第24話 イギリス料理は本当に不味いのか?
ヨーロッパの迷信その一、イギリス編
皆さん、一度は聞いたことがあると思います。
「イギリスの料理はまずい」
これは有名で、正しくもあり、間違いでもあります。
なぜなら――
私が知る30年前のロンドンの食事は、本当に不味かったのです。
(イギリスの皆さん、ゴメンナサイ)
最近までロンドンに8年半住んだ経験から言いますと、
その情報は古い!!
その理由をこれから書いてみます。
30年前のロンドンは…
並々ワインと、ゆるゆるパスタ
イタリアンでグラスワインを頼むと、
グラスの淵まで届きそうに並々と注がれて登場。
大酒飲みの私には嬉しい体験でしたが、
ビールじゃないんだから、おかしくないか?と笑いました。
さて、肝心のパスタ。
アルデンテどころか、ゆるゆる。
いゃ〜、うどんみたいな感じ。
サンドイッチも?
調理されたものは諦めるとして、
スタンドで出来立てのサンドイッチを買ってみました。
これは差がつかないだろうと思っていましたが、ムム?
パンがパサパサ。
具は挟まっているが、繋ぎがない。
ああ、ソースがないのか。
塩がパラパラ程度。
イギリス生まれのサンドイッチも本場で不味いのか?
パリとの決定的な違い
当時、私はパリに住んでいました。
カリカリのバゲットに切り込みを入れ、
ハムを挟み込んだ、手軽で人気のジャンボン・ド・パリ。
アルミホイルに包んで “voilà”。
素朴で代表的なサンドイッチ。
見た目は質素です。
何も予感せず、パクッといきます。
「ああっ!」
確かにハムが美味しい。
バターも美味しい。
しかしそれだけではない。
つなぎのソースに工夫がある。
バターの塗り具合、バゲットそのものの香ばしさ。
何かが決定的に違う。
食にうるさいフランス人は妥協を許しません。
一度まずい店に入ると一生忘れない、と言われますが、その気持ちはよく分かります。
6年も住むと、自分もそうなる。
「とにかく外食で失敗したくない」
そんな心配はほぼ不要でした。そもそものレベルが高いので、
後悔した味は、数えるほどでした。
だから揶揄された
だからロンドンは、
「世界に誇れる料理はイングリッシュ・ブレクファストだけ」
と揶揄されても仕方がないと思っていました。
30年前は、
「イギリスの代表料理はカレーと中華だ」
と普通に言われていました。
友人が来たらインドか中華へ。
本場の人が作っているのですから。
イギリス料理ではありません!
パブ料理の変化
ミートパイ、フィッシュパイ、ソーセージ・マッシュ、
フィッシュ&チップス、ローストビーフ。
庶民派の料理です。
しかし――
30年前とは明らかに違う。
ちゃんと美味しいのです。
これをEU効果と呼ぶ人は多い。
2000年代以降、欧州大陸から優秀なシェフが流入し、
食文化が底上げされた。
外食するイギリス人が増えて舌が肥えてきたと言う人もいます。
私もその説を支持します。

インターナショナルとモダン・ブリティッシュ
そしてもう一つの変化。
ロンドンで「インターナショナル」や
「モダン・ブリティッシュ」を名乗る店が増えました。
イタリアンっぽかったりフレンチっぽかったりするのですが、ただ外国料理を並べるのではなく、
自分たちの文脈で再構築する。
これは大きな転換でした。
近年、
ロンドンは“お金さえ出せば世界の美味しい味が楽しめる”街になりました。
値段は高い。
しかし味も伴う。
ある国際ビジネスマンは、ロンドンは、もはや
味でもニューヨークを凌ぐ、と言いました。
正直に白状します
ロンドンも、もう世界レベルだ!と思っていた頃、
アムステルダムで何気ないサンドイッチを頬張りました。
「ああっ!美味い!何かが違う」
こんなこともあるのだなと、白状します。
そして、パリに6年住み、フランス贔屓の私としては、
いくらロンドンやニューヨークが進化しても、
パリにはかなうはずがない、と密かに思っています(笑)。
Pret 事件
コペンハーゲン空港に到着して目に飛び込んできたのがイギリス発サンドイッチ・チェーンのプレタ・マンジェ。
「ああ、ここにもか」
ロンドン勤務時、ランチでお世話になりました(すぐに1,500円超えるので決して安くない!)。
そして、パリ・シャンゼリゼ近くにも出店。
「パリにイギリスのチェーン?ジョークだろ?」
本気でそう思いました。
しかし、むしろ逆なのでしょう。
食の本場パリでも勝負できるという自信。
ロンドンの変化は本物なのだと思うようになりました。
迷信は更新される
日本で「イギリスのメシはまずい」と言う人は、
二、三十年前の印象のまま止まっている人も多いのではないでしょうか。
2025年にも確認しましたが、
レベルは確実に、そして格段に上がっています。
そして、ルールズにて
そう考えながら、
007『スカイフォール』のロケ地にもなったロンドン最古のレストラン「ルールズ」でローストビーフをいただきます。
ナイフを入れ、ひと口。
「うま!」
思わず微笑む自分がいます。
皆さん、今こそもう一度ロンドンに来て、レストランを訪ねてみてください。
円安効果も手伝って値段も日本の4倍くらいしますが、きっとロンドンを見直すことができると思いますよ。
