の先輩たちは“雲の上の存在”に見えていた。
白衣を着て病院を歩き、国家試験を控え、もうすぐ歯科医師になる人たち。
「きっと何でもできるんだろうな」
勝手にそんなイメージを抱いていた。
しかし、いざ自分がその立場になると、全くそんなことはなかった。
毎日頭の中にあるのは、
「国家試験に受かるのか」
「そもそもまず卒業できるのか」
その2つばかり。
理想の“6回生像”とは程遠く、現実はただ必死だった。
最後の病院実習
当時は、6回生の7月頃まで病院実習が続いていた。
5回生から続く実習生活。
最初は緊張していた病院にも慣れてきて、少しずつ患者さんとの接し方や診療の流れも理解できるようになっていた。
それでも、国家試験は確実に近づいてくる。
病院実習をしながら、卒業試験、国家試験の勉強も並行して行う。
今思えば、精神的には一番追い込まれていた時期だったかもしれない。
学生最後の「デンタル」
そんな6回生の夏。
8月には、学生最後の「デンタル」があった。
全国の歯学部生が集まる大会。
自分たちにとっては、学生生活最後の大きなイベントだった。
もちろん、勉強が大事なのは分かっている。
それでも、最後くらいは全力でやり切りたかった。
国家試験前にも関わらず、練習に打ち込み、仲間たちと汗を流した。
そして今でも鮮明に覚えている。
デンタルの翌日に、“卒業試験1回目”が行われたことを。
普通に考えれば、かなり無茶なスケジュールである。
ただ、そのデンタルで自分たちは優勝した。
最高の余韻に浸りながら受けた卒業試験。
あの独特な高揚感は、今でも忘れられない。
卒業試験という最大の関門
当時、卒業試験は全部で4回行われていた。
おそらく今も大きくは変わっていないと思う。
ただ、現在は当時よりさらに合格ラインが厳しくなっているようだ。
私たちの頃は、1学年およそ120人前後。
しかし、最終的に卒業できるのは80人前後だった。
つまり、かなりの人数が卒業試験で振り落とされていた。
それでも今は、さらに厳しい時代になっているらしい。
話を聞く限りでは、卒業できる人数は50人前後とも言われている。
大学側も、国家試験合格率を維持するために、本気で学生を選別する時代になったのだと思う。
実際、歯科医師国家試験は年々厳格化している。
合格率だけを見ても、その変化はよく分かる。
歯科医師国家試験合格率(直近5年)
回数実施年全体(新卒+既卒)新卒既卒第119回2026年61.9%80.2%27.8%第118回2025年70.3%84.0%44.9%第117回2024年66.1%81.5%39.8%第116回2023年63.5%77.3%42.2%第115回2022年61.6%77.1%35.6%
この数字を見ると、大学が卒業試験を厳しくする理由もよく分かる。
特に新卒と既卒の差は非常に大きい。
例えば第119回では、新卒合格率80.2%に対して、既卒合格率は27.8%。
一度国家試験に不合格となると、そこから再び合格する難しさが数字として現れている。
だからこそ大学側も、「まず国家試験に合格できる学生を卒業させる」という方向に変わってきているのだと思う。
“卒業できるか”だけでなく、“国家試験に合格できるか”。
その現実が、6回生には常につきまとっていた。
国家試験、そして合格発表へ
そして迎える2月。
ついに歯科医師国家試験本番。
何年も積み重ねてきたものを、たった2日間にぶつける。
試験会場の空気は独特だった。
緊張、不安、焦り、そして「絶対に受かりたい」という執念。
全員が、人生をかけて机に向かっていた。
そして3月。
運命の合格発表。
あの瞬間だけは、何年経っても忘れないと思う。
6年間という長い学生生活。
楽しいこともたくさんあった。
苦しいことは、それ以上にあった。
それでも最後には、「歯科医師になる」という目標に向かって、みんな必死に走り続けていたのだと思う。
