ビタミンC vs レチノール|シミ・毛穴・しわには結局どちらを選ぶ? 「医学論文で選ぶ、本当に必要な美容液」シリーズ第2回
朝、鏡を見ながら頬の薄いシミが気になり、ビタミンC美容液を手に取る。
夜、今度は目元の細かいしわが気になって、レチノールも使う。
しかし、そこでふと迷います。
「両方必要なのか。それとも、どちらか一つで十分なのか」
美容液は安い買い物ではありません。肌に合わない成分を増やせば、赤みや乾燥が起こり、かえってスキンケアが続かなくなることもあります。
今回は、シミ・毛穴・しわという3つの悩みに分けて、ビタミンCとレチノールのどちらを優先すべきかを、2023年以降のシステマティックレビューとメタ解析を中心に整理します。
最初に結論をお伝えすると、
シミやくすみを優先するなら、まずビタミンC
細かいしわや肌の粗さを優先するなら、レチノール
が基本です。
一方、毛穴については、どちらにも過度な期待は禁物です。
そもそも、2つは働き方が違う
ビタミンCとレチノールは、どちらもエイジングケアに使われますが、同じ方法で肌に作用するわけではありません。
ビタミンCには、紫外線などによって生じる酸化ストレスを抑える抗酸化作用があります。さらに、コラーゲン合成に必要な反応や、メラニンが作られる過程にも関与します。
これに対しレチノールは、ビタミンAの仲間であるレチノイドの一種です。皮膚内で段階的に変換され、最終的にレチノイン酸として、表皮の細胞更新やコラーゲンに関係する反応を調節します。
簡単に表現すると、ビタミンCは酸化ダメージを抑えながら色調を整える成分、レチノールは皮膚の更新と構造に働きかける成分です。
シミ・くすみには、まずビタミンC
シミやくすみを最優先で考えるなら、最初の候補はビタミンCです。
2023年のシステマティックレビューでは、外用ビタミンCによって、色むら、光老化、しわ、肝斑などが改善する可能性が報告されました。ただし、研究によってビタミンCの種類、濃度、併用治療、評価方法が異なり、最適な製剤や濃度までは確定していません[1]。
同年に発表された別のシステマティックレビューでも、ビタミンC配合外用剤によるしわの改善が検討されましたが、採用された研究は7件にとどまり、ビタミンC以外の成分を含む製品もありました。つまり、効果は期待できるものの、ビタミンC単独の効果量にはまだ不確実性があるということです[2]。
また、「シミ」と呼ばれるものには、日光黒子、炎症後色素沈着、肝斑など、異なる状態が含まれます。
ビタミンC美容液だけですべてのシミが消えるわけではありません。形が左右非対称、急に大きくなった、色が不均一、出血するといった変化がある場合は、美容液で様子を見ず、皮膚科を受診する必要があります。
日常的なくすみや色むらを穏やかに整えたい人には、朝のビタミンCが取り入れやすい選択です。
細かいしわには、レチノールが一歩リード
しわ、とくに目元や額の細かいしわを優先するなら、現在の臨床研究ではレチノイドが有力です。
2024年のシステマティックレビューでは、トレチノインとほかの外用成分を比較した25研究が検討されました。比較対象がトレチノインより優れていた研究は7件、同程度だった研究は13件、劣っていた研究は3件でしたが、多くの比較成分はトレチノインより刺激が少なく、使いやすい傾向がありました[3]。
ここでいうトレチノインは、医療用のレチノイン酸であり、市販化粧品のレチノールと同じではありません。ただし、このレビューは、レチノイド系成分が光老化治療の中心的な存在であることを示しています。
さらに2025年のネットワークメタ解析では、23件のRCT、計3,905人が検討されました。その結果、外用レチノール、トレチノイン、外用イソトレチノインは、対照群と比べて細かいしわを改善しました。レチノールとトレチノインは、色素沈着についても有効性が示されています[4]。
ただし、研究間には製剤、濃度、参加者、評価方法の違いがあり、人種的多様性の不足や商業的バイアスの可能性も指摘されています[4]。
したがって、「レチノールなら何でも同じように効く」とは言えません。それでも、細かいしわや肌の粗さを主な悩みとする場合は、ビタミンCよりレチノールを優先する理由が強いと考えられます。
毛穴には、どちらが効く?
