MISSIONホイール企画 【第2部】 良いホイールは、なぜ人によって違うのか? パーツ選定〜試作発注
第2章|良いホイールは、なぜ人によって違うのか

「良いホイールと何か」この問いは、思っている以上に曖昧だ。
軽いこと。
剛性が高いこと。
足あたりが優しいこと。
空力がいいこと。
見た目がかっこいいこと。
価格が手頃なこと。
どれも間違っていない。
けれど、それらを単純に足し算しても、「良いホイール」になるとは言い切れない。
良し悪しは、最終的には乗り手それぞれが感じるものでもある。
好みが分かれるのは当然だと思っている。
MISSIONホイールの企画が始まってから、
そうした答えの揃わなさがSNSの中で垣間見え始めていた。
理想よりも先に、現実を並べる
こんにちは、宮ヶ瀬店長のカネヤンです。

ホイールを作る、となると
どうしても「理想」の話から入りたくなるところ。
軽くて、速くて、剛性があって、かつ足あたりも優しくて、空力も良くて、価格も……
でも現実は、そんなに甘くない。
MISSIONホイールの企画が始まって、
最初にやったことは夢を見ることではなく、
現実を机の上に全部並べることだった。
予算はいくらか。
どこまでなら妥協できるのか。
どこは絶対に譲れないのか。
誰が組んで、誰が乗って、どんな使われ方をするのか。
まずはそこからである。

尖らせない、という選択
今回のMISSIONホイールは、
いわゆる「尖ったホイール」ではない。
「尖り」を期待していたローディ諸君には先に謝っておこう。すまん。
超軽量リム!
第4世代カーボンスポーク!
前後1200g切り!
そういったスペシャルなホイールは、
本田ボーイがそのうち気づいたら開発してくれるだろう、多分。
(夜な夜なアリエクを徘徊しながら、ニヤニヤと)

今回のMISSIONホイール企画がやるべき役割は、そこじゃない。
MONOCHROMEと相性が良いこと
初めてのカーボンホイールとしても勧められること
数年後も「これでいいな」と思えること
この3つを外さないこと。
(リムブレーキユーザーの方、ごめんね🙏今回はMONOCHROMEとの合わせ企画でもあるので何卒)
その結果として、
40mmと50mm
この2本立てで進めることが、かなり早い段階で決まった。
ホイールは3つのパーツで決まる
(当たり前だけど重要)
ホイールは、
リム
スポーク
ハブ
この3つでできている。

どれか一つだけ良くても、
残りが噛み合わなければ、
ホイールとしては上手くいかないだろう。
今回の企画では、
組み上げたときの「まとまり」
これを最優先にした。
試作して乗ることで、最良の組み合わせを見つけ出す。
リムの選定|まずは比較できる土俵を作る
共通仕様
ディスクブレーキ
(リム用はまたの機会に!🙇)チューブレスレディ(TLR)
内幅:23mm
ニップルホールレス構造
ここは流行というよりは、
今後数年を見据えた条件だ。

40mmリムの考え方
リムハイト:40mm
想定リム重量:400〜410g
形状:U字シェイプ
条件
は「程よく軽量であること」
軽量さと巡航性能のバランス、
そして堅牢性。
今回のMISSIONホイールは、ピーキーな性能は追わずに
使われ続ける道具であることを優先した。

50mmリムの考え方(少し攻める)
リムハイト:50mm
想定リム重量:430〜440g
50mmは、40mmの延長線だけでは少し物足りない。
そこで今回は、
安定のU字リム
新形状「Wave-mid(波状中間プロファイル)」
この2種類を実際に組んで、走らせて、比べることにした。
Wave-midは、
UV形状をベースに、
V部分の外周に波状の立体形状を持たせたプロファイル。
面白い。
理屈としては、
低ヨー角での空力特性
風向き変化時の挙動安定
構造強度アップ
といったメリットが見込めそうだ。

