「今はわからない」と言えることの重要性

2020年11月でした。第3波が始まったのではないかと言われていた頃です。
Go To Trave l事業が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない
という発言があったことを覚えているでしょうか。この文章は、実にうまく作文されていて、嘘はついていない、しかし誤解したい人は誤解しろ、と言わんばかりの文章だと思います。そこで今回は、この文章を読み解きながら因果関係について考えてみようと思います。

初めに内容に注意を向けず、文章の構造を理解してみましょう。

初めに注目したいのは、内容以前の部分です。「現在ところ存在しない」というのが結論になっています。今は存在しない、でも将来のことは何も言っていない。つまり「現在」と限定することで、この文章が間違いだ、と結論されることを回避していると言わざるを得ません。さらに「主要な」という部分。これも絶妙です。原因の1つとされても、または比較的大きな要因とされても、主要でない、と常に言えてしまいます。要するに、文章そのものにいろいろな逃げを打っていると言えます。

続いて今回のメインターゲット、「Go To Travel 事業=A が 感染拡大=B の(主要な)原因である」「とのエビデンス=C は(現在のところ)存在しない」の部分の解釈について考えます。『「Bの原因はAである」は証明されていない』ということですね。

「Bの原因はAである」が証明されていない。証明されていない、ということは、これは正しいかも知れないし、正しくないかもしれない。しかし今はわからない。ということです。決して、正しいと証明されていないから間違っている、とはなりません。ましてや「AはBの原因ではない」、GoToTravelが感染拡大に無関係、とはなりません。(「AならばBである」の否定は、「BでないならばAでない」

要するに、「Go To Travel l事業が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない」が言っていることは、因果関係は今はわかない、ということです。

実際、相関関係があっても因果関係があるかどうか、わからないことも多くあります。偶然かも知れない、まだ証明されていないだけかも知れない。実際に公害のように、因果関係が示唆されても、中々認められないものもあります。


私見です。今はまだ新型コロナについてまだわからないことだらけです。だからわかったかのような主張は、そもそも怪しいと考えた方が良いでしょう。「今はわからない」ときちんと言える人の方が、信頼できるのではないでしょうか。例えば「ファクトチェック」と言いながら、その主張が証明されていない、だからデマだという主張をよく見るようになりました。今はまだわからない、と言える見識と勇気が重要だと思う昨今です。