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台湾で増産が続く再生ウェハ

辛耘・昇陽半導体から、工程と産業構造を整理する

台湾の半導体ニュースを追っていると、辛耘企業(Scientech)や昇陽國際半導體(PSI、以下「昇陽」)の再生ウェハ増産を目にすることが多い。

再生ウェハという言葉自体は分かりやすい。使用済みのウェハをきれいにして、もう一度使う。ただ、中身を追っていくと、単なる「中古ウェハのリサイクル」というより、半導体ファブの工程管理を支えるプロセスサービス産業として見た方が分かりやすかった。

何を再生しているのか。どこまで削れば再利用できるのか。Cuが付いたウェハはなぜ難しいのか。そして、なぜ台湾でこれほど再生能力の増強が続いているのか。今回は台湾の主要企業を起点に、再生ウェハの工程と産業構造を整理する。

再生されるのは、主に工程管理に使うウェハ

半導体ファブで処理されるウェハが、すべて製品になるわけではない。量産ラインでは製品用とは別に、装置の状態確認、工程条件の調整、膜厚やエッチング量の測定、パーティクルの監視などにテストウェハが使われる。モニターウェハ、ダミーウェハなどと呼ばれるものもあり、名称や用途はメーカーや工程によって多少重なる。

SEMIの再生シリコンウェハ規格M38も、再生ウェハをMechanical、Furnace、Particle、Lithographyの4用途に分類している。つまり「再生ウェハ」という一つの品質規格があるわけではなく、次に何へ使うかによって必要な品質が違う。規格上も、多くの項目は顧客指定となっている。

そして、テストウェハの使用量は意外に多い。辛耘によれば、典型的なCMOSのロジック/メモリ製造では、1バッチで処理されるウェハのうち10〜20%程度がテストウェハになるという。実際の比率は工程の複雑さや品質管理方法によって変わる。

RS Technologiesは別の資料で、半導体製造ラインへ投入されるウェハの約20%がテストウェハで、その約80%に再生ウェハが使われると推計している。これはRS自身による市場認識なので業界共通の確定値ではないが、再生ウェハがかなり大きな数量で循環していることは分かる。

再生ウェハ市場が想像以上に大きい理由は、まずこの母数の大きさにある。

ファブから預かり、再生して戻す

代表的な流れは、ファブで使用 → 再生会社へ送る → 再生加工 → 再びファブで使用、という循環だ。

ただし、必ずしも顧客が出した同一シリアル番号のウェハがそのまま返ってくるとは限らない。またSEMI M38では、顧客が供給したウェハだけでなく、第三者から調達したウェハを再生して供給する形も想定されている。

その意味で再生ウェハ会社は、単なる中古ウェハ販売会社とは少し違う。顧客の要求仕様に合わせて表面状態を戻し、継続的に供給する。後で地域別に見ていくと、この地域密着型のプロセスサービスという性格がかなり効いてくる。

再生工程では「Siを削りすぎない」ことが重要

再生工程はウェハの状態やメーカーによって異なるが、大まかには、受入・分類 → 脱膜 → 研削・研磨 → 洗浄 → 検査という流れになる。

まず、パターンがあるか、金属膜があるか、Cu系の工程を通ったウェハか、といった履歴や状態を分類する。辛耘も12インチSi再生でCu/Non-Cu工程を分け、パーティクル・微量金属・平坦度などを管理している。

ここで重要なのは、きれいにするためにSiを削りすぎてはいけないことだ。表面を大きく削れば、汚染やダメージは取り除きやすい。しかし、そのたびにウェハは薄くなる。RS Technologiesも、再生回数を増やすためにSiの除去量を抑える技術を強みとして挙げている。

つまり再生会社が競っているのは、単純な「洗浄力」ではない。必要な汚染やダメージは除去する。しかし、Siはできるだけ残す。この両立が一つの核心になる。

厚さが残っていればよいわけではない

ウェハが再利用できるかどうかは、残っている厚さだけでは決まらない。

TTVはウェハ内の厚みのばらつき、Bowはウェハ全体の弓なりの反り、Warpはより広い意味での立体的な反りやうねりを見る指標だ。さらに表面状態、傷、欠け、パーティクル、金属汚染なども確認する。

