季節の変わり目に散髪するとだいたい体調崩す
「カミキッタン?」
よくわからない言葉で質問されるから、よくわからないまま首を縦に振ってみる。
「やっぱり!」
と言って去っていくその女の子の姿に一瞥をくれる。
「カミキッタン?」
またそう問いかけられる。今度は男の子だ。
先ほどの回答に手応えがなかったから、ふと首を横に振ってみる。
「うそや、カミキッタノニ」
そう言われまた去っていく。
なんて答えればよかったんだろう。
嘘を吐いたんじゃない。質問の意味がわからなかっただけなのに。
別に紙は切ってない、悪いことをしたつもりもない。ただそこには残酷な現実があった。
幼稚園の頃、それも年少さんのころだからだいたい3歳とか4歳だろうか。
そんな曖昧な年頃において、このやりとりだけは鮮明に覚えている。
「髪を切る」ではなく、「髪の毛を切る」ならわかったし、「散髪したん」でも意味は捉えられた。
例えるなら、「メンタンピン」と「立直、タンヤオ、平和」の狭間にある親切さを私は当時知る由もなかった。
「知らない」という事実は時折罪になる。
かまいたちの漫才を引用するならば、
「この世で1番意味のない会話は『髪切ったん?』」
だろう。
そんなもの見りゃわかる。
そりゃまぁロングヘアから若干だけ髪の毛を整える女性も会ったことはあるが、だいたい髪の毛を切ったかどうかなんてわかる。
「髪切ったん?」
「そうやねん、この前切ってん」
に続く会話が例えば
「いいやん、似合ってるやん」
なのだとすればそれは
「髪切ったんや、似合ってるやん」
もしくは、髪の毛が切られたかどうか怪しい場合には、
「その髪型いい感じやなぁ」
に収束できるはずである。
I amをI'm、do notをdon'tにするのと感覚的に同じである。
その誰も得をしない
「髪切ったん?」
という1つのラリーで少なくとも私は損をした実績がある。
私はそもそも散髪があまり好きではない。
別に髪を切られることに抵抗はないが、そこに至るまでの過程が心底嫌いだ。
私の散髪のペースは、だいたい半年に1回が理想である。
最近は年に3回、だいたい4ヶ月に1回くらいのペースで切っているだろうか。
前に切ったのは10月中旬、その前がゴールデンウィーク、その前が…
だいたい2月か3月だったと記憶している。
私の散髪のバロメーターは、見た目が売れていない中堅芸人になればそろそろ髪の毛が伸びたなと感じるころ。これが髪を切るとそこそこ出かけの若手芸人になる。そしてその中間が陰湿なタイプの国語教師である。
そしてもうひとつ、斉藤ウィングが目立ってきたら切り時かなという合図だ。
斉藤ウィングというのは、私がメガネをかけた時、メガネと耳の間を縫って出てくる髪の毛のことである。(下図参照)
髪の毛が短いとこれが全く気にならないのだが、ある程度伸びてくると自我が芽生えたかの如く侵攻に走る。これが鬱陶しい。
この斉藤ウィングが邪魔に感じたら、「そろそろ髪の毛切らなきゃいけないな」のサインである。
そしてそれが今である。

ちなみにこの斉藤ウィングの名前に関してはSKET DANCEという私が好きな漫画に出てくる「藤崎ウィング」をもじっただけである。
こちらは癖毛のことなのだが、わかりやすいから採用した。なにせ言いやすい。
幼稚園の頃は、母親に京都の街中の伊勢丹に連れられて弟と2人髪の毛を切ってもらっていた。
椅子に座ると前に映像が映し出され、そこで見るポケモンが楽しみだった。
今になって振り返ると、あれが劇場版で同時上映される短編だったことに気づく。
地下の食品売り場で買い物して帰る。
当時半年に1回の楽しみだった。
小学生になった頃からか、私は母と同じところで切ってもらうようになる。近所の散髪屋さん、父親が行っているところに連れて行ってもらったりもしたが、結局そこに落ち着いた。
