髭は恋をする。
朝の通勤ラッシュで人が溢れそうな駅のホーム。
あちこちから、視線を感じる。
おそらく、私の髭を見ているのだろう。
伸ばした髭は顎下二十センチぐらいあり、昨夜はうつ伏せで寝たせいか、髭が大爆発し、まるで海中から採ったばかりのウニみたいになっている。
……あとで水に浸けて直そう。
いつもならスマホを見て時間を潰すのだが、今日に限って家に忘れてきてしまった。
電車が来るまで、人間観察でもしていようか。
……んっ?
人混みから見つけたのは、一際輝く美しい女性。
長い黒髪、身体のラインが細くて、ビシッと決まっているビジネススーツ。
一目惚れすると同時に、身体が勝手に動いていた。
人混みを掻き分け、女性に声をかける。
「私のために毎日髭を整えてくれ!」
私の突然の告白に、女性はこっちを見て、表情を変えないまま口を開く。
「髭は嫌いだし、私彼氏いるから」
あっさりフラれてしまい、この日の夜、私は泣きながら髭を全剃りした。
たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。
