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【なんのはなしですか】線引きが下手で。


艶やかな黒髪と透きとおるような白い肌。
そんな儚さの女性から、
小さな紙切れと古い鍵を渡された。
私はそれを、大切に、
素早くポケットにしまったけれど、
ゲートを通り抜けるための
『金属探知機』が反応してしまう。

                “まずい、捕まってしまう”

私は慌ててその白い細い手首を掴んで、
思い切り走り抜けた。

           “彼女をここから逃してあげないと”

追っ手に気付かれるも、手を繋いで走る。
曲がり角や坂を駆使して
追っ手を撒こうとして走る。

                 “儚い彼女の心臓が心配だ”

おんぶよりはお姫様だっこをして、
白い肌と長い髪と細い身体を
大切に運ぶのだけれど、
走る振動でうまくスピードが出せない。

『大丈夫、走れる』と言う彼女を下ろし、
再び手を繋いで走り出す。

赤や黄色の大きな落ち葉が積もった道の脇、
木の根元に二人して寝転ぶ。
体温の低い彼女に自分の茶色のジレをかけ、
落ち葉をかぶる。
追っ手が来ても、
これならきっと
うまくカモフラージュされるだろう。

                    “彼女を守りきらないと”

仰向けに寝転んだ彼女は手を繋いだままで、
低い体温で、
静かに私に寄り添う。
幸せな時間。

儚くて、愛しくて、ここならきっと安心なのだ。

白い肌と、細い身体。
私たちは二人きりだった。

オータムカラーの落ち葉の中でただ幸せだった。

                                      🍂

目が覚めて、女性は誰だったのか、と思う。
すごく知っている人で、本当は同じテイストの似たような女性と二人でいたけれど、もう一人から「彼女をお願い」と頼まれた後の話だった。
そして、逃げる間、ポケットのメモに何が書いてあるのかが楽しみで、そこには悦びへの期待とときめきがあった。それは知っている誰かからの、待っていた言葉みたいな期待だった。

彼女が何に追われていたのか、彼女をどこから連れ出しているのか、どうしてこんなにも全力で私に身を委ねているのか分からずに、それなのにどうしてか私は、それでこそ夢の中の私たちだよね、と全てを把握しているようだった。

アラームや、手探りのスマホや、カーテンの隙間や、猫の鳴き声を、現実と呼ぶのならば、あれはたしかに夢で。

けれども、脳みそにとっては、すべてが現実で。


目を見開いて、手を動かして、
そうして折り合いをつけていかなければ、
私はきっと、
あの儚い彼女をいつまでも護りたくて、
赤や黄色に紛れ込もうとするだろう。

線引きの下手くそな私は、
秋が嫌いだ。

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