アメリカは自殺への道を選んだ。-Welcome to the world of chaos.
かつてぼくはトランプ大統領に期待したものだ。かれならばディープステートが世界を裏から支配する狂気の悪魔的構造をぶっ壊してくれるだろう。あるいはその期待は半ば叶えられつつあるのかもしれない。また、トランプによる中東和平へ向けての提案も褒めたたえられて良い。WHOからの脱退については、ワクチン政策への疑問のゆえだろうが、しかしWHOをそこだけ見るのもどうかとはおもう。とはいえ、LGBTQ政策への見直しも、ある程度は理解できる範囲にはある。しかし、2025年春、トランプ就任百日後、まさかトランプによって世界がカオスのなかに叩き込まれるとはおもってもみなかった。
諸外国にかけるでたらめな関税、不法移民排除、左翼にのっとられたアメリカの大学への(莫大だった)給付金の撤回、パレスチナ支持の学生たちへの退学処分。結果、ドルは下落し、(これはアメリカに投資を呼び込むメリットもあるとはいえ、しかし)、株価は暴落。「アメリカ経済の打ち出の小槌」「無限にカネを生み出す魔法の泉」たるアメリカ国債は売り払われる。
トランプは全土的に移民取り締まりを行使し、シカゴ、ニューアーク、マイアミなど多くの都市で、日曜ごとに家宅捜索を行い、たくさんの不法移民を拘束し、がんがん国外追放するようになった。これにてアメリカ経済を最底辺で下支えしてきた膨大な移民労働力は失われる。アメリカ経済ががたがたになることは目に見えている。しかも高学歴で有能な移民さえもアメリカから逃げ出す準備をしている。
はたまた、これまで名門大学に流れ込んで来ていたうなるほどの科研費ももはや入らなくなって、しかも言論弾圧までおこなわれるようになったいま、ハーヴァードだのマサチューセッツ工科大学とかコロンビア大学とかイエール大学とかの学者~研究者たちも「もはやこんな国で研究なんてできへんわ」とアメリカから逃げ出すべく、どこか良い外国の大学のポストはないかしらん、と血眼になって探している。I don't want to live in the United States anymore!!! これをアメリカの崩壊と言わずしてなんと言う???
余談ながら、かつてナチス・ドイツ時代にはヨーロッパのユダヤ人学者たちがアインシュタインからレヴィ・ストロースまで一斉にアメリカに逃げ延びたもの。同様に、建築家のミース・ファン・デル・ローエも、美術家のモホリ=ナジ・ラーズローも、音楽においてはシェーンベルクに学んだハインリッヒ・ヤロヴィッツまた。あの時アメリカのアカデミズムは莫大な漁夫の利を得た。他方、今回は民族にかかわらず、アメリカの学者たちが揃ってアメリカから脱出するのだ。
ハリウッドもまた大激震である。なるほどトランプは、シルベスター・スタローンとメル・ギブソンとジョン・ボイドら老人会を味方につけはした。しかし、他方でトランプの移民排除政策はハリウッドを激怒させてもいて、そりゃそうですよ、こんなことやられた日にはハリウッドは成り立たない。アンジェリーナ・ジョリーもジョディ・フォスターも怒りの声をあげた。ロバート・デ・ニーロにいたっては「トランプの顔を殴りたい」と吠えた。マイケル・J・フォックスもこの意見に讃同するだろう。ポップ・ミュージックの世界ではア・トライブ・コールド・クエストはもちろんのこと、ビヨンセもレディ・ガガも反トランプの姿勢を鮮明にした。もっとも、レディ・ガガはかつて痴呆症バイデンのために選挙戦で"Shallow"を熱唱した女ではあるのだけれど。
いまやアメリカは世界一輝く国であったポジションを、いま、みずから捨てているように見える。

しかし、アメリカがでたらめな国であることはけっしていまにはじまったことではない。そもそも1971年アメリカはヴェトナム戦争で無駄ガネを使いまくってヴェトナム人たちを殺しまくり、自国の兵士さえも5万8000人も死に追いやった挙句、経済が立ち行かなくなって、とうとう奇策をおもいつく。これまでの「金(Gold)本位制」を撤回して、ドルを基軸通貨とする変動相場制にすることを勝手に宣言したのだ。これはとんでもないことで、これにて世界は賭場に叩き込まれた。株式市場のみならず、各国通貨が投資の対象となったのだ。これにて一国経済は世界経済のなかに飲み込まれ、既存の一国経済学は原理的に崩壊してしまった。あるいは、一国経済学は限定的にしか機能できなくなった。強国はまだしも弱小国はたまったものではない。投資家がある国の通貨をがんがん買って、その国をぬかよろこびさせて、次の瞬間ぜんぶ売り払いでもしたら、たちまちその国の経済は壊滅的事態になる。しかも通信速度の高速化が事態に拍車をかける。じっさいタイ・バーツ大暴落事件なども起こったものだ。
いまトランプ大統領は、なにをとち狂ったのか、もはやどんな手を使ったとて戻れるはずもないのに、アメリカを一国経済国家として立て直しにかかっているのだ。そんなことできるはずがない。それどころかいまアメリカは緩慢な自殺をくわだてているではないか。かれは叫ぶ、「わたしはアメリカをふたたびグレイトな国にするために、神に救われた。」「アメリカの運命は地球上でもっとも偉大な国になることだとわたしたちは信じている。」「わたしはアメリカの光熱費を下げ、航空料金、住宅費を下げる。カード会社の利幅も下げる。」「わたしはアメリカの自動車産業を復活させる」そしてかれはそんなおいしい公約をとめどなく叫び続けながら、しかしアメリカを滅亡に導く男なのだ、全世界を巻き込みながら。実際アメリカの物価はトランプ政権とともに上がっているし、各国に関税をふっかけたところで、そうかんたんにアメリカの自動車産業が復活するわけがない。ドルさえ刷ればカネはじゃんじゃん入ってくるし、小才の効いた連中は誰だってヘッジ・ファンドでカネ持ちになれるのだ。そんなアメリカでいったい誰が自動車産業のような汚れ仕事に手を染めるだろう? しかし、そんなアメリカの派遣を、いまトランプはみずから抜本的にぶっ壊しにかかっているのだ。イーロン・マスク氏はちかぢか政権をクビになるらしい。他方、カリフォルニアのIT産業はいまやトランプに憎悪を剥き出しにしている。すでにアメリカの没落は始まっているのだ。あぁ、かつておれを期待させたトランプは世にも稀なる世紀のアホアホ大統領だった。われわれはいま、この自己愛まみれでエゴイスティックで無知で傲慢な専制君主、はやいはなしが偉大なるケツの穴と(あろうことか!)運命をともにしているのだ。
thanks to 安冨歩さん
