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2026年8月1日。槍ヶ岳から上高地に下山。

槍ヶ岳山頂で日の出を見たあとはただ、槍沢やりさわルートを下るだけだった。
もう上高地まで一本道だった。上高地から梓川左岸をずっと歩いてくれば、槍ヶ岳山荘の前に自ずから着くのである。この道を迷う人は余程の方向音痴だろう。以前、槍ヶ岳に登ったときは、槍沢ロッジに一泊し、槍沢ルートを槍ヶ岳まで登る予定だったが、それではつまらない気がして、途中で水俣乗越みなまたのっこしへ登って、東鎌尾根ひがしかまおねを通って槍ヶ岳に向かった。つまり、私は槍沢ルートを登ったことはない。下りは今日で二回目である。もう、「涸北渡からきたわたり」(涸沢岳から北穂高岳までのルート)や大キレットのような難所はないのだ。長い距離ではあるが冒険ではない。自然を満喫し、大冒険の余韻に浸って歩けばいいのだ。
私は去りゆく槍ヶ岳を何度もふり返った。

この角度から見ると槍が槍に見えない

長い道だ。
槍沢ロッジまで何時間かかるのかわからなかった。
私の頭には昼に上高地に到着するというイメージしかなかった。
これでは登山をする者としていけないのかもしれない。しかし、どこまで何分と緻密に計算して歩くほど私は頭が良くない。ポイントは押さえてある。例えば、大キレットを越えたとき、北穂高小屋から長谷川ピークまでは一時間半、そして、槍ヶ岳には昼には着く、そんなイメージだ。細かいことは登山アプリ・ヤマップを見る。これを書いている今、スマホでヤマップの記録を見たら、槍ヶ岳山荘から槍沢ロッジまで三時間かかっている。この三時間いろいろなことを考えた。そのことは別記事に書こうかと思うが、じつは今、思い出せない。本当にいろいろなことを考えた。いや、考えていなかったのかもしれない。どうでもいいことを考えていたのだろう。たぶん、上高地に着いたら食べるカツカレーを写真に撮って、noteの最後にその写真を載せて「カツカレさまー」と書きたいとか、そんなくだらないことだろう。いや、それはたしかに考えていた。疲れているとそんなことを重要なことのように思うのかもしれない。槍沢ロッジに着いたら行動食を食べようと思った。私は二日前に横尾でお弁当としてもらったパンを三つザックに入れていた。これは余分な荷物だった。横尾を出るときは、自宅近くのスーパーで買っていったパンを食べた。賞味期限が、スーパーで買ったパンと、横尾でもらったパンとでは全然違ったからだ。横尾のパンは数ヶ月持つものだったと思う。そして、私は今回の山行で行動食はミニチョコパンとミニドーナツを持って行った。槍沢ロッジではペットボトルに水を汲んで、ドーナツを食べようと思った。しかし、実際に槍沢ロッジに到着して、ドーナツの袋を開けるとボロボロになっていた。私は「これは失敗だ。以後、ドーナツは無し」と思った。私はボロボロになったドーナツを小屋の前のベンチで四つ食べた。味は美味かった。そこは多くの登山者が休憩していた。トイレの協力金は二百円だった。私は横尾までにオシッコをしたくなると困るから、それほど尿意はなかったが、二百円を料金箱に投入してトイレに入った。オシッコはたっぷり出た。「おお、二百円分のオシッコ!」
私はトイレのあと水を汲んでミニドーナツを食べたのである。ウ〇コのほうは出たいとは思わなかった。「出たい」というのは私の住む静岡県の方言なのだそうで、標準語では「したい」になるそうだ。しかし、ウンコは主体的にしたいわけではなく、出そうになるのだから、「出たい」でいいような気がする。中学生のとき、横浜から来た友達が「出たい?おまえはウンコか?」とツッコんでいたが、たしかにそうだと思った。しかし、文章上どうであれ、私は「出たい」と未だ日常的に使う。オシッコも「したい」のではなく「出たい」なのだ。この日本語を全国的に「出たい」に統一することを公約に掲げたら、国政選挙で地元民の支持を集めることが・・・・

槍沢

どうでもいいことを書くのはくだらない。
くだらないと言えば、横尾に着いて、徳沢園に向かう途中の平らな道でのことである。
「多くの登山系ユーチューバーなどが、徳沢園に寄るとソフトクリームを食べる。そんなに美味いのか?いや、ソフトクリームはソフトクリームだろう。あいつらは徳沢園のソフトクリームを宣伝するようにカネをもらっているのか?俺は絶対にそんなくだらないことをして、ソフトクリームの写真を撮ってnoteに載せたりしないぞ・・・。そして、アイスウインナコーヒーの写真を載せて、私はこれを飲みました。というオチのギャグを書こう」と思って私は徳沢園への道を急いだ。急ぐ理由はないのだから、周囲の自然を満喫すればいいのに、人間とはくだらない生き物である。四十分ギャグのことを考えながら歩いていた。もちろん、他にもいろいろ考えた。例えばすれ違った人のこと。外国人登山者のこと。トレランのこと。そういったものはまた別の記事にしようと思う。とにかく私はnoteで書くギャグのネタを仕入れたかった。しかし、徳沢園に着くと、メチャメチャ混んでいたので、アイスウインナコーヒーはあきらめた。
私は先を急いで、上高地に向かった。
途中、明神にカレーはあるが、カツカレーはない。
上高地に行かなければカツカレーはなく、最終ネタの「カツカレさまー」の写真は撮れない。幸い、槍沢ロッジで食べたミニドーナツ四個のおかげで腹はすいてない。上高地まで持ちそうだ。しかし、体力が限界ではないが、だいぶ疲れていた。私は明神で木のベンチに腰を下ろし水を飲んだ。そして、呼吸を落ち着けると、また歩き始めた。
「上高地でカツカレーを食べ、そのあと、バスに乗りさわんどまで。さわんどで温泉に入り帰る。それだけだ」
そして、小梨平こなしだいらを過ぎ、しばらく行くと河童橋が見えてきた。
「おお~、上高地だ!」
なんか、ファストフードを買うために、何十人も並んでいた。それは槍ヶ岳の穂先の渋滞なんか問題にならないほどの行列だった。アホか。
いや、私もアホである。
上高地のバスターミナルに着いたとき、食堂で順番待ちの発券のタッチパネルをタッチして出てきた番号札を手に持ち、外に出てベンチではない木の手すりの下の部分に腰を下ろして十五分待つのを覚悟した。
長い順番待ちだった。
客の順番を管理している男性は、二年前に見た男性と同じだった。なぜか覚えていた。芸能人ではなくとも、有名な場所の要所にいれば、有名になれるかもしれない。
そして、順番が来て、私はその男性に窓側の一人席に案内されメニューを見た。あるある、カツカレー。私は注文しようと辺りを窺ったが、あの男性と目が合った。その男性はまた私の所に来て、注文を取ってくれた。
「カツカレーをください」
私の注文は以上だった。
水とお茶はセルフということで、私は給茶器で冷たいお茶をコップに注いだ。冷たい水はもうたくさん飲んだから、お茶にしたのだ。
また一人席で冷たいお茶を飲みながら、待っていると、来た来た、ついに来た。
「はい、カツカレーです。以上でよろしいでしょうか」
「はい」
ウェイターは私の前にカツカレーを置き、その横に伝票を置いていった。
私は目の前に置かれたカツカレーを見て興奮した。
こ、これだ。
私はカメラを取り出し、写真を撮った。

カツカレさまー

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