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今週の黒ノート「めめしくて」---マジ女々しくて好きすぎて滅

手足が痒い。おれは昔から皮膚が強くない。
小さいころは、水ぼうそうだの水イボだの、ツブツブ系のやつでよく病院に通っていた。右足の親指には、米粒大の「魚の目 (ウオノメ)」があった。懐かしい。ウオノメコロリ。

東京の品川区に5歳まで住んでいた。家の目の前の通りはバス通りで、今ほど道が整備されておらず、おれが小児ぜんそくになったのはクルマの排気ガスのせいだ、と親は言っていた。

風邪をひくと、胸のあたりがゼエゼエする。

薬の名前はド忘れしてしまったが、母親が胸に塗ってくれるやつ。ミントの香りがスースーして、鼻から吸いこむと、いくらか胸のゼエゼエや咳が収まった。(べぼらっぶ、ヴェポラップやったか)

父の仕事の関係で、埼玉県に引っ越すことになった。ちょうど保育園から小学校へあがるタイミング。すると、ぜんそくやツブツブ系の症状は嘘のようにピタリと止んだ。

もう二度と会わないと思っていた「弱い皮膚」。そこでいったん記憶からフェードアウトした。

……はずだったのだが、四十代になってから、なぜだかまた手足だけが荒れはじめた。

手のひらと足の裏にだけ。カサカサに乾燥し、小さな水ぶくれが出はじめた。痒みが出るのは決まって寝る前。仕事から帰ったあとや、風呂上がりも、危ない。

最初は「冬の乾燥のせい」だと思った。無印良品の敏感肌用化粧水やAmazonで購入したワセリンで対処していたが、水ぶくれはいっこうに収まらず。白く濁った膿が溜まる部位もあらわれて、何なら日に日にそのツブツブの数は増え、より大きくなった。怖すぎる。
会社で午前休を取り、皮膚科へ行った。

「いったん10日分出します。必ず続けて。10日後にまた来て下さいね」

普段は物腰柔らかい小柄な男性医師が、「必ず続けて」「10日後に」と、そこだけ強めのトーンでおれに念押しした。
おや。これは思ったより手強いかも...。

先生の言いつけどおりに薬を続けると、ヤツらは表皮まで出てきて、茶色く枯れるように自然と治りはじめた。安心した。


ところが。


7日目。おれは油断した。連日の仕事の疲れでソファに沈みこみ、いつの間にか寝落ちしていた。シャワーも歯磨きもサボって。薬もすっかり忘れていた。

四十過ぎて、薬を一日サボっただけでこのザマである。我ながら、皮膚も根性もめめしいことこの上ない。

---深夜2時---

手足が焼けるように熱い。痒みがぶり返したのだ。最悪や。

去年観た、デミ・ムーアの映画を思い出す。謎の若返り注射に手を出す話なのだが、前半は真面目なフェミニズム映画っぽいのに、後半は血しぶきブシャーのまるで怪獣ホラーコメディ。ちょっと何をいってるかわからないだろうと思うが、本当にそんな話だ。若返りの効果は、毎日決まった時間に特大の注射を打たないと維持できない。その効果が切れるのは、たいてい「いちばん切れてほしくないタイミング」——きょうの俺みたいな。

(もし掻きむしりたくなったら、慌てず氷で冷やして)

やさしい皮膚科医の顔を思い出す。
寝室の隣にある、小さな2ドアの冷蔵庫。まずい。そこに氷は常備していない。

とりあえず代わりになるものはないだろうか。
冷たいフローリングに素足でヨロヨロと出る。足はともかく、両手のひらが焼けるように熱い。

ガコンッ。

上段の冷凍庫を開ける。庫内には2日前の食べきれなかったマルゲリータピッツァと、ジップロックしたひじきとオカラ。それから、ガリガリ君ソーダ味。

ええいままよ!オカラなヒジキ、ガリガリピッツァ君で冷やしてしまえ!
脳内で法螺貝が鳴りわたり、武田信玄が風林火山の軍配をブン!と振りかざす。いや誰⁉︎ 明らかに俺はいま、正常じゃない。

どうすりゃいいんだ。さすがにおじさんが、ガリガリ君を握りしめて寝るわけにもいかない。天を仰ぐように、冷凍庫の上を見上げた。

……待て。
冷凍庫の天井部には、びっしりと霜がついている。これや。

両手をビタン!

手の熱が、すう……と引いていく...。

このときほど自分のズボラな性格に感謝したことはない。年末からサボっていた冷凍庫の霜取り。
ああ、霜取りしてなくてよかった。

ちゃんとできない大人は、ときにめめしく映るかもしれない。けれど、そのめめしさごと抱えて、今日もズボラップなおれはなんとかやっていくのである。

おしまい。

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読んでくれて、ありがとう。

黒ノートの話は、感想を強要しないゆるい場所にしておきたいので、
「スキ」やコメントは、気が向いたときだけで十分です。

あ、心の中で「ズボラップ万歳🙌」とだけつぶやいてもらえるのも最高のリアクションです。

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※このエッセイから生まれた曲:
今回は無し。来週をお楽しみに。

過去曲から。
英語詩にリライトした曲
『Babel - EN ver.』を聴いてね

強めな思想のグランジ風ロックと、ユルいnote記事の落差をお楽しみください。どちらもおれ。


(※注:この症状や処置はあくまで僕個人の体験です。もし似たツブツブに悩んでいる方がいたら、ガリガリ君を握りしめる前に、迷わず皮膚科の先生に相談してくださいね。)

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