カムチャッカ地震の影響で
朝、福岡のホテルでテレビをつけると、カムチャツカ半島沖で大きな地震が発生したという速報が流れていた。
画面の下には「津波警報」の文字が赤く点滅していた。日本各地の太平洋側にも、津波が到達する可能性があるという。
まさかの事態に、思わず正座してニュースを見つめてしまう。
とはいえ、自分が今いる福岡には直接の揺れもなく、空も雲ひとつない快晴だった。
あまりに青く澄んだ空が、事態の深刻さを実感させない。
今日は福岡空港から仙台空港を経由し、福島まで帰る予定だった。
ニュースを見て少し不安になりつつも、「午後には落ち着くのでは」と、楽観的に考えていた。
根拠のない想像だったけれど、あの青空を見上げると、どうしても「飛行機は飛ぶ気がする」と思ってしまうのだ。
空港に着いたのは午前中。
少し早く着きすぎたので、搭乗前に軽く腹ごしらえをしようと“もつ鍋”の店に入った。
福岡といえば、これ。味噌ベースのスープにぷりぷりのもつ。朝から贅沢だなと思いつつ、ふうふうと鍋をかき込む。
今日の空も、スープの湯気も、あたたかくて優しい。
そして、電光掲示板を見る。
「仙台行き:欠航」
文字は冷たく、事実だけを伝えていた。
航空会社のカウンターで確認すると、今回の地震の影響で仙台空港が閉鎖され、到着・出発ともにすべて中止になったとのことだった。
こればかりは仕方がない。
カウンターの列には、自分と同じように旅程が崩れてしまった人たちが並んでいた。
けれど、誰も声を荒げることなく、静かに案内を待っていたのが印象的だった。
職員の方も落ち着いて丁寧に対応してくださっていて、頭が下がる思いだった。
「東京・羽田行きでしたら、振替可能です」
そう案内されて、まずは羽田へ飛ぶことにした。
飛行機に乗る頃には、仙台の空港が終日使えないこと、東北の一部の電車も運転を見合わせていることがわかっていた。
それでも、ひとまず“東”へ向かえるだけでもありがたかった。
羽田に到着したのは午後。
さて、ここからどうしようかと調べるも、いわき方面へは電車もバスも全滅。
仙台に置いてきた会社の車を取りに行くには、もう一度北へ向かう必要がある。
結局、新幹線で仙台へ向かうことにした。
今日はあちこち動きすぎて、自分がどこへ向かっていたのかすら少し曖昧になってくる。
でも、ここまでくる途中、何度も助けられた。
空港でも駅でも、すべての場所で案内してくれた人たちは丁寧だったし、他の利用者たちも冷静だった。
不思議と、慌ただしさよりも「ありがたさ」が残っている。
福岡の空も、東京の空も、どちらも雲ひとつなく、ただただ青かった。
この青空が、ニュースの中の“災害”と、目の前の“日常”を分けてしまう。
そのギャップがどこか不思議で、忘れがたい風景だった。
今日は、予定通りにはいかない日だった。
でも、振替という方法があり、東北へ向かう手段はまだ残されていた。
そして、もつ鍋は美味しかった。
そんな一日だった。
