光がほどける 雨上がりのクリスマス
その夜──
モノトーンに光る路面が、ツリーの金色をやさしく抱きしめていた。
「みなさん、こんばんは〜
今夜はここ横浜スタジアムから、“ウサギのティースプーン”特別ロケをお届けします♡」
ウサギのよく澄んだ声が、
しっとりした空気の中へ溶けていった。

振り返ると──
未来仙がスマホをかざし、水音を撮るのに夢中になっていた。
「水音殿、そこ、もう少し右じゃ。
イルミの光が髪に乗る角度がええ……
うむ、やっぱり雪だるまには“女の子”がよく似合うのう……!」
ウサギは小声で呼びかける。
「ほら、もう番組始まってるの。遊んでないで、こっち来て!」
「すまぬ……つい、光が呼んだもので。
じゃが、イルミが時の息吹を放っておる。これは千年に一度の“未来の呼吸”じゃ!」

「ねえウサギちゃん、見て!
あのリース……絶対かわいいやつじゃん。
……こういうの飾ると、三溪園の水面に、もうひとつのクリスマスが映るわ」
水音が屋台に向かって歩き始めた。
「それにほら、あの屋台……。
光に“あまい香り”が混ざってるの。冬のマーケットってほんと好き♡」

「えっ、放送中なんだけど!」
未来仙もノコノコとついて行く。
「水音殿、そこ、もう少し左じゃ。
金色の光が髪に乗る角度がええ……。
うむ、やっぱり屋台には“女の子”がよく似合うのう……!」
ウサギは気を取り直し、
ピンマイクに向かって言葉を乗せた。
「え〜っと……いまここは──
雨上がりの魔法がかかっています。
ただいまゲストのおふたりは、台本を置き去りにして全力で楽しんでおります」
「ウサギ殿!
あのツリーの前で一枚撮らせてくれぬか!?
光が“未来の女神”を作りたがっておる……!
されば、時空のリールが回り始めるぞ!」
ウサギは思わず水音と目を合わせると、
ふっと吹き出した。
「……さて、そろそろお時間です。
どうか、優しい夜が、みなさんの心にも小さな灯りをともしますように。
それではまた次回、
ふわっと会いに来てね♡」
ウサギがマイクを切ると、
横浜三塔のジャックの方向を指して、未来仙が大声で叫んだ。
「ウサギ殿、あの場所へ移動じゃ。
まるで“バズの原石”……!
この角度、跳ねる。確実に跳ねるぞ!」
水音がくすっと笑う。
「ふふっ、まだ言ってる。
……ねえ未来仙、本当はウサギの写真が撮りたいんでしょ?」
三人の笑い声が、
夜の湿った空気にゆっくりほどけていった。
笑いが消えたあとも──
街のイルミネーションは、ずっと心の奥でやさしく瞬いていた。

