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ナイアシンアミドの真実|毛穴・シミ・しわに本当に効く濃度とは? 「医学論文で選ぶ、本当に必要な美容液」シリーズ第5回

薬局で、ナイアシンアミド10%の美容液を手に取りました。

パッケージには「毛穴」「透明感」「ハリ」「皮脂」「肌荒れ」と、ほとんどすべての悩みに効きそうな言葉が並んでいます。

けれど、そこで疑問が残ります。

一つの成分が、本当に毛穴にもシミにもしわにも効くのでしょうか。

さらに、5%、10%、20%と濃度の異なる製品があります。数字が大きいほど効果も高いように感じますが、医学的にはそれほど単純ではありません。

今回は、ナイアシンアミドに何が期待でき、どこからが広告上の期待なのかを、最新研究と臨床研究から整理します。

先に結論をお伝えすると、ナイアシンアミドは、肌のバリア機能を支えながら、色むらや細かいしわを穏やかに改善する可能性がある成分です。

一方、毛穴を物理的に閉じたり、深いしわや濃いシミを消したりする成分ではありません。

また、一般的なエイジングケアでは、2~5%程度でも臨床研究があります。10%以上でなければ効かないという根拠は、現在のところ十分ではありません。

ナイアシンアミドとは何か

ナイアシンアミドは、ビタミンB3の一種で、ニコチンアミドとも呼ばれます。

名前に「ニコチン」と付いていますが、たばこの依存性成分であるニコチンとは別の物質です。

体内では、細胞のエネルギー産生や修復反応に関係するNAD、NADPという補酵素の材料になります。皮膚では、酸化ストレスや炎症反応を抑える働き、皮膚のバリア機能や細胞の代謝を支える働きが研究されています[1]。

2024年のレビューでは、ナイアシンアミドには、皮膚の酸化ストレス、炎症、色素沈着、細胞老化、皮膚バリアなどに関係する複数の作用機序があると整理されました。ただし、基礎研究で確認された作用が、そのまま市販美容液の見た目の効果を保証するわけではありません[1]。

シミやくすみには効くのか

ナイアシンアミドは、メラニンを作る細胞を直接破壊する成分ではありません。

主に、メラノサイトで作られたメラニンを、周囲の表皮細胞へ受け渡す過程を抑える可能性があると考えられています。

古くから行われている臨床試験では、2~5%程度の外用ナイアシンアミドによって、顔の色素斑や色むらが穏やかに改善したと報告されています[2]。

2025年には、5%ナイアシンアミドにトラネキサム酸、ビタミンC誘導体、ヒドロキシ酸を組み合わせた美容液と、4%ハイドロキノンを比較した試験が報告されました。両群で肝斑の色素が改善し、配合美容液は保湿性と使用感の面で良好でした[3]。

ただし、この結果を「ナイアシンアミド5%がハイドロキノンと同等」と解釈することはできません。

この美容液には、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体、酸性成分も含まれており、ナイアシンアミド単独の効果を分離できないからです。

したがって、日常的なくすみや軽い色むらには選択肢となりますが、肝斑や明確な色素斑を美容液だけで治療しようとするのは適切ではありません。

しわにはどの程度効くのか

ナイアシンアミドには、皮膚の酸化ダメージや炎症を抑え、コラーゲンなどの細胞外基質を守る可能性があります[1]。

2023年の皮膚老化に関するレビューでは、ナイアシンアミドの外用により、肌理、細かいしわ、色素斑、赤みなどの改善が報告されているとまとめられています。一方、外用トレチノインより作用は穏やかであり、同じレベルのしわ改善を期待する成分ではありません[4]。

つまりナイアシンアミドは、刺激の少ない穏やかなエイジングケアとしては有用ですが、レチノールや医療用レチノイドの代わりになるとは限りません。

深く刻まれたしわや、表情筋の動きによるしわを、美容液だけで消すことも困難です。

毛穴は本当に小さくなるのか

「毛穴改善」は、ナイアシンアミド美容液でよく見かける表現です。

ナイアシンアミドには、皮脂分泌を調整し、肌の粗さや水分状態を整える可能性があります。その結果、毛穴の影や凹凸が目立ちにくくなることは考えられます[4]。

しかし、毛穴には、皮脂、角栓、ニキビ、毛の太さ、加齢による弾力低下など、複数の原因があります。

ナイアシンアミドが毛穴そのものを収縮させ、永久に閉じると証明されたわけではありません。

皮脂が多く、肌表面の粗さによって毛穴が目立つ人では改善する可能性がありますが、たるみやニキビ痕による凹凸には十分な効果を期待できません。

実は最も確かな長所は「バリア機能」

ナイアシンアミドの価値を考えるうえで、見逃せないのが皮膚バリアへの作用です。

角層の脂質やセラミドの産生を支え、経皮水分蒸散を抑える可能性が知られています。

2025年の研究では、ナイアシンアミドが角層の水分保持や分子構造に与える影響が、X線回折などを用いて検討されました。これは人の顔でしわを評価した臨床試験ではありませんが、ナイアシンアミドが角層に入り、水分状態に影響する仕組みを支持する研究です[5]。

