墓じまい編①94歳の義父が突然、「墓を東京に持ってくる」と言い出しました。
マンションの売却については、現在、問い合わせをいただいている方からの返事を待っているところです。
ちょうどお盆の時期でもあり、不動産会社も休みに入るため、しばらく大きな動きはなさそうです。
そこで、今回は最、最近我が家で起きた別の問題について書きたいと思います。
今度は「お墓」です。
きっかけは、94歳になる義父の突然の一言でした。
「墓を東京に持ってこようと思う。」
妻からその話を聞いた時、私は、
「墓を東京に持ってくる?」
と、一瞬意味が分かりませんでした。
義父は兵庫県の出身で、義父が建てたお墓も兵庫県にあります。
現在、義父は東京で暮らしていますから、お墓参りをするためには兵庫まで行かなければなりません。
94歳になった義父にとって、東京から兵庫までお墓参りに行くのは、確かに簡単なことではありません。
それにしても、なぜ突然「墓を東京へ持ってくる」という話になったのか。
どうやら、きっかけはテレビだったようです。
義父がたまたま見ていたテレビ番組で、「自動搬送式納骨堂」というものが紹介されていました。
建物の中で受付をすると、普段は別の場所に収蔵されている遺骨が機械によって参拝スペースまで運ばれてくる。
義父が見たのは、そういう施設だったようです。
ところが、義父は「自動搬送式納骨堂」なんていう言葉は使いません。
妻にこう説明したそうです。
「東京にはな、ピッポッパってやったら、目の前に仏壇が出てくるところがあるんや。」
ピッポッパ……。
最初に聞いた私たちは、何のことかよく分かりませんでした。
話を聞いていくうちに、どうやらテレビで見た自動搬送式の納骨堂のことらしい、と分かりました。
そして、それ以来、我が家ではこのタイプの納骨堂を、
「ピッポッパ」
と呼ぶようになりました。
もちろん正式名称ではありません。
でも、
「お父さんが言ってるピッポッパって、どこにあるんやろう。」
「ピッポッパでないとあかんのかな。」
そんなふうに夫婦で話しているうちに、いつの間にか「自動搬送式納骨堂」よりも「ピッポッパ」の方が通じるようになってしまいました。
この先もおそらく、この話の中では何度も「ピッポッパ」が登場すると思います。
義父としては、
「兵庫の墓をしまって、東京のピッポッパに持ってきたらええ。」
ということのようです。
東京に移せば、わざわざ兵庫までお墓参りに行かなくてもいい。
義父なりに考えた、合理的な方法だったのだと思います。
そして義父は、この話を妻だけではなく、妻の姉にも電話で伝えていました。
突然、
「墓を東京に持ってくる。」
と言われた姉妹は驚きました。
つまり、それは「墓じまいをする」ということです。
しかし、ここで大きな問題がありました。
そもそも墓じまいって、何をどうすればいいのか。
妻も姉も分かりません。
もちろん、私も分かりません。
そこで、妻とその姉だけではなく、それぞれの夫である私たちも加わり、家族みんなで墓じまいについて調べることになりました。
調べ始めて、まず分かったことがあります。
墓じまいというのは、単純に墓石を撤去して終わり、という話ではありませんでした。
まず、お墓の中にある遺骨をどうするのかを決めなければなりません。
別のお墓へ移す方法。
納骨堂へ移す方法。
永代供養墓を利用する方法。
樹木葬という選択肢もあります。
海などへ散骨する方法もあります。
そして、お墓や納骨堂に納められている遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す場合は「改葬」という手続きになり、現在遺骨が納められている場所を管轄する市区町村で「改葬許可」を受ける必要があります。
さらに、現在のお墓の管理者や、新しい納骨先との手続きも必要になります。
散骨については、別のお墓や納骨堂へ移す「改葬」とは扱いが異なるようです。
つまり、
「墓じまいをする。」
と一言で言っても、その後、遺骨をどこで、どのような形で供養するのかによって、やることが違ってくるのです。
「これは思っていたより大変そうやな……。」
そんな話になりました。
特に妻の姉は、とても真面目な性格です。
分からないまま話を進めるようなタイプではありません。
墓じまいとは何なのか。
どんな方法があるのか。
費用はどのくらいなのか。
