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ミセスと挑んだ、裸一貫の帝王切開。想定外がつづいた第二子出産レポ。

第1子の経験があるからこそ知っている帝王切開の恐ろしさ。第2子の帝王切開も余裕どころか、心臓は爆速ビートを刻む。Mrs. GREEN APPLEの歌声に背中を押されながらも、手術台で一向に効かない麻酔への焦り。一歩間違えれば地獄行きの緊迫した押し問答。さらには、お腹の中で繰り広げられる未知の「領域展開」……。

これは、恐怖と戦いながら、必死に「帝王切開の呼吸」を繰り出したある女性の、笑いと涙のリアルすぎる記録。感動の対面シーンまで、ノンストップで駆け抜ける出産レポ、ここに開幕。

手術室に響くMrs. GREEN APPLEと、私の鼓動

TOLAC(帝王切開後の自然分娩)を希望していたものの、予定日を迎え、第2子も帝王切開での出産となった。

第1子の時に比べると、事前処置が驚くほどスピーディー。前回は4時間前から点滴用の針、輸血用の太い針、そして「浣腸」……と、帝王切開フルコースを堪能(?)したが、今回は開始30分前に点滴用の針をブスッと刺しただけ。「これから起こること」と「あの痛み」が想定内だという経験者のアドバンテージは想像以上にデカい。

バースプランでお願いしていた大好きなMrs. GREEN APPLEの曲が流れる手術室へ入室。
こんな極限状態でも、大森さんの歌声でテンション上がるのか。
音楽って偉大。推しの力はすごい。

しかし、手術台に上がると状況は一変した。
手術着を脱がされ、これから生まれてくる我が子と同じ「生まれたままの姿」に。いくら布がかけられているとはいえ、見知らぬ大人たちの前で丸裸になっている状態というのはどうしたって落ち着かない。
さすがに少しずつ鼓動が早くなってくるのがわかる。

帝王切開の呼吸、壱の型「麻酔の確認一閃」

エビのように背中を丸め、麻酔の針が投入される。

「だんだんとお風呂に入ってるみたいに、あたたかくなってきましたか〜?」
と、麻酔科のお医者さん。

あー、そうそう、この感じ……

と、思い出そうと待機。
足先から腰にかけて、じんわりと春の陽気がやってくる……はず……。

……んん? 全ッ然、来ない。

痺れもなければ、温度変化もゼロ。
前回は秒で「ぽかぽかの春」がやってきたはずなのに!
焦りから、つい早口で返答する。

「いや、あたたかくなってないです。痺れてもないです(真顔)」

手術台のホットマットが優秀すぎて、私が鈍感なだけか?

と、思い直し、下半身に意識を全集中。

帝王切開の呼吸、壱の型「麻酔の確認一閃」

……やはり、ぬくぬく感は皆無。
冷や汗だけが背中を伝うなか、やっとこさ左側だけがジリジリと痺れてきた。

「あ、左半身だけは痺れてきました。」

第1子で学んだ教訓は、

考えるな!感じろ!そして感じたことは全部言語化しろ

ということ。
今回の出産のテーマは、

頑張らない・無理しない・強がらない・気にしない

周りの目はどうでもいい。
出産においては、自分の感覚こそが正義なのだ。

冷たい!と言い張る勇気

麻酔が効くと「触られている感」はあっても「温度感」は消える。
冷たいものを当てても「冷たくならない」が正解。
効果範囲の確認のため、麻酔の範囲外である肩に冷たいものを当てたあと、太腿にスライドされる。

「これ、冷たいですか?」と麻酔科の先生。
「(食い気味に)冷たいです!!」

「えっ!? じゃあ、胃のあたりは?」
「(さらに食い気味に)冷たいです!!!」

本来であれば、冷たくなくなっているだろう箇所にも関わらず、どう考えても冷たい。
麻酔科の先生が「えっ、冷たい……?」とたじろぐのが分かり、私の焦りもピークに。

いや、待って、私の頭がおかしいのか? もはやこれ、冷たくないんじゃないか?

という疑惑が脳内をよぎるが、脳内のエライ人が叫ぶ。

「落ち着け! ここで流されたら、文字通り『地獄』を見るぞ!」

そうそう、そうだった!

オセロの角を全部取られた時のような勢いで、「冷たい派」が私の脳内勢力を制圧。

「冷たいです! まだ、ぜんぜん冷たいです!」

と、必死に訴える。

内臓の領域展開

さらに時間をおき、ようやくある程度冷たくないと思えてきたところで、ついに手術がスタートした。
自信をもって冷たくないと言い切れるわけではなく、正直麻酔が本当に効いてるのか、もうよくわからなくなっていて、ただ早く終わることを願うばかりだった。

開腹されはじめた時に痛みを感じなかったので、ほっとしたのもつかの間、案の定、はじまってすぐに、どうしたって右半身がおかしい。
痛いというより、全臓器をギチギチに圧迫されるような苦しさ。

脳内で、

『頑張らない・無理しない……』

とシンジ君の「逃げちゃだめだ」顔負けのヘビロテをしながら、食い下がる。

「あの、内臓が押し潰されるように痛くて苦しいんですが、これどうにかなりませんか?」

「(執刀医)いやー、これは終わるまで続くかも……」

はい、絶望のはじまり。

帝王切開の開腹箇所は恥骨あたりなのに、子宮は肺の下まである。
小さな出口から腹部全域にいる赤ちゃんをとりあげるのだから、おそらく内蔵を押し出しながら領域展開している痛さなのだろう。
次第に呼吸もしにくくなってきて、出産のために練習した、深呼吸を繰り返す。

帝王切開の呼吸二の方「腹部のうねり」

まさか経膣分娩で練習した呼吸法が帝王切開で役立つとは。
人生、何が幸いするか分からない。

いよいよ赤ちゃんご対面・・・!


苦しすぎてぼーっとしはじめた私に、

「ママ! 赤ちゃんの頭見えてきたよ!赤ちゃん産まれるよ!」

と、先生が懸命に話しかけてくれて、ふと我に返り、顔を上げる。

手術の際は、頭と胴体を青色の布でしきるのが一般的だが、しきりをしないことで、普通分娩のように赤ちゃんが産まれるのを見届けられるバースプランがあり、迷わずお願いしていた。
煌々と光る手術ライトの下、自分から赤ちゃんが誕生する一部始終。youtuberの出産動画で予習をしたときに見た、経膣分娩で産まれる瞬間とほぼ同じ光景がそこにあって、帝王切開でもこの体験ができたことに、素直に感動する。
助産師さんが赤ちゃんを顔に近づけてくれて、頬を触るとほんのりあたたかい。

やっと産まれたんだ。

その瞬間だけは痛みも苦しみも消え、真っ白な安堵と達成感に包まれた。

後半へつづく。

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