私の作品紹介 |なぜ風景を抽象化して描くようになったのか
noteで春の連続投稿チャレンジをやっていますね。
今回のお題は「#私の作品紹介」ということで、自分の作品について書いてみようと思います。
私が制作しているのは、世界の風景や建物をモチーフにしたデジタルイラストです。
2020年から制作を始め、現在は140作品ほどになりました。
もともと旅が好きで、世界の景色を見ることが好きでした。
加えて、アートやデザインのように「表現すること」への興味もありました。
そこにコロナ禍が重なり、インドアで没頭できる趣味を求めたことが、作品づくりを始めたきっかけです。
手描きイラストとアメリカ地図
最初は、今のスタイルとは少し違っていて、手描きで都市のモチーフや名物を描いていました。線や輪郭にはあえてゆらぎを残し、手書きならではの質感を表現しています。

それぞれのイラストは、最終的にアメリカの地図の上に配置され、ひとつの大きな作品を作り上げました。

なぜアメリカかというと、当時仕事の関係でアメリカ赴任が決まり、アメリカを知りたいという気持ちと、それを何らかの形で表現したいという思いがあったからです。
その延長で、イラストによる地図を制作しようと考えました。
この地図制作の過程では、建物や人工物も多く描きました。人工物は規則的なパターンの反復で構成されているため、手描きよりも図形で描く方が適していると感じました。
また、本業で機械設計に携わっていることもあり、図面のように正確に描くことに自然と惹かれました。
こうした気づきと背景から、ベクターアートへと移行していきました。
ベクターアートの始まり
ベクターアートの最初の作品は厳島神社でした。当時はまだ専用のデザインツールを使っておらず、エクセルの図形(オブジェクト)を組み合わせて描いていました。

その後すぐに、ベクター編集アプリのAffinity Designerでの制作を始めました。
Affinity DesignerはAdobeのIllustratorに近い機能を持つソフトで、当時は買い切りで1,800円ほどと、すでにサブスクになっていたIllustratorと比べて非常に手頃な価格でした。
スタイルの確立
しかし、ベクターアートは設計図のように整った美しさを持つ一方で、どこか無機質で工業製品のような印象があり、味わいに欠けるものでした。
そこで、テクスチャによって微細な揺らぎやランダムさを加え、有機的な質感を与えることで、整いすぎた輪郭に温度と自然の気配を与える表現にたどり着き、これを自身のスタイルとして確立しました。

大切にしているコンセプト
私が大切にしているコンセプトは、「現実をいかに抽象化し、シンプルに表現するか」という点にあります。
私は、抽象化とは単なる簡略化ではなく、本質を取り出す行為だと考えています。
情報を削ぎ落とすことで、見る人の中にある記憶や感覚が補完され、結果として対象がより強く立ち上がる。
言うなれば、それはプラトンが説いたイデア、すなわち対象の本質そのものを捉えようとする試みなのかもしれません。
そのため、私の作品では複雑なものをそのまま複雑に描くのではなく、「それらしく見えるポイントとなる構造」を捉え、必要な要素だけを抜き出して図形として再構成することを意識しています。
そうすることで、情報量を削ぎ落としながらも、本質が伝わる表現を目指しています。
このコンセプトを最も体現しているのが、先程紹介したベクターアートとしての処女作「海に浮かぶ厳島神社」です。構造の抽出とシンプル化のバランスが非常にうまくいっており、結果として最小限の要素で“それらしさ”を成立させることができました。
今振り返っても、この作品ほどコンセプトを純度高く表現できたものはなく、ひとつの到達点であり、同時に現在の自分にとっての基準にもなっています。
風景の作品では、山や木といった自然物も多く登場します。
自然は人工物のように幾何学的ではありませんが、「それらしく見えるポイントとなる構造」を捉えることができれば、シンプルな図形の組み合わせで表現できるのではないかと考えました。
そのため、自然物に対しても人工物と同じコンセプトを適用し、要素を抽出しながら再構成しています。

シンプル化のコンセプトとベクターアート×テクスチャのスタイルで100を超える作品を描きました。

アートからデザインへ
もともとは、自分の内側にある表現欲求に従って制作していました。
特別に強いメッセージや主張があったわけではありませんが、「こう描きたい」という感覚を起点に形にしていたという意味で、当時の作品はアート寄りだったと思います。
制作を続ける中で、ブランドの世界観を伝えるためデザインを依頼してくださるクライアントと出会い、さらに作品をポストカードやZINEとして販売するようになりました。
作品を販売する過程で、ポストクロッシングのユーザーが「日本を紹介したい」「日本の風景を送りたい」といった目的を持ってカードを選んでいることに気づきます。
自分の作品が、誰かのニーズを満たす手段として使われている。
つまり、誰かの“困りごと”や“目的”に対する解決として機能しているという実感を得ました。
今でも、誰のどんな困りごとを解決できるのかは、まだ明確ではありません。
それでも、そうした視点で世の中を見るようになりました。
いつかその対象が見つかったとき、自分の表現は、より明確な“デザイン”として昇華されていくのだと思っています。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
初期の試行錯誤や現在に至るまでの過程も含めて、作品はInstagramで公開しています。よければご覧ください。
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