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「確認していないのに検収済み?」契約書の「みなし検収」で起きること

「まだ中身を確認していないのに、検収は終わったことになっている」
契約実務では、このようなことが実際に起こります。

例えば、契約書に「納品後5営業日以内に不合格の連絡がなければ、検収に合格したものとみなす」と書かれているケースです。

この場合、担当者が成果物を実際に確認していなくても、期限までに不合格の連絡をしなければ、契約上は「検収済み」と扱われることがあります。
そして、検収が終わると、代金の支払いの手続が動き始めたり、契約によっては権利移転や不具合への対応期間にも影響したりします。

「検収した」と認識していなくても、契約上は検収が完了する。
この仕組みを知らないと、社内で確認している間に期限が過ぎてしまうことがあります。

今回は、こうした「みなし検収」がどのような契約文言で定められ、いつ検収済みになるのか、契約書ではどこを確認すればよいのかを整理します。



1.検収は「確認した事実」だけでは決まらない

検収という言葉から、担当者が成果物を確認し、合格した旨を連絡することを想像しがちです。
しかし実務では、契約書が別のゴールを設定していることがあります。

① 検収は契約上の手続です

検収とは、納品された物や成果物が、合意した仕様や基準に合っているかを確認する手続です。
ただし、すべての取引に共通する一つの方法があるわけではありません。
誰が、何を、いつまでに、どの方法で確認するかは、主に契約で決まります。

② 返事をしないと合格になる条項

典型例は、次のような文言です。

「甲は、成果物を受領した日から5営業日以内に検査し、成果物が合意した仕様又は基準に適合しない場合は、その内容を乙に通知する。期間内に当該通知がない場合、期間満了時に成果物は検査に合格したものとみなす。」

これが、いわゆる「みなし検収」です。
担当者が実際に確認したかどうかにかかわらず、契約で定めた期間内に不適合の通知がなければ、検査に合格したものとして扱われます。

③ 「社内では確認中」は通用しないことがある

社内会議で問題点を共有していても、相手方へ通知していなければ、契約上は何も伝えていない状態です。
通知先、メールなどの方法、指摘内容まで指定されている場合は、その条件を満たす必要があります。


2.どの瞬間に「検収済み」になるのか

みなし検収を見抜くには、条文を一文ずつ読むだけでなく、時間の流れに直すことが有効です。

① 最初に「起点」を確認する

「納品日」「受領日」「納品通知の到達日」では、期間の始まりが異なります。
共有フォルダへの保存だけで納品となるのか、メールでの通知まで必要なのかなど、何をもって期間が始まるのかを確認します。
起点が曖昧だと、双方の期限計算がずれる可能性があります。

② 営業日の数え方も軽視できない

たとえば、「受領日の翌日から5営業日」と定められていれば、祝日がない週の月曜日に受領した場合、火曜日から数えることになります。
あわせて、「営業日」がどの日を指すのかも契約書で確認します。
担当者の休暇や社内承認の遅れだけで、契約上の期限が当然に延びるわけではありません。


3.検収済みになると何が変わるのか

検収完了は、単なるステータス変更ではありません。
他の条項が検収を基準日にしていると、複数の効果が同時に動きます。

① 支払期限が動き始める

たとえば、「検収完了月の翌月末払い」と定めている契約では、検収完了日が支払時期を決める基準になります。
ただし、取引によっては、法令上の支払期日のルールが別に適用されます。
受託者側には確認放置による支払遅延を防ぐ利点がある一方、発注者側は未確認でも請求対象になる可能性があります。

② 権利移転や不具合への対応期間にも影響する

著作権などの権利移転時期を検収完了時としている契約や、検収完了から一定期間を契約不適合への対応期間としている契約があります。
検収条項だけでなく、報酬、権利、契約不適合の各条項を横断して読む必要があります。

③ すべての不具合を受け入れたとは限らない

みなし検収が成立しても、直ちにあらゆる不具合を争えなくなるとは限りません。
検収後の契約不適合への対応、通知期限、免責の範囲は別条項で決まることがあります。
逆に、検収時に発見できた不備の扱いを制限する文言があれば注意が必要です。


4.契約と運用をどう整えるか

みなし検収は、受託者だけを守る仕組みでも、発注者だけに不利な仕組みでもありません。
確認を無期限に止めないための締切として、双方が運用できる設計にすることが大切です。

① 契約書では5点を確認する

確認するのは、次の5点です。
(1)期間の起点
(2)検収期間
(3)検収基準
(4)通知方法
(5)検収後の効果
「合理的な期間」「甲の判断で合格」といった曖昧な表現だけでは、担当者が動けません。
仕様書や発注書と結び付け、客観的に判断できる形にします。

② 社内では期限を見える化する

納品通知を受けたら、案件管理ツールに検収期限と責任者を登録します。
不合格の場合は、「問題があります」だけでなく、対象箇所、基準との相違、求める修正を期限内に相手へ通知します。
担当者不在時の代行者も決めておくと安心です。

③ 支払ルールとの整合も見る

フリーランス法が適用される取引では、報酬の支払期日は、原則として給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に定めます。
ここで注意したいのは、原則として「検収完了日」ではなく「給付を受領した日」が60日の起点になる点です。
原則として、社内検収が終わっていないことだけを理由に、受領日を基準とする支払期日を後ろへずらすことはできません。


まとめ

「検収した覚えがないのに検収済み」になる原因は、多くの場合、期限内に不合格通知をしなければ合格と扱う契約条項です。
確認すべきなのは、実際に見たかではなく、契約上、いつまでに何を伝える必要があったかです。

契約書を読むときは、検収条項を単独で終わらせず、支払、権利移転、契約不適合の条項までつなげてください。
そして、締結後は期限と責任者を管理することで、知らない間に「検収済み」になっていたという事態も防ぎやすくなります。

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たけうち|法務とコンプラのnote ここまで読んでいただいて誠にありがとうございます!少しでも皆様のお役に立つことを祈っております。