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九州の車窓から

iPhoneがけたたましく鳴る。
「地震です」
緊急地震速報が響いた。

我が家は夏休みを利用して、7月28日から九州を旅していた。昼に福岡空港に着き、猛暑の中、太宰府への観光を済ませ、中洲にあるホテルにチェックインした直後のことだった。
福岡に一泊した後、新幹線で熊本へ入り一泊。翌日はレンタカーを借り、阿蘇へドライブしながら鹿児島へ向かう予定だった。

僕は夕食までの時間を使って、近くのサウナへ行こうと準備をしていた。

四階の客室は、それなりに揺れた。何かが落ちたりするほどではなかったが、30秒ほど長く揺れた。
長く揺れる時は、経験上、ここではないどこかで大きな地震があった時だ。
すぐに検索すると、とんでもない数字が飛び込んできた。

熊本、震度7。
明日、訪れる予定の場所だ。

これはただ事ではないと直感した。


翌日、目が覚めて最初にしたことは、熊本のホテルとそこで借りるレンタカーのキャンセルだった。

新幹線も在来線も運転を見合わせ、熊本へ行く手段がなかったからだ。

次に考えなくてはならないのが、鹿児島へのルート。
最後は8月1日に、鹿児島から羽田へのフライトを予約してある。

AIにも相談し、妻と話し合った結果、九州を東ルートで迂回することに決めた。

福岡〜大分〜宮崎。宮崎で一泊して翌日鹿児島へ入る。鉄道を利用する。

でもこれが、なかなか過酷な道のりだった。
九州の東側は、新幹線が通っていない。

つまり、在来線の旅となる。

まず、福岡から大分までを、特急ソニックに乗った。

音速の名を馳せる、凄そうな奴だ。

実際、車内もかなり広々としていて、新幹線以上の余裕のある造りだった。

特にデッキやトイレの広さは、体験したことのないもので、快適な旅を予感させた。

が。

何度、このビールがこぼれそうになったことか。

体験したことのないのは、広さだけではなかった。

まあ、揺れる。Gカップの女性の胸が、50メートルを全力疾走するくらい揺れる。
8の字に揺れ続けること、2時間。

大分に着く頃、僕ら一家は例えようもない疲労感に包まれていた。

さらに。
問題は次の大分から宮崎までの特急「にちりん」だった。

指定席が朝の時点ですでに完売していたため、なんとしても自由席を確保したかった。
なぜなら、乗車時間は約3時間30分以上あるのだから。
立ちっぱなしとか、あり得ない。

約70分、気温37℃のホームで並んだ。その甲斐あって、僕ら家族は座席を確保できたが、案の定、座れない乗客で車内は大混雑だった。
一度、トイレに立った時には、デッキまでびっしり。なかなか見られない光景に、僕は絶句した。

きっと、地震の影響があるのだと思う。
でももし、普段からこれが当たり前の光景であるのなら、車両数や指定席と自由席のバランスが完全に間違っている。まずはAIにでも相談してほしい。

しかも多くの乗客は、大分から宮崎まで乗り続け、ひたすら立ちっぱなしの人が相当数いた。
座り続けるだけでも疲れるほどの、長い時間であるにも関わらず。だ。

唯一の救いは、日向灘の、蒼さ。車窓いっぱいに広がる海は、地震などなかったかのように静かで、ほんの一時だけ、この移動するだけの時間に涼しさもたらしてくれた。

やっとのことで宮崎駅に到着した時には、真夏の太陽は大きく傾き、黄昏色のホームに出迎えられた。

電車から降りて、僕ら家族4人が口を揃えたこと。

「ずっと座りすぎて、お尻が痛い」

さて、宮崎といえば、チキン南蛮でも食べようか。

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