正直に言えば、
「データ上は良さそう」止まり。
空洞実験最適化なんてことは、予算上は難しい。厳しいって。
だからこそ、
作って、走って、確かめる必要がある。
スポークの選定|今回は金属でいく
工場からは、
カーボンスポークの提案もあった。
軽く、剛性が高く、見た目も新しい。
性能面でも優れているものは確かに多い。
ただ、MISSIONでは今回は採用しなかった。
理由はシンプルだ。
MONOCHROMEというフレームとの相性を考えたとき、
硬すぎないホイールの方が、全体として完成度が高いと感じたからだ。
金属スポークには、適度なしなりがある。
路面からの突き上げをいなしてくれる。
硬くなりすぎないこと
突き上げが強くなりすぎないこと
将来的な修理・運用のしやすさ
MONOCHROMEとの相性を考えると、
「しなやかさ」のあるホイールの方が
全体としてまとまりがいいと判断した。
採用スポーク
候補は多かった。
DT、Pillar、他にもいくつかある。
素材や形状によって価格も変動する。
最終的にSAPIM CX-Rayを選んだのは、
性能、空力、重量、国内入手性。
すべてが“基準点”として優れているからだ。
太めのエアロスポーク1本6.5gのスポークと比べると、
48本で約100gの差が出る。
この差を無視する理由はなかった。
ハブの選定|理想より、現実
ハブは正直、一番悩んだ。
回転性能、耐久性、防水性、
メンテナンス性、剛性、重量、コスト。
すべてを満たすハブを、展開図やスペック表だけで探すのは難しい。

今回の条件は以下。
一般工業規格ベアリング
防水性を考慮した構造
エンドキャップやフリーボディが抜けにくい
実運用でトラブルが少なそうな設計
複数のハブ図面を精査し、工場とやりとりを重ね
最終的に4種パターンに絞り込んだ。
実際に組み、回し、乗ってみなければ、
答えはまだ出ない。
スポーク数・組み方
基本:前後24H
比較用:フロント20H(実用に耐えうるのか興味)/リア24H
これも机上ではなく、
走って違いが分かるかを見るためだ。
試作ホイール|全4セット
試作① 40mm 爪式
リム:40mm U字(グロス)
スポーク:SAPIM CX-Ray
ハブ:Aハブ(爪式ラチェット)
スポーク数:F24H / R24H
目的:40mmの基準点、爪式ハブ精査
試作② 40mm フロント20H比較
リム:40mm U字(マット)
スポーク:SAPIM CX-Ray
ハブ:Bハブ(円錐面接触ラチェット)
スポーク数:F20H / R24H
目的:フロントスポーク数差の体感確認、Bハブ精査
試作③ 50mm 新形状テスト
リム:50mm Wave-mid(グロス)
スポーク:SAPIM CX-Ray
ハブ:Cハブ(円錐面接触ラチェット)
スポーク数:F24H / R24H
目的:Wave-mid形状の挙動確認、Cハブ精査
試作④ 50mm ミックス構成
フロント:50mm U字(マット)
リア:50mm Wave-mid(マット)
スポーク:SAPIM CX-Ray
ハブ:Dハブ(軽量・面接触ラチェット)
スポーク数:F20H / R24H
目的:
フロントスポーク数差の体感確認
前リム形状違いの体感比較
軽量ハブ精査
社長プレゼン ここで初めて「決断」が必要になる
ここまで来て、
ようやく一つの山場が来る。
田渕社長へのプレゼンだ。

正直、「試作4セットください」は軽くない。
コストは当初想定よりややオーバー。
しかも、すべてが成功する保証付きではない。
気に入らなければ、没にする可能性もある。
プレゼンで伝えたのは、派手な夢ではない。
MISSIONホイールの存在意義
なぜこの4セットが必要なのか
なぜこの組み合わせなのか
譲れないポイントはどこか
実際にテストし、確かめたいことは何か
一つずつ、確実に、正直に説明した。
結果
GOが出た。
「OK!納得したよ。じゃあ、やってみよう。」
その一言で、
MISSIONホイールは
机の上の企画から、現実のプロダクトへと進むことになった。
次章へ
次章では、
これら4セットの試作ホイールを実際に組み、
組み上がり重量
リムやハブの所感
組み方やスポークテンションの話
そして実走評価
を通して、
「数字」と「感覚」がどう交わったのかを書いていく。
ここからは、机上の話ではない。
MISSIONホイールが、
本当に走り出す章だ。
宮ヶ瀬店:金田
