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ヒゲと雑草

 間も無く五月、草木青々と繁る。小鳥囀ずり春風が爽やかな季節。この時期には僧侶として至高の勤めがあります。それは、草むしり。
 住職になって、もう七年。やれ葬式だ、やれ法事だ、法要だと、色々ありますけど、どんな仏事より、僕を救ってくれるのは草むしり。
 無心で、何も考えない。マインドフルネス。余計なこととか一切考えない。必要なことすら一切考えない。考えるということを考えない。自然と一体化。そこに草があるから、むしる。ただ、それだけを繰り返すマシーンとなる。否、マシーンというよりも蟲です。無心で草をむしるムシーンとなる。ムシーンがやらねば誰がやる。…誰もやりません(;´Д⊂)
 あのね、誤解無きよう付け加えると、僕は、田舎生まれの田舎育ち生粋の田舎者。ですが、大自然で育ったもやしっ子。アレルギー体質の虫嫌い、基本アウトドアは苦手のアウトロー。存在自体が矛盾の塊、混沌の象徴。ダメなんでスよ。ジャングルよりコンクリートジャングル向きとまでは言いませんけど、そこそこ人工的な空間でないと暮らし難い人間。人間らしいと言えば人間らしいのかもしれませんが…。
 だから、あまり好きな方ではないのですよ、元来苦手。屋外作業、野良仕事の類い。得意ではないです。でも、その中でも、草むしりだけは、何だか好きなのです。
 一見地味で退屈な作業ですが、新しい発見をすることも多いし、自然の中で真理に気付いたり、勉強にもなりますね。草むらから出てきたミイデラゴミムシを突っついてオナラみたいなガスを出させて遊んでみたり、近くまで飛んできたカワセミの青の青さの美しさに目を奪われてみたり、時折は息抜きも挟みながら、屈んだ姿勢で固まった腰を、立てて伸ばすと、すーっと心地好い風と陽射しが顔を撫でていくのが、気持ちいいー。脳内麻薬が漏れてるんじゃないかと思う瞬間。お気に入りの時間です。

 僕なりのコツがありまして、僕の草むしりはすごく雑。最初のうちはA型気質で、完璧主義で根刮ぎスペッとむしりたかった…のですが、すぐにアホだと気付かされましたね。高々人間一匹が完璧な自然に敵うワケないのです。まーそれだけではないんです。他にももう一つ理由がありまして、一つは僕のお寺が汚寺だからです。歴代寺族が好き勝手(怒られるなw)生活して壊したり直したりして、まるで統一性など無縁のツギハギだらけの外観、ゴミでも何でも捨てられない母が溜め込んだお宝の山、使ったものは使ったところには絶対に返さない母が、そこらじゅうに出しっぱなしにする諸々。って具合にカオスな汚寺で、一部分だけスペッと綺麗になっちゃうとバランスが悪い。余計に汚い部分が悪目立ちするんです。なので、適当が妥当。凡そ六~八割程度だけむしる加減。むしり残しがあるくらいがベター。

 これね、五十歳を機に髭を伸ばし出したんですけど、髭と同じだなーと思うんです。あまり髭が濃い方ではないので、生え揃わずにまばらなのもイケてないけど、伸ばしっぱなしも汚ならしいし、適度な長さや量にコントロールしておくと、それなりにカッコがつく。肌があまり強くないので、髭剃りの回数も具体的に減らせるし、キメ過ぎない無精髭スタイルで丁度いい塩梅。無精髭は男のファンデーションらしいww 

 こーゆー抜く技術だけは、大人になったなーって思うんですよね。あ、チカラですよ、力みを抜く、うん、草も抜くんですけどねww

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