雨の日にはギムレットを
大手スーパー(AEONグループ)の酒売り場で、最近売られているのが、「甲州韮崎」という名のジン。
日本全国に広がった、このジャパニーズクラフトジンの波。
初めから苦言を呈すると、僕にはなぜ「ジン」を名乗るのか、理解に苦しむ。
僕にとって、ジンとはロンドンドライジンを指し、ジュニパーベリーの香りが爽やかな蒸留酒のことだ。
僕に言わせれば、国産のジンは、焼酎である(作り手の皆様、ごめんなさい)。
しかも、クラフトジンは大量生産できない弊害から、かなり高額になることが多い。ジンはあくまで安酒であって欲しい。あの安酒が、カクテルに生まれ変わってキラキラと輝きだすストーリーが、美しいのだ。
その点、この甲州は秀逸。1000円程度で買える。
ソーダで割ってみても、ジントニックにしてみても、いい意味で無難。悪い意味で、とげが無い。
今回は、キング・オブ・カクテル「マティーニ」を作ってみる。

ベルモットは定番のノイリーと合わせる。

ミキシンググラスを使い、真面目(真剣)に作る。

最後に、レモンピールも欠かさない。丁寧に仕上げる。
妻と一杯ずつ飲んだ。
感想は、甘い。
悲しいことに、キレがないのだ。キレは、このカクテルの生命線だというのに。
ジュニパーベリーの香りが弱い代わりに、桜だろうか、和「ぽい」香りが加えられている。
きっと、この日本特有のボタニカル(植物成分)が、マティーニらしさを消す方向に作用しているのだろう。
サントリー「翠」もそうだが、ベルモットと一緒にステアすると、少し濁ってしまうのも気になる。
そこで閃いたのが、ギムレット。

ビンゴ!
少し複雑な香りを帯びた、「湿度を含んだギムレット」ができあがった。
甲州ジンは、37度とアルコール度数が低め。そのため、パンチ力には欠けるが、ライムの香りと合わせると、ロンドンのジンとは違った魅力が拡がる。
日本人のように、ほんの少し、奥ゆかしいギムレット、と呼べるかもしれない。イメージされるのは、雨。

代わりに取手付きのミニグラスを使ってる
今は、サントリージン「翠」やアサヒ「GINON」のヒットによって、ここ日本でジンは販路拡大の流れに乗っている。
このふたつは、ソーダ割りという飲み方を提案することで、一気に間口を広げた。
ボンベイ・サファイアもタンカレーも、今では甲州の2倍の値段。
ジンには、そのジンの最適解がある。そこへ辿り着ければ、1000円の一本が、案外頼もしい相棒になる。
適材適所。
ああ、人間も同じだな。
雨のギムレットが、違う見方を連れてきた。
