人が入り、人が去る。その間に、チームは育っていた。
今日は、新しくキャリア入社された方の歓迎会でした。
新しい仲間を囲みながら、ふと、二年ほど前の自分を思い出しました。
私も同じようにキャリア採用で入社し、同じように迎えていただきました。
新しい会社で、自分は何ができるのか。
これまでの経験は通用するのか。
期待と不安を抱えながら、その席に座っていたことを覚えています。
あの頃の私には、数年後にチームがこれほど変わっていることも、自分自身がこの事業にここまで深く向き合うようになることも、まだ想像できていませんでした。
私が加わったのは、大きな組織の中でモビリティサービスを推進する、立ち上げ期の新規事業チームでした。
当時は、まだ数人の小さな組織でした。
集まっていたのは、それぞれ異なる会社や仕事を経験してきたメンバーです。
当然、仕事の進め方も、物事を見る角度も違います。
それぞれが事業を前へ進めたいという思いを持っていたからこそ、率直に意見を交わす場面もありました。
誰かが間違っていたわけではありません。
ただ、異なる経験を持つ人たちが一つのチームになるためには、何を大切にし、どこへ向かうのかを、言葉にして共有していく必要がありました。
同じ部署に所属しただけでは、まだチームにはなれなかったのだと思います。
ひと区画を借りて、チラシを配っていた頃
立ち上げ当初、展示会に出展するときは、ほかの事業部が構えるブースの一角を借りていました。
限られたスペースに立ち、チラシを配る。
足を止めてくださった方に、まだ十分には知られていないサービスを一から説明する。
自動車メーカーの中で、SaaS型のモビリティサービスをどのように広げていくのか。
チームには、完成された答えも、蓄積されたノウハウもありませんでした。
誰に届けるのか。
どのような課題に応えるのか。
何を価値として伝えるのか。
一つひとつ、試しながら見つけていく日々でした。
成果の手応えを、なかなかつかめない時期もありました。
人手や知見が不足している領域については、外部パートナーの力も借りました。
インサイドセールスやフィールドセールスの一部を支援していただき、私はその活動をつなぎ、チームとして前へ進める役割を担っていました。
活動状況を確認する。
商談で得られた情報を共有してもらう。
課題を整理し、次の施策を考える。
外部の力があったからこそ、広げられた接点があり、前へ進められた時期がありました。
一方で、その経験を通じて、次第に感じるようになったこともあります。
報告書を読めば、お客様が抱えている課題は分かります。
商談結果を確認すれば、何が響き、何が伝わらなかったのかも見えてきます。
けれど、お客様がどのような言葉で困りごとを語ったのか。
なぜ今の運用を続けているのか。
何を変えたいと思いながら、どこで立ち止まっているのか。
そうした背景まで理解するには、自分自身がお客様の前に立ち、その言葉を直接受け止める必要がありました。
外部パートナーの力を借りることと、自分たちがお客様に向き合うこと。
その両方が必要だったのだと、今では感じています。
事業の意味を、自分の言葉で説明できなかった
入社した頃の私は、このモビリティサービスに取り組む意味を、まだ自分の言葉で説明できていませんでした。
自動車メーカーへの転職を考える中で、たまたま入り口になったのがSaaS型の新規事業だった。
正直に言えば、最初からこの事業に強い思い入れがあったわけではありません。
事業は立ち上げの途中にありました。
社内外の多くの人に支えられながら進める必要もありました。
自分たちが、なぜこの事業を行うのか。
大きな組織の中で、新しいモビリティサービスを生み出すことに、どのような意味があるのか。
その答えが、自分の中でつながっていなかったのだと思います。
見え方が変わったのは、自分自身がお客様と向き合う機会が増えてからでした。
これまで自動車メーカーと法人のお客様との接点は、車両という商品を通じたものが中心でした。
もちろん、良い車をつくり、届け、安心して使っていただくことは、自動車メーカーの大切な役割です。
ただ、法人のお客様にとって、車両を導入することはゴールではありません。
実際に車を使い始めれば、管理する仕事が生まれます。
安全に運用するための仕組みが必要になります。
法令に対応し、記録を残し、事故を防ぎ、日々の業務を回していかなければなりません。
そこには、車そのものの性能だけでは解決できない課題があります。
私たちが取り組んでいるのは、販売店に代わって車を売ることではありません。
単に、一つのSaaSを販売することでもありません。
これまで車両という商品を通じた接点だけでは十分に見えなかった、法人のお客様の車両運用の課題に向き合う。
そこで得た声を、サービスの改善や次の事業へつなげ、自動車メーカーが提供できる価値の範囲を広げていく。
そこに、この事業に取り組む意味がある。
そのことが自分の中で腹落ちした頃から、仕事への向き合い方が変わりました。
お客様に聞くことが変わる。
商談で使う言葉が変わる。
社内へ持ち帰る情報が変わる。
誰かから答えを与えられるのを待つのではなく、自分たちで考え、動こうとするようになる。
仕事の意味が見えたとき、日々の行動にも少しずつ意志が宿っていきました。
そして、その変化は、私一人だけに起きていたものではありませんでした。
チーム全体が、自分たちがこの事業に向き合う意味を問い直し、少しずつ同じ方向を向き始めていました。
人が増えただけでは、チームにはならない
入社当時は数人だったチームにも、一人、また一人と新しい仲間が加わりました。
