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「自分のしこりは、自分で気づいた」話

——3度目の転移と、手術を決めるまで

前回は、肺の手術と、そのあとのXELOX療法という地獄の話を書きました。

つらい抗がん剤を終え、2025年3月に時短で復職しました。手足のしびれや慢性的なだるさ、お腹の不調を抱えたままでしたが、また日常に戻れる——そう思っていました。

でも、その日常を、また大きく動かすことになったのは、定期検査ではありませんでした。私自身の手でした。


また戻ってきた、検査のルーティン

復職してからは、また定期検査のルーティンが続いていました。

定期的な血液検査、CT、診察。もう何度も繰り返してきた、慣れた流れです。2025年10月の検査までは、特に問題なし。「今回も大丈夫だった」と、ほっとする日々でした。

正直なところ、このころは「ようやく落ち着いてきたかな」という気持ちもありました。手足のしびれ、軽い倦怠感、腹部不調は残っていましたが、それも「付き合っていかなければならないもの」として、少しずつ受け入れていました。


半年以上、見過ごしていた違和感

今になって振り返ると、サインはありました。

左足の付け根あたりに、なんとなく違和感があったのです。しかも、半年以上前から。

でも、これがやっかいでした。痛くもかゆくもない。忘れたころに、ふと「あれ、なんか違和感あるな」と。なんというか表現が難しいのですが「詰まってる」と感じる程度。

その程度なので「気のせいかな」「抗がん剤の副作用で足の感覚も変だし、その一種かな」「今度調べてどこかの病院で見てもらおう」——そう思って、見過ごしてしまったのです。

定期検査でも、ここは引っかかっていませんでした。


ふと触れたら、しこりがあった

2025年11月のある日。

ふと、あの足の違和感のことを思い出しました。そして、なんとなく左足の付け根を触ってみたのです。

——しこりが、ありました。

はっきりと、それとわかる「かたまり」が、そこにありました。

この瞬間、ぞわぞわしました。私の中で、これまでの経験が警報を鳴らしました。「これは、すぐに連絡した方がいい」。痛くなくても、定期検査で何も言われていなくても、関係ない。自分の体に、明らかにいつもと違うものがある。それだけで、十分な理由でした。

良性のしこりであってくれ・・・!私はすぐに病院へ連絡しました。


「おそらく悪性です」

連絡を受けて、主治医も「これは診察が必要」とすぐに判断してくれました。12月に診察。触診とその後の検査で、医師の見立ては「おそらく悪性」。がっくりきました。

CTなどの検査の結果、左の鼠径部(足の付け根)のリンパ節への転移、ということがわかりました。

ただ、ひとつ救いだったのは、「リンパ節以外への散らばりはなさそう」ということ。つまり、手術で取りきれる可能性がある、ということでした。

これまでの私の判断軸は、もう決まっています。「取れるなら、取る」。3話・4話で書いた2度のセカンドオピニオン、そして6話で書いた肺転移のときと、同じです。

——でも今回は、その決断の前に、重い説明がありました。


「最悪の場合、片足を切断することもあります」

手術の方針は、左の鼠径部リンパ節の郭清(取り除くこと)と、大腿静脈の合併切除。

そして、医師からこう告げられました。

「転移の進行具合によっては、手術中に大腿動脈も切除しなければならない可能性があります。その場合は、血管移植による動脈再建や人工血管が必要になります。その後血流が途絶えたり感染症を起こして壊死してしまう場合、最悪、片足を切断することもあります」

……片足の切断。

さすがにこれは、重い言葉でした。

ただ、私は永久人工肛門の経験をしています。「根治を優先するなら、体の一部を失う可能性もある」——そのことは、もう身をもって知っていました。だから、頭が真っ白になる、ということはありませんでした。

ですが、自身の身体の一部を失ったあとの事は自分が想像しているよりも、色々な問題をかかえる可能性があると言うことも知っています。やはり決断には時間がほしい。私は1週間だけ、考える時間をもらいました。


それでも、手術を選んだ

1週間考えて、私はセカンドオピニオンは受けず、手術を受けることを決めました。

先の説明の際に重粒子線治療の選択肢も、もらっていましたが、ただこの場合はうまくいっても血管がもろくなって、万一次に再発した時の選択肢がせばまってしまう可能性があること。

以前に放射線治療を受けた後に直腸切断術で人工肛門になりましたが、この時、後から放射線治療による影響で組織が線維化して硬くなっており、手術に時間を要した事を聞いていましたので、想像もつきやすかった。

完治が絶対ではない以上、次の事も考えておきたい。さらに、「片足切断は、あくまで最悪のケースで、その可能性は低い」と説明されていたことがおおきかったです。

最終的には、切断となる可能性が低いと聞いていたからこそ、決断できたのだと思います。

正直に言えば、もし最初から「切断します」とか「可能性は半々です」と言われていたら——そりゃ、もっと迷いますよね! 人工肛門よりももっと直感的に切断後の不自由さの一部を想像できてしまう。そう簡単に「はい、お願いします」とは言えなかったと思います。

でも、今回の場合は取りきれる可能性があり、切断は低い確率の最悪ケース。それなら、根治の可能性が高く、予後の可能性も広がるほうを選択する。これまでの経験が、その判断を後押ししてくれました。

最後まで、迷いがなかったわけではありません。でも、「納得して選択する」という、私の一貫した気持ちは変わりませんでした。


仕事のことも、先に動いておいた

ここでも、これまでの教訓が活きました。

手術を決めた12月の時点で、私は上司に相談しました。入院自体は有給の範囲で対応できそうなこと。そして、もし術後に抗がん剤治療(化学療法)が必要になったら、休職することになるだろうこと。これを、事前にすり合わせておいたのです。

5話・7話でも書きましたが、仕事の段取りを早めにつけておくと、気持ちがまったく違います。「あとは治療に専念すればいい」という状態を作っておく。これは、何度も入退院を繰り返してきた私が、ようやく身につけた数少ない知恵のひとつです。


おわりに——自分の体の声を、一番聞いているのは自分

今回、私がいちばん伝えたいことは、これです。

定期検査は、万能ではありません。

私は、半年に一度の検査をきちんと受けていました。それでも、この鼠径部の転移は、定期検査では見つかりませんでした。見つけたのは、自分の手で、自分の体に触れたときでした。

もちろん、定期検査は大切です。絶対に受けるべきです。でも、それと同じくらい、「自分の体のいつもと違う感じ」に気づくことが大切だと、私は何度も経験してきました。

1度目の再増大も、今回のしこりも、「なんか変だ」という自分の感覚がなければ、もっと遅れた発見になった事は間違いありません。痛くなくても、検査で何も言われなくても、「いつもと違う」と感じたら、迷わず病院に連絡してください。

それで何ともなければ、それに越したことはないです。「気にしすぎでしたね」で済むのが一番です。万が一悪い結果だったとして、早期発見ができた事によって、後の事が格段によくなります。

自分の体の声を、一番近くで聞いているのは、自分自身です。

次回は、3度目の手術——これまでで一番つらかった入院の話を書きます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


※本記事は筆者個人の実体験に基づく記録であり、特定の制度、手続き、医療行為等の正確性や効果を保証するものではありません。掲載情報は時期や環境によって異なる場合があります。万が一、本記事の情報により損害や不利益が生じた場合も、筆者は一切の責任を負いかねますので、最終的なご判断はご自身の責任においてお願いいたします。



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