毎週ショートショートnote『三毛猫トリプルアクセル』
初めて観る猫によるアイスショーは圧巻の一言だった。スピード、ジャンプ、スピン。どれをとっても人間とは比べ物にならない強度。表現だって、時には野性味あふれる力強さを、また小動物のようなあどけなさを、つい喉が鳴る妖艶さを……まさに変幻自在だった。
ショーもついにフィナーレを迎えた。暗闇にスポットライトがパッと落ちると、氷上に見事なポーズを決めている三毛猫の姿が浮かび上がり、会場は熱狂に包まれたーーシャロンだ。私はどうしてか彼女の名前を知っていた。
そして演技が始まった。彼女は他の猫たちとはまた一つレベルが違う、氷の精と手を取り合うかのように氷上を舞った。そして彼女がフッと息を抜いてスピンのエントリーに入った時、私は緊張と興奮が最高潮に達するのを感じた。
出演した猫の多くは一色だった。その理由は唯一のキジトラ猫が現れた時に分かった。リンクではどうしても模様が悪目立ちして観客の集中を削いでしまう。
しかし彼が見事なスピンを決めた時、その印象は覆った。回転中、二つの毛色が混ざり合い見事な色を生み出したのだ。
シャロン。彼女の白と黒と赤茶の美しい毛並みは一体どんな色を生み出すのだろう。私はイケないものを覗くような高揚感を味わった。そして彼女は静かな氷の上で、会場の全ての視線を絡め取るように踏み切った……。
痛ッ!
私は小さく呻いた。目を開けると枕元で愛猫のシャロンが座っていた。シャロンはパンチを喰らわせた前足をペロペロと舐めると、なじるように私の顔を見下ろし続ける。
どうやら私が見るにはまだ早かったみたいだ。
終わり(651字)
田原にか様の企画に参加しています。
長いことイヌ派でしたが、散歩道の決まった場所で黒ぶちのネコと顔を合わせるようになってから割とネコ派です。かわいい。
よろしくお願いします!