何をどこへ申請しなければならないのか。
姉夫婦はいろいろと調べてくれました。
そして、その内容を義父に説明するため、わざわざ関西から東京まで来てくれることになりました。
樹木葬や納骨堂、永代供養など、調べてきた選択肢を義父に説明します。
ところが、いろいろ説明を聞いた義父の答えは、
「わしは、あのピッポッパがええと思っとる。」
やはり、そこでした。
どうやら義父の頭の中では、
兵庫のお墓を墓じまいする。
遺骨を東京へ持ってくる。
そして「ピッポッパ」に納める。
そこまで話が出来上がっているようでした。
しかし、改めて調べてみると、義父がテレビで見たような自動搬送式の納骨堂が、どこにでもあるわけではありません。
仮に東京のそうした施設へ移したとしても、94歳の義父が一人で気軽に何度も通える場所にあるとは限りません。
「テレビで見たから、そこへ移したい。」
と言われても、それだけで決められる話ではなさそうです。
さて、どうしたものか。
家族でそんな話をしていた、ちょうどその頃でした。
今度は兵庫県に住んでいる義父の弟から連絡が入りました。
弟もすでに91歳です。
そして、その話もまた「お墓」でした。
実は、義父が建てたお墓には、事情があって弟の妻の遺骨も納められています。
その遺骨を、
「妻の実家のお墓へ移したい。」
というのです。
つまり、こちらも「改葬」です。
ところが、弟自身も高齢です。
「遺骨を移したい」という考えはあるものの、具体的にどこへ連絡して、何を申請して、どのような手続きをすればいいのかまでは分かっていないようでした。
そこで弟は、同じ兵庫県に住んでいる妻の姉に、
「手続きをお願いできないか。」
と頼んできました。
義父からは、
「墓を東京へ持ってきたい。」
その弟からは、
「妻の遺骨を別のお墓へ移したい。」
二つのお墓の話が、ほぼ同じタイミングで動き始めてしまったのです。
しかも、当事者は94歳と91歳。
結局、実際に調べたり、連絡を取ったり、手続きをしたりするのは、妻とその姉の世代になりそうです。
特に関西に住んでいる妻の姉には、どうしても負担がかかります。
真面目な姉は、
「まず何からすればいいんやろう。」
と、一つひとつ調べ始めました。
墓じまい。
改葬。
永代供養。
納骨堂。
樹木葬。
そして、
「ピッポッパ」。
それまで何となく聞いたことはあっても、自分たちにはまだ関係のない言葉だと思っていました。
それが突然、私たちの現実の問題になりました。
母の介護。
義父との同居。
マンションの売却。
そして今度は、お墓です。
親が高齢になるということは、こういうことなのかもしれません。
本人たちがこれまで管理してきたものを、少しずつ次の世代が一緒に考え、整理していかなければならなくなる。
ただ、この時点では私たちも、墓じまいについて分からないことばかりでした。
そして何より、
義父のお墓をどうするのか。
弟の妻の遺骨を、どうやって別のお墓へ移すのか。
二つの問題が同時に動き始めたことで、話は思っていた以上に複雑になっていきそうです。
まだ、何も決まっていません。
これから実際に家族で話し合い、必要な手続きを一つずつ調べながら進めていくことになります。
この話も、マンションの売却と同じように、どういう結末になるのか私自身にもまだ分かりません。
そして義父が希望する**「ピッポッパ」**に、本当にたどり着くのかも分かりません。
実は、お墓の問題は私にとっても他人事ではありません。
私も今は東京で暮らしていますが、私自身のお墓は兵庫県にあります。
今はまだそのままですが、これから年齢を重ねていけば、いつかは私自身も「このお墓をどうするのか」を考えなければならない時が来ると思っています。
そう考えると、今回の義父の墓じまいは、義父だけの問題ではありません。
私自身が将来お墓について考える時の、一つの経験にもなるのだと思います。
まずは義父とその弟のお墓の問題を、家族で一つずつ整理していく。
そして、その中で実際にどんな手続きが必要だったのか、どんな問題が出てきたのか。
私自身もしっかり見ておきたいと思っています。
この経験が、いつか自分のお墓について考える時にも役に立つかもしれません。
せっかくなので、これから実際に経験する「墓じまい」と「改葬」についても、進展があればその都度書いていこうと思います。
(墓じまい編②へ続く)