ここが最も誤解されやすい点です。
毛穴は、単純に開いたり閉じたりする穴ではありません。皮脂量、角栓、ニキビ、弾力の低下、毛の太さ、光の当たり方などが組み合わさって目立ちます。
レチノイドは、表皮の更新やニキビ、肌の粗さに働くため、結果として毛穴が目立ちにくくなる可能性があります。しかし、2023年以降の質の高い研究だけを見ると、市販レチノールが毛穴そのものを縮小すると断定できる根拠は十分ではありません。
ビタミンCについても、一部の化粧品試験では毛穴の見え方が評価されていますが、製品に複数の成分が含まれることが多く、ビタミンC単独の効果とは判断しにくいのが現状です[2]。
したがって、毛穴だけを目的に選ぶなら、ビタミンC対レチノールという二択にしないほうがよいでしょう。
皮脂やニキビが関係しているのか、乾燥や弾力低下で目立っているのかによって、必要な対策は変わります。
悩み別の結論
薄い色むら、くすみ、紫外線によるダメージが気になる
朝のビタミンCを優先します。その後に保湿剤と日焼け止めを使用します。
細かいしわ、ハリ不足、肌の粗さが気になる
夜のレチノールを優先します。低濃度、週2回程度から始め、赤みや乾燥がなければ徐々に回数を増やします。
シミもしわも気になる
朝にビタミンC、夜にレチノールという使い分けが現実的です。ただし、両方を同時に開始せず、まず一方を2~4週間試してから追加すると、刺激の原因を判断しやすくなります。
毛穴が最も気になる
美容液を増やす前に、皮脂、ニキビ、角栓、乾燥のどれが関係しているかを見直します。毛穴を永久に閉じる、消すといった広告表現には注意が必要です。
結局、どちらか一本だけ選ぶなら
色むらが中心で、刺激の少ないケアから始めたい人には、ビタミンC。
細かいしわや肌の質感を本格的に整えたい人には、レチノール。
これが、現時点で最も実用的な選び方です。
ただし、どちらを選んでも、日焼け止めと保湿が土台であることは変わりません。紫外線対策をせずに美容液だけを追加しても、十分な効果は期待できません。
また、レチノイドは刺激を起こすことがあり、妊娠中または妊娠を計画している人は、予防的な観点から使用を避ける必要があります。欧州医薬品庁も、妊娠中および妊娠を予定している人には外用レチノイドを使用しないよう勧告しています[5]。
美容液選びで大切なのは、人気の成分をすべて重ねることではありません。
自分が最も改善したい悩みを一つ決め、その悩みに合った成分を、刺激なく続けること。
それが、高価な美容液を次々に買うよりも、ずっと合理的な選択です。
次回は、「ビタミンC」と書かれた美容液の中身をさらに深掘りします。
ピュアビタミンCとビタミンC誘導体では、何が違い、結局どれが一番効くのか。
安定性、皮膚への届きやすさ、刺激性、臨床研究の違いから検証します。
第3回はこちらです☟。
参考文献
[1]Correia G, Magina S. Efficacy of topical vitamin C in melasma and photoaging: A systematic review. Journal of Cosmetic Dermatology. 2023;22(7):1938-1945. doi:10.1111/jocd.15748.
[2]Sanabria B, Berger LE, Mohd H, et al. Clinical efficacy of topical vitamin C on the appearance of wrinkles: A systematic literature review. Journal of Drugs in Dermatology. 2023;22(9):898-904. doi:10.36849/JDD.7332.
[3]Siddiqui Z, Zufall A, Nash M, Rao D, Hirani R, Russo M. Comparing tretinoin to other topical therapies in the treatment of skin photoaging: A systematic review. American Journal of Clinical Dermatology. 2024;25(6):873-890. doi:10.1007/s40257-024-00893-w.
[4]Lin L, Chen X, Liu C, Wang Q, Lian W, Xu X, et al. Comparative efficacy of topical interventions for facial photoaging: A network meta-analysis. Scientific Reports. 2025;15:26889. doi:10.1038/s41598-025-12597-0.
[5]European Medicines Agency. Updated measures for pregnancy prevention during retinoid use. 21 June 2018.
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