若鶏のエヒフと朝6時半のサンドウィッチ
サンドウィッチ伯爵が「ゲーム(トランプ)をしながらでも効率的に食べられるように(仕事で多忙な中など諸説あり)」と、ローストビーフをパンで挟んだものを考案したことから生まれた料理、それが「サンドウィッチ」だ。
ありがとう、第4代サンドウィッチ伯爵、ジョン・モンタギュー。
あなたのおかげで、この言葉は日本語にも違和感なく溶け込んでいる。
もし、これが他の伯爵だったらどうなっていただろう。
エセックス伯爵が思いついていたら、
「ハムとチーズのエセックス」だったかもしれない。
ちょっと響きに抵抗がある。
ハンティンドン伯爵だったら、
「照り焼きチキンのハンティンドン」。
英語だとハにアクセントだが、日本語の発音だとティンにつくだろう。日本語のリズムに合わせるのは難しそうだ。
「すみません、こちらのハンティンドンをお願いします」
言いにくいな。
シュルーズベリー伯爵なら、
「ふわとろ卵のシュルーズベリー」になっていた可能性だってある。
実在しないけれどなんとなく美味しそうな響きがする。
ラーメンズの「若鶏のエヒフ」といい勝負だと思う。
若鶏のエヒフ、言葉のイメージだけで作ってみようかな。
フレンチを想像すれば汁気がありそうだし、アフリカンなイメージならグリル系だと思う。
シュルーズベリーはバターを使った料理になるだろうか。
妄想メニュー名でのフルコース、いつか挑戦してみたい。
そう考えると「サンドウィッチ」で本当によかった。
そんなサンドウィッチについて、僕はちょっとした思い入れがある。
かつてイタトマ(イタリアン・トマト カフェJr.)でアルバイトをしていた頃、何百食ものサンドウィッチを作ってきたからだ。
オープン担当のスタッフは、朝6時半に出勤する。
7時の開店に合わせるための準備時間は、わずか30分。
まさに30分一本勝負で、無駄な動きは一切許されない。
しかも開店10分前には、すでに常連さんが扉の前で無言のプレッシャーをかけてくる。
店内の掃除を終わらせ、レジ金を金庫から出して釣り銭をセットし、コーヒーを淹れる。そこから怒涛のサンドウィッチ作りだ。
どうすれば効率よく美しく仕上がるか、具材の配置を徹底的に考える。簡単そうに見えて、実は見た目良く、かつスピーディーに仕上げるにはコツがいる作業だった。
サンドウィッチは、食べやすさと見た目の美しさ、そしてボリュームのバランスを考えるのが本当に楽しい。
手軽に食べられるのに、栄養も、作る楽しさも詰まっている。ヒョギフ大統領も太鼓判を押すに違いない、人類の叡智が詰まった料理の一つだと思う。
