大好きな夫に裏切られて。5
その優しさ、本物ですか?
朝から様子のおかしい私に対して、少しずつ機嫌が悪くなっていく夫。
「まだ動けない?」
夫の言葉だけを聞けば、優しいのかもしれない、ただ、言葉と振る舞いの温度差に、気を遣わずにはいられなくなってしまう。このピリついた空気が苦手でした。
「ごめんねぇ、何もできなくて。」
誤りたくないのに、つい誤ってしまう。
申し訳なさそうに出た謝罪の言葉は、もちろん"今"の本心ではない。
──ないのだけれど、すぐに謝ってしまうのが "いつも通りの私" なのだ。
「いいよ、自分事は自分でできるし。」
「それより、急にそうなって心配だな。何か薬とかないの?」
具合の悪そうな私を横目に、ドスドスとキッチンに向かい、見つけたカップ麺の準備をしながら私に言った。
(あるわけ無いだろそんな薬。)
そんなこと言えるはずもなく、微笑みを貼り付け答えた
「寝たら、治ると思うから。」
今、夫と話すことも触れ合うこともしたくない。動くのも辛く食欲もない。
だからといって、いつもずっと夫にくっついていたのに、急に態度を変えることもできない。
とっさにでた「夏バテ」という言い訳は、思いのほか都合がよくて、夫もその時は納得しているように見えていた。
ただ、どんなにうまく言い訳ができても、夫は私を長く心配することができない。今の機嫌だって もって数日、、。
この数時間ですら、すぐにピリついた空気を無意識に出してくるのだから、
早く“いつもの私”に戻らなきゃ。そんな焦りと、いつ怒り出すかわからない不安があった。
今思えば、具合の悪い私に対して、機嫌が悪くなっていくなんて、おかしいと思います。
私を心配してるように見せているだけ。
夫が見せる "私を心配する姿" は、義務感からくるパフォーマンスでしかなかった。
本物の思いやりじゃなかった。
でも当時は、それが当たり前すぎて、気づくことができませんでした。
自分の体調が悪くても、夫の気持ちを優先し、夫の機嫌を保つ。
言葉にまとめてしまうと異常さが際立ちますが、当時の私としては、
ただ素直に、 "夫が喜ぶと私も嬉しい" と本気で思っていました。
何より、家の空気が穏やかでいること。
それが私にとって、何より大事なことだった。
そんな、どちらか一方だけが歩み寄っているなんて、夫婦とは言えませんよね。
そのことに気づくのには、もう少し先のことになりますが…。