乾燥して刺激を受けやすい肌では、しわや毛穴を直接狙うよりも、バリア状態を整えることで見た目が改善することがあります。

ナイアシンアミドは「攻める美容液」というより、守りながら少しずつ整える成分と考えると、その特徴を理解しやすくなります。

2%、5%、10%、結局どれがよい?

臨床研究でよく使われてきた濃度は、主に2~5%程度です[2,4]。

5%前後では、色むら、細かいしわ、肌理などへの効果が検討されてきました。

一方、市販品では10%、15%、20%といった高濃度製品も増えています。しかし、高濃度ほど効果が比例して増えると証明した質の高い比較試験は不足しています。

濃度を上げると、人によっては、

赤み

かゆみ

ヒリつき

乾燥

が起こることがあります。

初めて使う人や敏感肌の人は、まず2~5%程度から始めるのが合理的です。すでに化粧水や乳液にもナイアシンアミドが含まれている場合は、複数製品を重ねる必要もありません。

ナイアシンアミドが向いている人

ナイアシンアミドは、次のような人に向いています。

レチノールや酸性のビタミンCで刺激が出やすい

乾燥と軽い色むらを同時に整えたい

皮脂や肌の粗さが気になる

複雑なスキンケアを一本にまとめたい

朝でも夜でも使用でき、ビタミンCやレチノールと併用することも可能です。

ただし、複数の美容成分を一度に始めると、肌荒れが起きた際に原因を判断できません。新しい成分は一つずつ導入し、数週間かけて反応を見るほうが安全です。

ナイアシンアミドの本当の評価

ナイアシンアミドは、派手な変化を生む「万能成分」ではありません。

しかし、

刺激が比較的少ない

バリア機能を支える

色むらや細かいしわを穏やかに整える可能性がある

という点では、非常に使いやすい成分です。

そして重要なのは、10%以上でなければ意味がないわけではないということです。

まずは2~5%程度を目安に、保湿剤や日焼け止めを土台として、無理なく続ける。

ナイアシンアミドの実力を最も引き出すのは、高濃度という数字ではなく、刺激を起こさず継続できる処方です。

次回(第6回)は、さらに判断が難しい成分を検証します。

ペプチド美容液は本当に効くのか。「塗るコラーゲン」という言葉は、どこまで医学的に正しいのでしょうか。第6回はこちらです☟。

参考文献

[1]Marques C, Hadjab F, Slama M, et al. Mechanistic insights into the multiple functions of niacinamide: Therapeutic implications and cosmeceutical applications in functional skincare products. Antioxidants. 2024;13(4):425. doi:10.3390/antiox13040425.

[2]Bissett DL, Miyamoto K, Sun P, Li J, Berge CA. Topical niacinamide reduces yellowing, wrinkling, red blotchiness, and hyperpigmented spots in aging facial skin. International Journal of Cosmetic Science. 2004;26(5):231-238. doi:10.1111/j.1467-2494.2004.00228.x.

[3]Rocio J, et al. Evaluation of the efficacy of a serum containing niacinamide, tranexamic acid, vitamin C, and hydroxy acid compared to 4% hydroquinone in the management of melasma. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025;24(3):e70097. doi:10.1111/jocd.70097.

[4]Griffiths TW, Watson REB, Langton AK. Skin ageing and topical rejuvenation strategies. British Journal of Dermatology. 2023;189(Suppl 1):i17-i23. doi:10.1093/bjd/ljad282.

[5]Sjöberg T, Fsahaye A, Nilsson EJ, et al. Niacinamide and its impact on stratum corneum hydration and structure. Scientific Reports. 2025;15:4953. doi:10.1038/s41598-025-88899-0.

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TACA|口腔外科医・医学博士|健康の裏側を解説 ここまで読んでいただき感謝です。少しでも良かったら気軽に応援してもらえると嬉しいです。