異なる会社で経験を積んできた人。
異なる専門性を持つ人。
それまでのチームにはなかった視点を持ち込んでくれる人。
少人数だった組織は、気づけば、それぞれが明確な役割を持つチームへと変わっていました。
ただ、人が増えれば、自然にチームになるわけではありません。
人数が増えるほど、考え方も、仕事の進め方も増えていきます。
誰がどこまで担当するのか。
何を自分で決め、何を周囲に相談するのか。
少人数の頃には曖昧なままでも進められたことが、次第に通用しなくなりました。
チームが変わった理由の一つは、コミュニケーションの量と質が変わったことでした。
何をしたのかを共有するだけではなく、なぜそれをするのかを話す。
数字の進捗だけではなく、その数字がお客様や事業にどうつながるのかを考える。
お互いが何を担当し、何に悩み、どのような責任を背負っているのかを知る。
そうした対話が少しずつ増えていきました。
もう一つは、お互いの持ち場を尊重し、責任を預けられるようになったことです。
何でも全員で抱え込むのではなく、その領域を担当する人を信じて任せる。
困っていれば支える。
ただし、任せた仕事には必要以上に口を出さない。
言葉にすると簡単ですが、実際にできるようになるまでには時間がかかりました。
相手に任せるためには、相手のことを知る必要があります。
自分の役割に責任を持つためには、チームがどこへ向かっているのかを理解していなければなりません。
対話を重ね、ときには率直に意見を交わしながら、少しずつお互いの持ち場を信じられるようになっていきました。
営業活動の仕組みも整っていきました。
SFAやMAツールを導入し、お客様との接点や商談の進捗を可視化する。
インサイドセールス、フィールドセールス、事業企画が、それぞれの役割を意識する。
いわゆる「The Model」の考え方も取り入れながら、自分たちなりの事業推進体制をつくってきました。
以前とは比べものにならないほど、仕事は仕組み化されました。
情報が見えるようになった分、以前より速く進捗を追い、判断し、次の行動へ移ることも求められます。
責任は、決して軽くなっていません。
むしろ、大変なことは増えているのかもしれません。
それでも、一人で仕事を抱えている感覚は減りました。
うまくいったときは、一緒に喜ぶ。
思うように進まないときは、一緒に悩む。
率直に意見を交わし、ときには感情が動くこともある。
それでも、喜怒哀楽を分かち合いながら、同じ事業を前へ進められる仲間がいる。
それは、仕事をする上で、とても幸せなことです。
支えてくれた人から、受け取ったもの
新しい仲間を迎える一方で、これまで私たちを支えてくださった方が、新しい一歩を踏み出す節目も迎えました。
私たちのフィールドセールスを支え、一緒に悩み、事業を前へ進めてくださった外部パートナーの方です。
これまでと同じ形で一緒に仕事ができなくなることには、率直に寂しさがあります。
もっと一緒に仕事をしたかった。
まだ教えていただきたいこともあった。
そんな気持ちもあります。
けれど、不思議と、残される不安だけではありません。
その方から、私たちは多くのものを受け取ってきたからです。
お客様との向き合い方。
商談の組み立て方。
課題の聞き方。
提案を前へ進めるための考え方。
そして、自分たちの力でも、この先を進んでいけるという自信。
教えていただいたのは、営業の技術だけではありませんでした。
自分たちで考え、自分たちで決め、自分たちで前へ進むための力を、少しずつ渡していただいたのだと感じています。
以前の私たちであれば、支えてくれた人が離れることに、もっと大きな不安を感じていたかもしれません。
けれど今は、受け取ったものを携えながら、自分たちでも進んでいける。
チームの中にも、そんな小さな自信が生まれています。
誰かに支えられていたチームが、少しずつ自分たちの足で立てるようになっていた。
人が離れる寂しさの中で、そのことにも気づかされました。
私たちは、バトンの途中にいる
数人だったチームに、少しずつ仲間が増えたこと。
手探りだった活動が、少しずつ仕組みになったこと。
異なる経験を持つメンバーが、事業の意味を問い直し、同じ方向へ進めるようになったこと。
そして、私自身も、この仕事に向き合う理由を見つけられたこと。
どれか一つだけで、今の姿になったわけではありません。
誰かが考えたことを、別の誰かが形にする。
誰かが試したことを、次の人が改善する。
外部のパートナーから教えてもらったことを、自分たちの力に変える。
新しく加わった人が、これまでになかった経験や視点を持ち込む。
チームの成長も、個人の成長も、そうした受け渡しの積み重ねです。
受け取った経験を、自分の中だけに残さない。
お客様への価値に変える。
チームの仕組みに変える。
別の仕事にも生かしていく。
そして、次に加わる人が、自分たちより少し前から走り始められるように渡していく。
新しい人が入り、お世話になった人が新しい場所へ進んでいく。
歓迎会の席で、二年前の自分と、今のチームの姿を重ねていました。
人が入ることと、人が去ること。
その間には、目には見えない多くのものが残されていきます。
教えてもらった言葉。
一緒に悩んだ時間。
うまくいかなかった経験。
任せてもらった責任。
そして、自分たちでも進めるという、小さな自信。
私たちのチームも、そうしたものを受け取りながら、ここまで来ました。
新しい仲間を迎えたこの夜も、その続きにあります。
受け取ったバトンを握りながら、今度は私たちが、次の誰かへ渡していく番です。