あと何μm残っているかではなく、次の用途に必要な形状と表面品質を満たせるかで再利用の可否が決まる。そのため「再生ウェハは何回使えるか」にも一律の答えはない。用途、元のウェハ状態、一回ごとの除去量、顧客仕様によって変わる。

パターンとCuは、別種類の難しさ

パターンなしのウェハなら、全面に比較的均一な膜が付いているだけというケースもある。一方、リソグラフィやエッチングなどを経たパターン付きウェハには、表面に段差や凹凸が残る。これを再び平坦なウェハへ戻すには、その凹凸を取り除かなければならない。そのため除去量が増えやすく、研磨条件の制御も難しくなる。

つまりパターンの問題は、主に「形状をどう平坦に戻すか」にある。

一方、Cuは別の難しさを持つ。ここでいうCuウェハとは銅製のウェハではなく、シリコンウェハがCu配線などを使う工程を通り、Cu膜やCu汚染を持った状態を指す。

再生工程で特に問題になるのがクロスコンタミネーションだ。Cuを扱った薬液、研磨系、搬送系などからNon-Cu工程へCuを持ち込めば、再生工程そのものが新しい汚染源になりかねない。辛耘がCu/Non-Cu工程を分けているのも、この管理が必要だからだ。

整理すると、パターンは形状・平坦化の難しさ、Cuは汚染除去・隔離の難しさと考えると分かりやすい。Cu+パターンでは、この二つの課題が重なる。

Cuを熱で動かしてから除去する方法もある

Cu再生を調べていて面白かったのが、昇陽の特許だった。

昇陽が保有する台湾特許TWI766599Bでは、脱膜したウェハを150〜500℃で熱処理(アニール)し、Si内部のCu原子の移動を促進して表面側へ析出させ、その後研磨・洗浄してCu濃度を下げる方法が記載されている。

表面にある汚染なら洗浄で落とせる。しかしCuがSi内部へ入り込んでいれば、それだけでは取り切れない。そこで熱を加えてCuを動かし、表面側へ持ってきてから除去するという考え方だ。

ただし、特許に書かれた工程と現在の量産標準工程は同じとは限らない。昇陽の2026年Q2法人説明会資料では現在の再生技術を別の工程ロードマップで説明しており、アニールを標準工程としては示していない。したがって、この特許技術が現在どの程度量産に使われているかまでは公開情報から確認できない。

15nm、19nmとは何を競っているのか

再生ウェハ各社の資料には、15nm、19nmといった数字も出てくる。

昇陽は再生ウェハの品質指標としてパーティクルの数量とサイズ、金属汚染、返却歩留まり、表面除去量などを挙げており、2026年Q2の資料では微小欠陥管理のロードマップをさらに進める方針を示している。辛耘も2026年5月時点で19nm級のパーティクル管理、微量金属1×10⁹ atoms/cm²未満、KLA SP1/SP2/SP5/SP7による検査を公表している。

ただし、「15nmだから19nmより高品質」とは単純に言えない。実際の受入条件では、あるサイズ以上の欠陥を何個まで許すのか、金属汚染をどこまで許すのか、形状や表面状態はどうか、といった複数の条件が組み合わされる。SEMI M38でも多くの項目は顧客指定だ。

したがって15nm、19nmという数字は、検査装置のスペックそのものというより、そのサイズクラスの微小欠陥を量産工程として管理する技術水準を示す代表値と見るのがよさそうだ。なお、これらがTSMCの特定の社内規格そのものだと確認できる公開資料は見つかっていない。

先端ノードほど再生ウェハ需要が増えやすい

再生ウェハ需要が伸びる理由は、半導体の生産枚数が増えているからだけではない。

先端ノードになるほど工程数が増え、許容されるばらつきも小さくなる。成膜、エッチング、CMP、洗浄などの工程管理もより厳しくなる。

昇陽も先端ノードほど再生ウェハの使用密度が高まるという推計を示している。2026年Q2の法人説明会資料では、10nmを1とした場合、7nmで1.5、5nmで2、3nmで2.5、2nmで3.15、1.4nmで4としている。出典はUBSと昇陽の推計であり、業界共通の実測値ではない。

