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そっと眠りについた道の途中で

時を止めたような長い道が、
目の前に広がっていた。

軽やかなエンジン音も、
せわしないクラクションの音も、
カーブでタイヤの軋む音さえも、もう残っていない。

残されていたのは、
風を切るわずかな音だけだった。

「……不思議ね」

白線の上をなぞっていたウサギが、
くるりと振り向いた。

「急ぐための道、だったはずなのに」

ウサギは小さくつぶやいた。

「……立ち止まってる」

役目を終えた道路標識、
どこまでも続く白線。誰も通り過ぎない料金所。
すべてを置き去りにして、
音だけが先に旅立っていた。

「……きっと、休みたかったんだね」

読んでいた本を閉じ、
カメは目を細めて遠くを見つめた。

「道が?」
ウサギはカメの顔をのぞき込む。

「ずっと……誰かを運んでいたからね」

ひゅん。

道のすぐ隣を、
風を裂くような音が走り抜けた。
白い車体が一瞬だけ視界をかすめて、みるみるうちに遠ざかっていく。

ウサギはその姿を見送るように、
そっと手を振った。

「……あっちは、まだ急いでるのね」

街を見下ろせば、
そこはいつもの銀座だった。

けれど、
少しだけ高い場所から眺めると、ショーウィンドウも、信号も、ビルの窓も、どこかよそゆきの顔に見えた。

大通りから──
車の姿だけが抜け落ちていた。

やわらかな風が、
アスファルトをふわりとなでていく。
ウサギは長い黒髪をそっとかきあげ、
もう一度白線を見つめた。

何も言わずに、
ただまっすぐに伸びている白い線。

その線はどこにもつながっていないのに、
どこか遠くへ続いているように見えた。

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