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「売れない文化」は切り捨てられるのか? 国立博物館・美術館の「収入目標」が問いかけるもの

本日、あまりに短絡的で冷徹なニュースが飛び込んできました。


文化庁が国立の博物館や美術館に対し、5年間で収支均衡を目指す数値目標を課し、達成できなければ「閉館を含めた再編」を検討するという方針です。

インバウンド向けの「二重価格」導入など、稼ぐ努力を求めること自体は否定しません。

しかし、
その先に「閉館」というカードをちらつかせる手法には、強い違和感を禁じ得ません。

1. 文化の「価値」を「収支」で測る愚かさ

そもそも、国立のミュージアムは「営利企業」ではありません。
その本質的な役割は、目先の利益を出すことではなく、数百年、数千年のスパンで人類の遺産を「保存」し、「研究」し、次世代へ「継承」することにあります。

• 100年に一度しか日の目を見ない資料の修復
• 利益にはならないが歴史的に不可欠な基礎研究
• 経済格差に関わらず、誰もが本物に触れられる公共性の維持

これらは、ビジネスのモノサシで測れば「極めて効率の悪いコスト」です。

しかし、
この「非効率」こそが文化の厚みそのものです。
収支という単一の指標で評価を下すことは、文化の多面性を自ら放棄するに等しい行為ではないでしょうか。

2. 「再編・閉館」という言葉が奪うもの

「目標が達成できなければ再編」という脅しは、現場のクリエイティビティを著しく萎縮させます。

予算を削られ、数字に追われる学芸員たちが選ぶのは、「本当にやるべき価値のある展示」ではなく、確実に客を呼べる「売れ筋の企画」ばかりになってしまうでしょう。

文化の多様性は失われ、どこの館に行っても似たような「動員重視」の展示が並ぶ。

そんな未来に、一体どんな価値があるというのでしょうか。一度閉じてしまった館、一度散逸してしまった研究体制を元に戻すには、それこそ数値化できないほどの時間とコストがかかるのです。

3. 「二重価格」の恩恵はどこへ行くのか

訪日外国人向けの入館料を高く設定する「二重価格」の導入も検討されています。

もしこれが、「稼いだ分で日本の学生の入館料を無料にする」といった、文化の裾野を広げるための再分配に使われるなら、まだ理解はできます。

しかし、
もしこれが単に「国が出す補助金を減らすための穴埋め」に使われるのだとしたら、それは単なる「文化の民営化」への布石でしかありません。
国が担うべき「文化を守る責任」を、観光客と現場の努力に丸投げしているようにも見えます。

文化は「消費」されるだけの資源ではない

今回のニュースから透けて見えるのは、「文化を経済の道具としてしか見ていない」という、ある種の思考停止です。
「稼げない文化はいらない」という理屈を突き詰めていけば、私たちの社会から「役に立たないけれど大切なもの」が次々と削ぎ落とされていきます。

数値目標という鎖でミュージアムを縛り、閉館という恐怖で統制する。その先にあるのは、効率化された、しかし中身のスカスカな文化の残骸かもしれません。
私たちは、国のこの「冷徹な選択」を、ただ黙って見過ごしていいのでしょうか。


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