そもそもテストウェハ自体が一定量必要になる。そこに先端工程での使用密度上昇が重なれば、再生ウェハ需要が製品ウェハ生産量以上のペースで伸びる可能性もある。

台湾の主要プレイヤーは、出自がかなり違う

台湾市場を見ると、同じ再生ウェハを扱っていても、各社の成り立ちはかなり違う。

昇陽は再生ウェハを中核事業として大規模化してきた。2026年Q2法人説明会資料によれば、2025年の全社ウェハ出荷量は12インチ換算948.6万枚だった。これは再生ウェハ単独ではなく、同社が開示する全社ウェハ出荷量である。生産能力については、昇陽が2025年8月に発表した増産計画を中央社が報じており、再生ウェハ能力を2025年の月85万枚から、2026年末に月120万枚規模まで拡大する計画としている。

中國砂輪(KINIK、以下「中砂」)は、もともと砥石・研削技術の会社だ。再生ウェハでは延性モード研削を使い、表面下ダメージや化学汚染を抑えることを特徴としている。2026年Q1の公式法人説明会資料では、12インチ能力をQ2に月36万枚、Q3から月40万枚へ増やす計画を明記している。

辛耘はさらに違う。装置代理、自製装置、再生ウェハを併せ持つ企業だ。2026年5月の公式法人説明会資料では、12インチSi再生能力を月21万枚とし、2026年Q4に月4万枚、2027年にさらに月5万枚を追加する計画を示している。

RS Technologiesは日本企業だが、台湾・台南にも12インチ月30万枚の再生拠点を持つ。日本の三本木工場は月34万枚で、2025年の12インチ再生ウェハ出荷先は日本55.0%、台湾35.1%だった。

整理すると、昇陽は規模と自動化、中砂は研削・砥石技術、辛耘は装置事業との複合展開、RSは再生技術の多地域展開、という違いが見えてくる。

日本が思った以上に大きい

地域別に見ていて少し意外だったのが、日本の大きさだった。

QY Researchの2024年版調査では、2023年の世界再生シリコンウェハ市場を6.29億ドルと推計し、台湾が約46%、日本が約33%、アメリカが約7%としている。台湾と日本だけで約8割になる計算だ。これは市場調査会社による売上ベースの推計であり、絶対値としてではなく地域構造を見る参考値として扱いたい。

台湾にはTSMCを中心とした巨大な12インチ先端ロジック産業があるため、再生ウェハでも台湾が日本を何倍も上回っているような印象を持ちやすい。しかし世界の主要再生ウェハ企業を見ると、日本にはRS Technologies、三益半導体工業、ハマダレクテック、新菱などのプレイヤーが存在する。再生ウェハ需要は先端ロジックだけでなく、メモリやその他の半導体製造からも発生する。

少なくともQY Researchの推計を見る限り、台湾市場は日本の何倍も大きいという構造ではない。

一方で、この国別シェアをそのまま「実際に再利用されているウェハ枚数」と読むこともできない。韓国やアメリカでは、外部の再生会社を使わずFab内で再生する例があるからだ。

韓国、中国、アメリカでは構造が違う

韓国ではSK hynixがFab内でウェハを再生する取り組みを進めている。一方、外部再生会社も存在するため、外注と内製の両方がある市場と考えた方がよい。

アメリカでも、IEEEに掲載された「In-House Test Wafer Reclaim for Fab Cost and Wastage Reduction」という論文で、従来外部業者へ出していたテストウェハをFab内で再生する事例が報告されている。

中国はまた違う。華海清科(Hwatsing)は2026年時点ですでに月20万枚の専門再生ラインを保有しており、さらに再生能力の拡張を資金調達案件として進めている。Ferrotecも2026年4月23日に安徽省合肥で再生ウェハ新工場の着工式を開催した。約8万平方メートルの工場で、2027年12月の操業開始を予定している。

中国は再生需要そのものが小さいというより、巨大化した12インチファブ需要に対して外部再生能力を急速に現地整備している段階と見る方が、現在の動きに合っているように思う。

