算数のないハイブリッド論 ⑧

本論文の視座を地球規模へと広げ、構造的な不平等と搾取の連鎖を暴く「第七部:グローバリズムの落差——先進国の延命と後進国の鎖」を執筆いたします。

第七部:グローバリズムの落差
——先進国の延命と後進国の鎖——

7-1:リープフロッグ(蛙跳び)の裏の植民地化
「ハイブリッド化」という合言葉が、先進国と後進国(新興国・途上国)において持つ意味には、残酷なまでの温度差が存在する。後進国において、ハイブリッド化はしばしば「リープフロッグ(Leapfrog:蛙跳び)」という、既存の発展プロセスを飛び越える「進化」として称賛される。固定電話のインフラ(古い村)を持たなかった地域に、いきなりスマホ決済や分散型電源(最新のビル)が導入される現象だ。
しかし、この「跳躍」の裏側には、高度に知的な「システムによる植民地化」の罠が仕掛けられている。先進国の企業が「SDGs」や「技術支援」というハイブリッドな名目で持ち込むのは、現地では修理不能なブラックボックス、すなわち「ビルの論理」そのものである。
自力で維持管理ができない高度なシステムを導入した瞬間、後進国は先進国の企業と永続的な「メンテナンス契約」という名の鎖で繋がれることになる。これは、かつての武力や領土による支配から、「システムの独占と保守費用(年貢)の徴収」という、より洗練されたハイブリッドな支配構造への移行に他ならない。

7-2:先進国における「焼畑農業的」な知の浪費
対して、先進国におけるハイブリッド化は、成熟しきった市場を無理やり上書きするための「延命装置」である。すでにモノが溢れ、村(伝統的基盤)が十分に破壊された先進国では、単なる「新製品」では大衆を動かせない。そこで「環境(A)× 効率(B)」や「伝統(A)× 最新テクノロジー(B)」といったハイブリッドな「合言葉」を捏造し、「買い替えの必然性」という名の付加価値を偽装する。
このプロセスは、極めて「焼畑農業的」である。一つのハイブリッドな流行(例えば、特定の環境技術やプラットフォーム)という名の土地を焼き、一過性の利益を上げ、そこが「産業廃棄物の山」となって使い物にならなくなれば、また次の「合言葉」を探して別の土地(概念)を焼く。
先進国の消費者は、この「新しく(見える)もの」を消費し続けるサイクルに依存することで、自分たちの「知性の空洞化」から目を逸らし続けている。彼らにとってのハイブリッドとは、もはや創造ではなく、「過去の遺産と未来の資源を、最も効率的にゴミへと変換する技術」の異名となっているのである。

7-3:世界規模の「連立方程式」の解
グローバルな視点から「ハイブリッド化の連立方程式」を解くならば、その解は「不平等の恒久化」に行き着く。
先進国は「精神的な退化(モノマネ)」を隠すためにハイブリッドを叫び、後進国は「物理的な生存(跳躍)」のためにハイブリッドを掴まされ、その両方の隙間に、グローバル資本が「維持管理コスト」という吸い取り口を差し込んでいる。
ピラミッドの上層部が行う「搾取遊び」は、どのスケールにおいても変わらない。
先進国で「エコ」と謳われるハイブリッド車のバッテリーのために、後進国の子供たちが泥にまみれてレアメタルを掘り出す。この物理的な落差を、SDGsという「目眩し」が統計上の数値で相殺し、「世界は持続可能に向かっている」という虚構の等式を成立させている。
私たちが「最新のハイブリッド」を手にするたびに、世界のどこかで誰かの「根っこ」が切り裂かれ、誰かの「鎖」がより強固に締め付けられているのである。
【コメント】
第七部では、ハイブリッド化がいかにして「グローバルな支配の道具」として機能しているかを論じました。私たちは「自由」や「支援」という言葉を使いながら、実際には世界を「メンテナンス契約」という見えない網に絡め取っているのです。この落差に気づかないふりをすること自体が、先進国に住む私たちの「知性の堕落」の証左と言えます。
次は、「第八部:失敗のハイブリッド化——学習なきループと産業廃棄物化」の執筆に進みます。

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