見出し画像

過去の話をやめたら、部下が未来の話をしてくれるようになった~ 部下が動き出した、未来志向マネジメントの実話 ~

「会社には期待していません。
何もやりたくないんです」

今の職場に来て間もない頃、ある部下からそう言われました。
怒りや不満というより、感情がすっかり抜け落ちたような声でした。

話を聞くうちに、彼が置かれてきた状況が見えてきました。
前の上司のもとで、彼は長いあいだ否定され続けていたのです。

「それは前に失敗している」
「そんなの無理に決まっている」
年末年始に働いても「当たり前だろ」と言われる。

一生懸命努力しているのに、
評価されるどころか、評価を下げられ、ボーナスも削られる。

そうした経験が積み重なり、彼の中には
「どうせ何をしても無駄だ」
という感覚が、深く染みついていました。



過去を基準にすると、人は黙ってしまう

職場では、どうしても「過去」を基準に話をします。
前例、実績、失敗談。どれも大事な情報です。

でも、そればかりを突きつけられると、人は次第に口を閉ざします。

「また否定されるかもしれない」
「余計なことを言わないほうがいい」

そうやって、人は自分を守るために黙ります。
やる気がないのではなく、傷つかない選択をしているだけです。

過去を基準に評価され続けると、
人は「変わろうとすること」そのものを諦めてしまいます。


時間の向きを、逆にしてみる

私が大切にしているのは、
時間の流れを逆にして考えることです。

過去から今を見るのではなく、
未来から今を見るようにするのです。

未来に「こうなっていたい」という姿が先にあれば、
今、目の前で起きている失敗は、
ただの失敗ではなくなります。

それは、未来へ向かう途中にある
必要な一歩になります。

未来が見えていると、
「うまくいかなかった」という出来事も、
上手くいかなかったけど1歩進んだ、
「じゃあ、次はどうする?」と冷静に考えられます。

逆に言えば、
本当の失敗は、うまくいかなかったことではありません。
過去を恐れて、
「どうせ無駄だ」と何もしないことだと思うんです。

未来から考えることが出来るようになると、
「何もしない事」ことこそが本当の失敗であることに、
自然と気づくようになります。


紙1枚の“枠”が、思考を未来に連れていく

ただ、頭で分かっても、すぐに切り替えられるわけではありません。
特に、長く否定されてきた人ほど、切り替えるのは難しいです。

そこで、私は日報を使い、
部下の固定観念を変えていっています。

使うのは、紙1枚の日報。
書くのは、たった2つだけ。

  • 今日、できたこと

  • さらによくするには?(スモールステップ)

反省や言い訳を書く欄は、あえて作りません。
それは、必要ないから。

枠が決まっているからこそ、
反省や言い訳に捕らわれず、
思考は自然と「次の一歩」に向かいます。

毎日、自分で「できたこと」を見つける。
その上で、「もう一段よくするには?」と考える。

この繰り返しが、
過去に縛られていた意識を、
少しずつ未来へと引き戻していくのです。


未来の話を、部下がし始めた日

「何もやりたくない」と言っていた例の彼にも、
変化が訪れました。

ある時、彼がポロっと
「ここに棚をつけたら、もっと便利になりますよ」
と小さな改善案をくれました。

私はすぐに
「やりましょう!見積もりをお願いできますか?」
と任せました。

数日後、周囲から「これ、すごく便利!」と
感謝された彼の顔には、
久しく見られなかった誇らしげな表情が浮かんでいました。

今でも彼は、ときどき言います。

「何をしても無駄だと思ってます」

それでも、以前のように過去に捕らわれてばかりでなく、
「こうしたら、もう少し良くなるかもしれない」
そんな未来の話を、少しずつしてくれるようになりました。

人は、いつからでも変われます。
上司が、ちょっと、
時間の向きを変えるてあげるだけでいいのです。

過去を見るのをやめたとき、
部下は、未来を語り始めます。

リーダーの仕事は、答えを出すことではなく、
一緒に未来の地図を描くこと。

そして、その途中にある一歩一歩を、
「面白いですね」と一緒に眺めること。

今日も、あの紙1枚が、
誰かの未来へ向かう一歩を、静かに支えている。
私はそう信じています。

いいなと思ったら応援しよう!