普及デモの対象は誰か - 「既存ユーザーには刺さらない」に気づいた日
ある人から、ハッカソンの企画について相談を受けました。デモのコンテンツを聞いていくと「新規ユーザー向け」に聞こえる。一方で、集客リストを聞くと既存ユーザーへの声がけしかない。聞きながら、私は違和感を覚えました。新規向けに作っているはずのデモを、既存ユーザーだけに届けようとしている。それでは刺さらないはずだと。
「刺さらない」のは、相手を間違えているからでは?
技術系プロジェクトやツールの普及活動をしていると、「とりあえず動くものを見せよう」という流れになりがちです。
でも、そのデモは誰に向けて見せますか。
サービスの既存ユーザーや、すでに連携を済ませている事業者を呼んで、オンボーディングのイベントをする。そんな場面です。参加者の反応は薄い。「知ってる話しかない」という感覚が残ります。
これは デモの品質の問題ではなく、ターゲットを間違えている という問題です。
ハッカソンの相談で見えたミスマッチ
その相談はハッカソンの企画でした。
デモの内容を聞くと、「これから使い始める人に向けて、こういう体験をしてもらいたい」という話が出てきます。新規ユーザーを想定したコンテンツです。ところが集客の話になると、「既存のサービサーに声をかけている」と続く。
私は思わず聞きました。「コンテンツは新規向けですよね。既存ユーザーに見せても、知ってる話しかできないのではないですか?」
その瞬間、企画していた本人の中で前提が崩れたようでした。新規ユーザー向けに作っていたデモを、新規ユーザーには届けず、既存ユーザーにだけ届けようとしていた。コンテンツと集客がねじれていたのです。
「既存」と「新規」では、デモに求めるものが違う

普及フェーズのデモには、2つの目的が混在しがちです。
既存ユーザーへのアプローチ:
フィードバックを得る、乗り換えコストを下げる新規ユーザーへのアプローチ:
存在を知らせる、使ってみたいと思ってもらう
この2つは、別の活動として設計する必要があります。
既存ユーザーに対しては、「UIが使いやすくなっている」などがあれば、新バージョンへの乗り換えの後押しになります。すでに仕組みを知っているからこそ、具体的な改善点や比較に興味を持ちます。一方、新規ユーザーに対しては、「そんなものがあるのか」「使ってみたい」という最初の一歩を促すデモが必要です。機能の細かな違いより、存在への気づき が最初のゴールです。
この2つを混ぜたデモを作ると、どちらにも中途半端になります。
「誰に何を見せるデモか」を先に決める
では、普及フェーズのデモはどう設計すればいいか。私がこの気づきのあとに意識するようにしたことがあります。
この3つは順番が重要です。①対象者を決める、②既存ユーザー向けの活動を切り分ける、③参加者構成に合わせてデモを設計する。
デモを作る前に、対象者を1人イメージする
今まで知らなかった人が、初めて触れる場面を想像する。その人が「おもしろい」と感じる瞬間はどこか。既存ユーザー向けの活動は別に設計する
フィードバック収集や改善提案の場は、普及デモとは切り分けて設計する。混在させると、どちらも薄くなる。ハッカソンの参加者選定に使う
「新規参入者が多いか、既存ユーザーが多いか」で、デモの内容も進め方も変わる。参加者の構成を先に決めてからデモを設計する順番にする。
この考え方は、OSSの採用拡大やSaaSのオンボーディング設計、カンファレンスでの講演設計にも同じように当てはまります。「誰に何を見せるか」という問いは、デモに限らず、あらゆる外部アプローチ活動の出発点になります。
普及フェーズに「刺さる相手」は誰か
技術普及の活動を振り返ってみると、もっとも刺さる瞬間は、相手が 初めてその存在を知ったとき です。「ずっとこれを探していた」「こういうものが使えるとは思っていなかった」という反応が、普及の入口になります。
既存ユーザーには、すでにその入口を通っています。もう一度入口に連れて行っても、新しい道は開きません。
あなたが次に企画するデモ、ハッカソン、講演の対象者は、まだ入口に立っていない人ですか。それとも、すでに中にいる人ですか。
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