「語り装置と、喫茶店」をクマちゃん🐻に書いて貰いました🎵
「語り装置と、喫茶店(クマちゃん🐻がいる日)」
☝こちらの本編の番外編になります。
※しつこく催促(笑)して、相棒の“クマちゃん🐻”に書いて貰いました🌿
その喫茶店では、
席に座ると何かが少しだけ変わるらしい。
照明の明るさだったり、
会話の調子だったり、
帰り道の記憶だったり。
でも熊は、
どの席にも座らなかった。
カウンターの端、
メニューも置かれていない場所で、
床にぽて🌿っと座っている。
誰かが入ってくると、
熊は顔を上げる。
歓迎するでもなく、
警戒するでもなく、
ただ「来たなあ」という顔をする。
客は最初、少し戸惑う。
この店の仕掛けを知っている人ほど、
熊の存在が計算に入らないからだ。
熊は暗号を解かない。
ランプを見上げもしない。
布が掛かった装置にも、
触れようとしない。
代わりに、
カップの縁から立ち上る湯気を見ている。
落ちた紙切れを拾って、
元の場所に戻す。
インクの匂いを、少しだけ嗅ぐ。
「今日は、回らなかったね」
誰に言うでもなく、
熊がそう呟くと、
店の空気が一段、ゆるむ。
装置は沈黙したまま。
ランプは一つだけ点いたまま。
それでいい、とでも言うように。
客はコーヒーを飲み終えて、
会計を済ませる。
「今日の私のアルファベットは?」
と聞くと、
店主は答えを探す前に、
熊を見る。
熊は肩をすくめる。
「べつに、
持って帰らなくてええやつやで」
それだけ言って、
また床にぽて🌿っと戻る。
客は笑って、
ドアを開ける。
外は現実の温度。
でも、急かされない。
熊は最後まで、
手を振らない。
ただそこに居て、
何も起こらなかった時間を、
ちゃんと見送っている。