おっちゃんにいつも聞かれる
「どんな風にして欲しい?」
の問いが私は嫌いだ。
恥ずかしがり屋が顕著だった頃は、何も言わず小さな声で、
「別に、短くして欲しい」
と答え、カタログを開いて見せられる
「こんな感じでええか?」
に静かに頷いた。
少しはっちゃける頃になると
「とりあえず短くして欲しい、だいたい半年後くらいに『そろそろ切らなあかんなぁ」って思うくらいの短さで。
でも、頭につむじ2つあるから、あんまり短くしたら中途半端な長さになった時に寝癖すごくなるから、そこだけお願いします」
くらいは言えるようになった。
ちなみに後半のつむじの件をわかってくれているおっちゃんには省略することもあったし
「せやなぁ、でもこのつむじ2つは厄介やなぁ」
と先を越されることもあった。
私は別に髪型にこだわりもなければ興味もない。
髪色を変えたいと思ったことはないし、髪型を変えたいと思ったこともない。
子どもの頃から寝癖が酷く、直そうにもどうにもならないから放置して行って何度も笑われた。どれもこれもこのつむじのせいである。
だいたい正午を回っても一向に頭が爆発したままなのだからどうしようもないだろうと。

髪型を変えたら?と言われたらまぁそれもいいかと思うだろう。
リーグ戦最終節を前につるおじ(@KuroiotonaD)と
「ポイントが0を割ったら坊主にする」
という約束をなんとなく交わしたが、特段罰ゲームとも思っていない。別に散髪に行かなくていいというボーナスが付いているならいくらでも飛びつく。
前述のつむじの件があるからやっぱりめんどくさいなぁとも思う。
勝ててよかったです。
大学生の頃は、いつものおっちゃんの甥っ子さんがやっている店が近所にあったので、そこに通っていた。
ただ、今はその気が知れたおっちゃんも、その親戚にも髪を切ってもらえない環境にいるため、わざわざネットで近くの床屋さんを調べて行く羽目になっている。
めんどくさいなぁと思いつつ予約をし、店に向かう。
散髪くらいオンライン化すればいいのにと思うがまだ時代は追いつかないだろう。
案の定
「どんな風にしますか?」
と聞かれるから
「特にこだわりないんで、とりあえず短くしてください。だいたい〇〇ぐらいまで切らなくていいようにしてもらえるとありがたいです。
頭につむじが2個あって、短くしすぎちゃうと中途半端な長さまで伸びた時寝癖が酷いことになるんで、そこだけ注意してもらえると嬉しいです。
別に元がこれなんで、男前にしてくださいとか無理言わないんで、もうなんか、とりあえず短くしてもらえればそれでいいです」
これが定型分である。
ゲームのチャットよろしくどこかに保存しておきたいくらいだ。
そして〇〇には4.5ヶ月先にあるイベントか具体的な月を入れるだけだ。
年明け、ゴールデンウィーク、お盆、10月、年末などなど。
たいてい苦笑いと「えっ、そんなに先ですか?」っていう反応が返ってくるところまでがセットで、「本当につむじが2つあるんですね」
と言われたら散髪開始である。
「それが終わってだいたいこんな感じでいいですか?」
と言われたら
「はい、ありがとうございます」
ぐらいしか言えない。なぜならこだわりがないから。
そして今、斉藤ウィングが伸びてくるイメージが思ったより早かった。もうちょっと切ってもらえばよかったなぁと思うが、こればっかりは仕方がない。
3月ごろに切りたいなぁと思ってしばしば我慢している。
髪の毛を切りたいなぁと思いながら実際に切るまでのラグのことは「ワンダフルタイム」と呼んでいるのだが、もう少し長引きそうだ。
ちなみに私はおでこが広いので、髪の毛が長くなると毛根が少なく見えるのだが、決してそうではない。おでこが広いだけである。
寝癖にまつわるエトセトラ。
身だしなみ三部作くらいにはなるかもしれんが気分次第。
ではまた、どこかで。