こうして見ると、台湾は外部再生会社が大型化、日本は成熟した外部再生産業、韓国は外注とFab内再生の併存、中国は外部再生能力を急増中、アメリカは外部再生とFab内再生の併存、という違いが見えてくる。

再生ウェハ産業の地図は、半導体生産能力の地図をそのまま縮小したものではない。どこまでFab内で処理し、どこから外部へ出すのか。高品質な再生会社が顧客の近くに存在するのか。こうした違いも地域ごとの市場構造を決めているようだ。

SiCでも再生はできる

再生対象はSiだけではない。辛耘は自社の再生事業でSiだけでなくSiCにも対応すると公表している。

SiCはSiより硬く、化学的にも安定しているため、研削・研磨そのものの難易度が高い。一方で基板単価が高いので、工程管理用途のウェハを再利用できる経済的な意味は大きくなり得る。

台湾ではもう一社、格棋化合物半導體(GCCS)も気になる存在だ。格棋はSiCの結晶・ウェハ技術を手掛ける台湾企業で、公式製品群の中に「再生晶圓」も掲げている。そのページでは、Test WaferやMonitor/Dummy Wafer向けの再生サービスを説明している。

ただし、ここは区別しておきたい。格棋の会社自体はSiCを主力とする一方、再生ウェハのページでは、その再生対象材質をSiCとは明記していない。したがって現時点で「格棋がSiC再生ウェハを量産している」とまでは言えない。また、辛耘が公表する月21万枚という能力も12インチSiの数字であり、SiCの処理能力を示したものではない。

現状ではSiが圧倒的な主役だが、高価なSiC基板が普及していけば、工程管理用SiCウェハをどこまで再利用できるのかは今後のテーマになりそうだ。

再生ウェハ会社が売っているのは「きれいな中古ウェハ」ではない

今回整理してみると、再生ウェハ会社が提供しているものは、単に表面をきれいにした中古ウェハではなかった。

ウェハの履歴を分類する。膜やパターンに合わせて除去方法を変える。Cuをほかの工程から隔離する。Siを削りすぎずに平坦度を戻す。微小なパーティクルや金属汚染を検査する。そして、それを大量のウェハに対して安定して繰り返す。その全体が再生ウェハ事業になっている。

典型的なCMOS工程ではテストウェハが処理ウェハの10〜20%程度を占めるという辛耘の説明を考えると、その数量自体も小さくない。先端ノードになるほど工程管理が厳しくなるなら、再生ウェハは「安い中古ウェハ」というより、工程管理のために大量に使われるシリコンウェハを、できるだけ長く循環させるためのインフラと考えた方が実態に近いように思う。

台湾で辛耘や昇陽のニュースを見るときも、今後は単純な生産能力だけではなく、どの品質クラスまで再生できるのか。Siをどれだけ残せるのか。顧客はどこまで再生を外注するのか。海外の新しいFab周辺に再生能力がどこまで現地化されるのか。そしてSiCなど新しい材料へどこまで広がるのか。このあたりも注目に値する。

主な参考資料

辛耘企業(Scientech)2026年5月法人説明会資料:再生能力、Cu/Non-Cu、19nm級管理、能力増強計画など。
昇陽國際半導體(PSI)2026年Q2法人説明会資料:2025年全社ウェハ出荷量、再生技術・品質ロードマップ、先端ノード別の再生ウェハ使用密度推計など。
中國砂輪(KINIK)2026年Q1法人説明会資料:12インチ能力増強、延性モード研削など。
RS Technologies Annual Report 2025:テストウェハ・再生ウェハ使用量推計、日本・台湾の能力など。
SEMI M38:再生ウェハの用途分類、顧客指定仕様、顧客供給/第三者調達。
QY Research「Global Reclaim Silicon Wafer Market Research Report 2024」:2023年市場規模・地域別推計。
中央社(CNA):昇陽の再生ウェハ能力増強計画に関する報道。
華海清科、Ferrotec公式資料:中国での再生能力増強。
格棋化合物半導體(GCCS)公式サイト:SiC事業および再生ウェハ。
台湾特許TWI766599B(昇陽國際半導體):アニールを用いたCu低減の再生工程。

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