終わらないゴールデンウィーク|毎週ショートショートnote
ゴールデンウィーク初日、僕は友人の誘いで、山奥の小さな村の祭りに誘われた。観光案内には一切載っておらず、カーナビでも行くのが難しい場所らしく、「知る人ぞ知る祭り」だという。
国道から外れ、車がやっと通れるくらいの山道を抜けた先に現れたのは、小さな集落。どの家も、僕が知っている家とは違う。あれだ。確か、屋根が何とか造りとか言う、世界遺産になっているところの家だ。
友人はひときわ大きな家の前で車を停めると、「着いたよ」と言った。
ドアを開けた瞬間、一斉に村人たちに囲まれる。
「ようこそ! さぁこちらへ!」
村人たちの熱烈な歓迎を受けて、すぐに祭りは始まった。焚火を囲み、みんなが踊っている。頼んでもいないのに料理や酒が次々と運ばれ、あとで一体いくら請求されるんだと心配になったが、太鼓や笛の音は、僕の中のどこかの感覚をマヒさせた。
だいぶ酔いが回った頃、隣に若い女性が静かに座った。
「そろそろお休みになりますか? あちらの離れに、お布団を2つ用意していますので」
そう言うと女性は、僕にピタリと体をくっつけて、耳元で囁いた。
「ご友人は別のところでお休みになっています」
――おっと。
今夜はフェスティバル&カーニバルだ。
……
…………
………………
翌朝、外を見ると車がない。
「ご友人は帰られましたよ?」
夜通し一緒にUNOをした女性が微笑みながら朝食の用意をしている。
――あいつ……。
僕がこの女性とUNOで盛り上がったから、腹を立てて帰ったのか。情けない。ガキじゃあるまいし。
「タクシー呼んでほしいんですけど」
「無駄ですよ。ここは地図に載ってないんですから」
――ああ、そんなこと言ってたな。
スマホも圏外になっている。
「明日仕事なのになぁ。どうやって帰るかなぁ……」
考えあぐねていると、女性が近づいてきた。
「帰る必要なんてないですよ? 今日からここがあなたの家です」
「はい?」
「あなたはご友人に、まんまと騙されたんですよ」
「それは……生贄的な?」
「ご理解が早くて助かります」
――そういうことか。
僕はふぅとため息をついた。
「あなたには一生ここで、私と暮らしてもらいます」
「よろしくお願いします」
「……」
女性は笑顔のまま固まってしまった。
「あの、私の話、聞いてました?」
「だから、よろしくお願いしますって」
「いやあの……帰りたいって泣き叫ぶとか、命乞いするとか、ないんですか?」
「帰っても良いことないですもん。仕事キツいし、給料安いし、課長にパワハラされるし」
「一生ここで暮らすんですよ? 田舎だし、その小さな機械の電波も入らないし、不便ですよ?」
「都会嫌いだし、人ごみ嫌いだし、スマホなんて見えない足かせだし」
女性は目を閉じて「うーん」と考え込んでしまった。
「ちょっと待ってもらえますか? いろいろな人と話し合いをするので……」
女性はどたどたと足音を立てて、どこかへ行ってしまった。
僕は朝食を食べて、セルフサービスのコーヒーを飲みながら女性を待つ。
――一緒に暮らすってことは、夫婦になるってこと?
――え? 逆プロポーズされた?
1人でニヤついていると、村人たちがやって来た。村長らしき年配の人が一歩前に出る。
「大変申し訳ございません。ちょっと手違いがございまして、その……」
「おとなしく帰れって?」
「本当に、本当に申し訳ございません。お好きなところまでお送りしますので、どうか……」
「そうですか……」
コーヒーを飲み終えた僕は、ゆっくりと立ち上がった。
「断る」
僕がそう言った瞬間、その場の全員が僕にひれ伏した。
「どうか! どうかお帰りください! この通り!」
「帰るものか! 先ほどの女をここへ連れて来い! 我々は夫婦になるのだ! 文句のあるやつは容赦しない! 分かったか!」
「ははー!」
僕のゴールデンウィークは終わらない。
いや、始まったばかりだ。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「ゴールデンユニーク」です。
久々の毎ショになってしまいました。
確か、UNOが流行ったのって30年くらい前ですね。
覚えてる人、いるんだろうか…。
こちらもどうぞ。
テーマ「創作」でCONGRATULATIONSを頂きました!

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